その五 新たな襲撃
先ほどいた廃屋へと戻る途中、ふと少年は立ち止まって周囲を見回す。もの珍し気にきょろきょろと首を巡らしている少年に、気が付いた少女が尋ねる。
「どうしたのですか」
「いや……外国みたいな街だなと思って……」
石畳の通りにレンガで建てられた家屋。天井には煙突が突き出ていて、暖を取っているのだろう、そのいくつかの煙突からは煙が出ていた。異世界に転移したとはいまだ信じられない少年だが、いま見ているこの光景は事実に違いない。
「本当に異世界に来ちゃったみたいだ……」
「……信じられないでしょうが……」
「う、うん。分かってるよ、頭では分かってるんだけど……やっぱりね……」
きょろきょろと辺りを見ている少年に、少女は息を一つ漏らす。
「戻りましょうか。ここにいたら冷えますから」
「あ、うん、そうだね」
自分だけならまだしも、少女まで風邪を引かせてはダメだろう。少年は慌てて少女の元へと行き、二人並んで歩きだす。歩きながら、少女は少し迷った素振りを見せたあと、重たげに口を開いた。
「……ケイさんにまだ説明していなかったことがあります」
「え……?」
「さきほどは、はぐらかしてしまいましたが、わたしと一緒に行動する以上、知っておいてほしいことがあるのです」
シリアスな雰囲気の少女に、少年はごくりと喉を鳴らす。
「な、なに……?」
とはいえ少女も口に出すことに勇気がいるのだろう、一瞬のためらいのあと、ようやくといったように話し始めた。
「……わたしの……【呪い】について、です」
「……呪い……」
「はい」
そして少女は言った。
「わたしにはあらゆるものの情報を知ることができる【呪い】がかけられているのです」
「……それって……」
どういうことなのかと少年が問おうとしたとき、二人が歩いてきた道の向こうから、何かが少女に向かって飛んできた。
「あぶない!」
気が付いた少年が叫ぶ。
「⁉」ぶつかる直前に気が付いた少女が、慌てて身をひねってその影をかわす。石畳の通りに転がったのは、一個の赤い果物……リンゴだった。
「どうしてこんなものが……?」
「…………」
地面に転がるリンゴを見て疑問の声を上げる少年と、無言のまま見つめる少女。
そのリンゴを少年が拾い上げようとするのを、少女が慌てて制止しようとした、そのとき、そのリンゴがやってきた通りの向こうから、今度は甲高いいななき声を上げて、リンゴを始めとした様々な果物の荷箱を積んだ馬車が、二人へと勢いよく駆け出してきた。




