第十二打:焼き土下座
ほら。アメちゃんあげるから。
「あでっ!」
ヒロトの作った魔法陣に飛び込んだが、着地に失敗してケツを強打してしまった。
「あてて!ケツが割れたぞ!コンチキショウ!つか、どこ?」
尻をさすりながらヒロトの横に立つ
病院に置いてあるようなパイプベッドと鼻をつく消毒液の臭いする部屋
しかし、部屋の照明は薄暗く何か保健室っつーよりかは、バイオとかに出てくる病院の部屋みてーだな
「光世学園の第2保健室。とりあえず、ここならゆっくり休めるだろ。」
「第2っつーことは第1があるんだべ?なんで第2に来たんだよ?ここ雰囲気わりぃーよ!」
「まぁそーいうな。ここなら生徒会の奴らも来たがらないから。何たって、ここの担当医ってのが変人――あぎゃ!」
ベッドに腰掛けようとするヒロトの顔面に球が直撃する
コロコロと俺の足元に転がってくる球を拾い上げる。
こいつぁ――
「ガチャガチャのカプセル…?」
「ちっ!やはりモンスターボールじゃダメか…。次はマスターボールで…」
白衣を着た黒髪のチビっ子がブツブツ言いながら近づいてくる
いや、モンスターボールじゃねーだろ。
ガチャガチャのカプセルやんけ。
まぁまだ幼い子だ。よくある間違いだよね。俺もそーだったし。
「お嬢ちゃん、これはガチャガチャのカプセルでモンスターボールじゃないんだよ。
例え、アイツがモンスターみたいなボコボコの顔しててもぶつけちゃダメだよ?」
チビっ子の頭を撫でながら優しく説明をする
「さ。小学生はお家に帰ってドラえもんでも観なさい。今日は『のび太の結婚初夜』が7008回目の再放送でやるから」
チビっ子に優しく微笑みながら言う
チビっ子はうつむきプルプルと肩を振る舞わせている
「誰が……誰が小学生だーっ!!」
チビっ子は複数の魔弾を作り、俺に放つ。
「うそぉ!!いだだだ!」
飛礫の如く俺に当たる魔弾
ちょっと!マジ痛いって!
「先生!落ち着いて!――って、痛ぁっ!」
ヒロトがチビっ子の肩を掴むが、哀れヒロト。裏拳一発でぶっ飛ばされる。
つーか、なんで俺がこんな目に合うんだよ!
「調子ノってんじゃねーぞ!こんのクソチビまる子ちゃんが!!」
飛んでくる魔弾を叩き落とし、チビっ子の頭を掴む
「いきなり魔弾打っちゃダメって、教わんなかったの!?まだ小さいのにそーいうことしちゃダメ!ダメ!ダメーっ!」
掴んだ頭を前後に高速シェイクする
「は、離せーっ!離してよー!イヤー!」
涙声で俺に反論するチビっ子
でも、謝るまでお兄さん許しませんよ!
「ごめんなさいは!?ごめんなさい言うまで離さないよ!!」
「エーン!ごめんなさーい!だから、もう揺らさないでー!気持ち悪いよー!!」
やっと反省したか。まったく。世話の焼けるチビっ子だ。
「分かればいいんだよ。よしよし怖かったね?お兄ちゃんやりすぎたね?ごめんね?」
エーンと泣くチビっ子を抱きかかえ頭を撫でる
「いてて!ったく…今日は厄日か?」
鼻を押さえながらヨロヨロと立ち上がるヒロト
確かに君ケガしすぎだよ…
「あれ?先生は?」
「先生?先生なんか来てねーだろ。このチビっ子しか見てねーぞ」
抱きかかえてるチビっ子はまだ泣きやまず、嗚咽を漏らしてる
「ほらほらもう泣かないの。あんまり泣くとせっかくの可愛い顔が台無しになっちゃうぞ!ん?どしたぃヒロト?口パクパクさせて」
チビっ子の背中をポンポンと叩き落ち着かせながら、マヌケ面しているヒロトに言う
「お前…その人……」
「あー?」
「その人が第2保健室の先生……」
「うそやん…」
思わず手を離してしまう。
ベチッとケツから落ちてしまうチビっ子。
「いだい……痛ーい!!ビェェーン!!」
「ああっ!ごめん!!」
慌ててチビっ子を抱きかかえて頭を撫でる
「お前、こんな小さい子が先生な訳ねーじゃねーか!ごめんね。このお兄ちゃん、顔だけじゃなくて頭も悪いんだ。許してあげてねぇ」
「あぅ…うぅ……」
「落ち着いてきた?ほら、アメちゃんあげるから」
泣き止み目を擦るチビっ子にアメ玉をあげ、ベッドに座らせる
「先生すいませんっ!!コイツ、今日転入してきたばかりで何も知らないんです!ですから!ですから!!何とぞご平らに〜!!」
「おっ!ジャンピング土下座!」
ジャンピング土下座をかますヒロト
まったく…恥ずかしいやっちゃな…
「お前なー、この子どーみても小学生じゃねーか!やめなさいよ!恥ずかしい!」
隣に座るチビっ子の頭を撫でながら土下座してるヒロトをたしなめる。
「うぅっ…ぐずっ……。ヒロト………」
「うっ……なんすか……?」
ちびっ子の言葉にビクッと肩を震わせるヒロト
「本当の誠意を示せ……!」
あ!兵藤会長だ!
まさか……この展開は……
「焼き土下座……!」
キター!
このちびっ子……
常軌を逸してるっ……!
「とまぁカイジネタは置いといて……この人だれ?」
「あ。そいつはさっきも言ったんすけど、今日転入してきた真島 涼っす」
「へー。あなたが……私は、第2保健室担当医の神崎 奈美。よろしく」
俺を見上げながら手を出すちびっ子。
つーか、ホントに先生なの!?
「よ、よろしく。あの…IDカード見せてもらっていい?」
「あっ!疑ってるでしょ?はい」
白衣のポケットから金色のカードを渡される
本当に先生だったんだ……
どーみても小学生なんだけど…
「それより、ヒロトも真島君もケガしてるじゃない?どうしたの?」
「あ〜。これは……」
ヒロトがケガの経緯を説明をする
俺?俺はヒマだから、ベッドで横になってますよ。あー!眠っ!
この小説を読んでる全ての心優しい人達よ。
真島涼が寝るって事はあの人へのフリだって事を……
そう!正解は!
つづく