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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第四幕】 【王都】

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その十八 『紅蓮』再び


 店から出ていく金髪の少女たちを見送りながら、服屋の男はしみじみと独りつぶやく。


「それにしても、あのイブちゃんが『友人』って言うとはなあ……」


 カランコロン。ドアの上についている鈴が雅な音を響かせたあと、店内に静けさが戻っていった。



 場所は変わって、少年たちはギルドの建物へとやってきていた。


 そのギルドは他の建物よりも比較的大きく、入り口のドアを開けてなかに入ると、あちこちにテーブルと椅子が置いてあって、旅人や傭兵と思しき何人もの人間がいた。その様子はまるで酒場のようであり、食べ物や飲み物をつまみながら談笑していた彼らは、ギルドに入ってきた少年たちに目を向ける。


 ひ弱そうな少年に修道服を着た金髪の少女、ひょろひょろとした青年や、まだ子供の白髪の少女。見るからに強そうではない四人を見て、ギルド内にいた人々は訝しげな顔を浮かべた。


「おいおい、ここは子供の来るところじゃねえぞ」

「さっさとママンのところにお帰り、はははは」


 などと野次を飛ばす者もいるほどだった。


 自分たちに飛んでくる粗野な言葉に少年はひるんでしまう。そんな彼に、毅然とした態度で金髪の少女が言った。


「無視しなさい、ケイ。さっさと用件だけ済ませて、帰ればいいんだから」


 青年もまた、少年の肩を元気づけるように軽くたたく。


「そうそう。こんなの、やつらにとっては『おはよう』っていう、あいさつみたいなもんさ」


 少年より旅慣れている青年はこういうことにも慣れているのだろう、全然気にした素振りも見せずに、入り口近くにあったカウンターへと歩いていく。


 白髪の少女と金髪の少女もカウンターへと向かっていく。


 野次はいまだに飛んでくるし、加えて、幾人かの観察するような視線も感じるなか、少年も彼らのあとを追ってカウンターへと向かった。先に歩いていった青年はすでに、カウンターにいるギルドの主人に話を聞いているようだった。


「おっさん、ちと聞きたいことがあるんだが、このギルドに返還魔法が使えるやつは登録しているか?」

「返還魔法?」


 ギルドの主人は眉をピクリと動かす。いきなり来て、何を聞いてくるんだこいつは……そう言いたげな顔付きだった。


「それなら俺が使えるぜ」

「……⁉」


 その返答に、少年が驚く。いきなり該当する人物が見つかったのだから、少年の反応は無理もないかもしれないが……。


 本当ですか……⁉


 少年が勢い込んでそう聞こうとしたとき、彼の肩を金髪の少女が制した。見ると、彼女の顔は嬉しそうではなく……むしろさっきよりも鋭さを増していた。


 ひょうひょうとした態度で青年がギルドの主人に聞く。


「ははは、ホントかよ?」

「ああ、ホントさ。おめーらみてーな見るからに弱そうでいまにも死にそうなやつらなんか、五秒もありゃ外に放り出せるぜ、はははは……!」


 主人の馬鹿にしたような笑い声に、ギルド内にいた多くの者が同調して笑い声を上げる。


 青年は少年たちにちょっとだけ振り返ると、やれやれといったように肩をすくめてみせた。すぐにまた主人に顔を向けると、別の質問をぶつける。


「あっそ。そんじゃ、返還魔法の使い手に心当たりはねえかな? この街のどこかにいるとか、別の街とかに……」

「おい、にーちゃんたち、よく聞きな」


 主人が青年に顔を近付けて、凄みを利かせた声で言う。


「返還魔法とかいう、難しいだけでクソの役にも立たねえ魔法を覚えているやつなんざ、このギルドにもこの街にも他の街にも、どこにもいねーんだよ……!」

「…………」


 青年や白髪の少女、金髪の少女の三人は動揺した素振りは見せなかったが、少年だけは主人のその声音にひるんでしまう。それと同時に、


(役に立たない……?)


 少年はそんな疑問も抱いた。


 しかしいまそのことを尋ねている余裕はなさそうで……。


 これで話は終わりだとでも言うように、ギルドの主人は青年たち四人をにらみつける。


「分かったらさっさと帰ってママン特製のあったかいスープでも飲むんだな。きったねえ地べたに転がりたいなら、いますぐ俺がそうしてやるがな、がははは……!」


 ギルド内の全員というわけではないが、主人に続くように二度目の笑い声の合唱が起こる。


 青年は少年たち三人に振り返ると、やれやれと肩をすくめた。


「んじゃ、帰るか。無駄足だったな」


 そう言って青年は入り口へと歩き出し、白髪の少女も続く。


 このギルドの入り口を入ってから数分も経っていないかもしれない……そのたった数分のやり取りで用件が片付いてしまって、またギルド内の粗雑な雰囲気に飲まれてしまって、少年は一瞬呆然としてしまう。


 そんな少年の肩に金髪の少女が触れる。


「ケイ、行くわよ。もう用は済んだんだから」

「え……あ、うん……」


 入り口へと歩き出しながら、励ますように、いたわるように金髪の少女が少年に言う。


「それと、あまり気にしないようにね。ギルドや酒場なんて、だいたいこんなもんなんだから」

「…………」


 ちらりと、二人を見ながら青年が付け足す。


「まあ、その街にもよるけどな。静かで丁寧なところもちゃんとあるぜ」


 うつむいていた顔を少しだけ上げて、少年は金髪の少女に聞いた。


「イブさん、返還魔法が役に立たない魔法って……どういうこと?」

「……。それは……」


 彼女が何か言おうとしたとき……。


 ギルドの奥から、彼ら目掛けて一つの大きな火球が飛んできた。


『…………⁉』


 とっさに少年が金髪の少女を押し倒し、また青年と白髪の少女も横に跳んで、その火球の一撃を回避する。


 ……が、その火球は入り口を焼きながら通ったあと急カーブを描くと、床に転がる少年と金髪の少女へと再度迫った。


「「な……っ⁉」」


 少年と金髪の少女が目を見開く。


 青年が火球へと片手をかざすが、


「クソッ、間に合わねえ……!」


 その声をあざ笑うように火球が少年たち二人に直撃した……。


 と思ったのも束の間で、次の瞬間、火球が跡形もなく消滅した。


 『少年の身体に触れた、その瞬間に』。


 目をつむっていた少年が目を開けて、何が起きたのか分からないといったように、


「え……いま、火の玉に飲み込まれたはずなのに……?」


 そうつぶやいている彼に、一早く状況を察した金髪の少女が声を上げる。


「早く起きるわよ、ケイ……! 火球はあんたに触れて、消えた。ってことは……!」


 起き上がって体勢を立て直した彼らの耳に、怒りと禍々しさがこもった声が聞こえてきた。


「チッ、相変わらずどうなってんだ、テメー。だが見つけたぜ、やっぱりここに来てやがったな、クソガキ……!」


 ギルドの奥にある階段を下りながら姿を現したのは……昨夜、世界樹の森で黒髪の少女と召喚されたばかりの少年を襲った男……。


 紅蓮のショウ。


 『絶対焼滅』のチート能力者だ。





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