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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第四幕】 【王都】

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その十一 お願いがあるんですけど……


 修道長が顔を上げるのとほとんど同時に、


「あ、あの……!」


 と黒髪の少女が声を出す。だが彼女が何かを言う前に金髪の少女が否定する。


「ダメよ」

「え……?」

「どうせ、自分もなにか手伝わせてください、とか言うつもりなんでしょ」

「あ……」

「さっきも言ったけど、サキがいまやるべきことは休むこと。なにか手伝いたい気持ちは分かるけど、とにかくいまは休みなさい」

「……はい……」


 黒髪の少女が落ち込むように返事をしたあと、今度は壁に寄りかかっていた青年が肩を軽くすくめた。


「それにしても少年にだけ頼むなんて、へこんじまうぜ。俺だってジャセイの『バイオ』をコピーしてるんだから、そのガンってやつを何とかできると思うけどなあ」


 全然へこんだ様子を見せずにひょうひょうと言う青年に、


「それは……」


 と修道長が目を伏せながら説明する。


「ジャセイが言っていたのです。そのガンを無理に取ろうとした場合、暴走して、宿主を殺害すると……」

「……なーるほど……」


 青年はすべてを理解したようだった。


「つまり俺がそのガンを取ろうとしたら、ジャセイが仕掛けたそのトラップが発動して、死体が一つ出来上がるってわけだ」

「その通りです……無論、ハオさんはジャセイのチート能力をコピーしているから、その同じ能力の作用であれば暴走しない可能性もあります……しかし……」

「あくまでただの可能性に過ぎないから、そんな危険を冒すのはできるだけ避けたい……ってことだろ」


 青年が少年を見やる。


「そんでもって、少年の『チート能力を無効化する能力』なら、そのトラップそれ自体すら完全に無効化した上で、ガンを消滅させることができるってわけだ」

「はい。まったくもって、ハオさんの言う通りです」


 と、修道長はうなずいて、青年もまた、


「ま、悔しいが、これに関しては俺がやるよりは少年に任せたほうが確実だわな」


 全然悔しそうな素振りを見せずに言ったあと、続けて、


「でも見学くらいはさせてくれよ。疑ってるわけじゃねえが、少年の『チートレイザー』って能力をこの目で見てみたいからな。いいだろ?」

「私からは何とも……ケイさんがいいとおっしゃれば……」


 修道長が少年を見て、青年もまた少年に視線を向ける。


 少年はうなずいた。


「いいですよ。別に減るもんじゃないですし」

「はははは。減るのはガンのほうだよな」

『…………』


 自分の言葉に青年は笑い声を出す。


 青年のその言葉はまさにその通りで、だからこそ、その他一同は何がおかしいのか分からない様子で、無言で彼のことを見つめていた。


 そんななか、ぼそりと白髪の少女がつぶやく。


「……ぜんぜんうまくないから……」



 それから、黒髪の少女を部屋に残して、修道長を先頭に一同は奴隷たちがいる場所へと向かっていく。その途中、昼食を食べた部屋の前に来たとき、


「じゃ、あたしはお昼の後片付けがあるから。ケイ、頼んだからね」

「うん、任せて」


 と、金髪の少女と別れる。


 また歩き始めながら、修道長が少年に言う。


「到着したら、私が彼らに説明しますので、ケイさんにはそのあとで彼らのガンの消滅をお願いします」

「分かりました。……あの、一つお願いがあるんですけど……」

「なんですか?」

「できればでいいんですけど、ジャセイを倒したことを説明する場合は、サキさんの名前は伏せてくれませんか……」

「構いませんが……なんでまた?」


 歩きながら、修道長と青年が少年に視線を向ける。


「サキさんが言ってたんです、サトリの力を奪おうとする悪い人たちに命を狙われているって……だから、ジャセイを倒すことをサキさんが手伝ったって言ったら、その悪いやつらに、サキさんがここにいることがバレちゃうと思って……」

「なるほど……」

「なるほどねえー」


 修道長と青年が納得したように声を出した。


 少し考える素振りをしたあと、修道長が口を開く。


「確かにケイさんの言う通りかもしれませんな。分かりました、サキさんのことは伏せておきましょう」

「ありがとうございます」

「いえいえ、私のほうこそ気が付かなくて……」


 二人の会話に、青年が茶化すように口を挟む。


「本当はほっとしてんじゃねえのー? 呪われた黒髪ちゃんと関わってるって街のやつらに知られなくて良かったって」

「…………!」


 青年の言葉を聞いた瞬間、修道長がその場で立ち止まり、黙ったまま青年のことを見つめる。修道長はそのまま強い目を青年に向けていたが、少しすると視線を外して、懺悔するように口を開く。


「…………正直な話ですが、昨日までの私なら、ハオさんの言う通り、サトリの呪いを持ったサキさんと関わることを可能な限り避けていたでしょう……」


 修道長がもう一度青年に顔を向ける。初老の男のその瞳には、覚悟と決意を宿した強い光があった。


「ですが……! いまの私はもう、そのような考えは持っていません。私たち修道会やこの街を支配していたジャセイを倒すために、サキさんは自分の命を懸けてくれたのです。だから、私は自分にできる限りの協力をしようと決めたのです……!」


 修道長が少年に視線を向ける。


「無論、同じように命を懸けて倒してくれたケイさんにも、私は協力を惜しみません」


 修道長の決意の宿ったその言葉に、


「…………!」


 と、少年は目を見開き、


 青年もまた、


「……そんならいいんだ……悪かったな、変なこと言って……」


 と、すまなそうな気持ちを込めた声を返した。


「……気にしないでください……そう思われても仕方がないくらい、私はいままでサキさんや、彼女の家族と関わることを避けてきたのですから……。…………行きましょうか……」


 彼らは目的の場所へと向かうため、もう一度歩き始めた。




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