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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第三幕】 【修道会】

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その四十五 『困っているものには救いの手を』


 床に手をついている金髪の少女の額に脂汗が浮かぶ。炎の壁を生成し、ジャセイたちを足止めすることに成功したというのに、その表情には険しさがにじんでいた。


(もって……数分ってところかしら……)


 金髪の少女は修道士見習いだ。回復魔法に関しては治癒魔法は使えるものの、浄化魔法は未熟のまま。攻撃魔法だってまだまだで、さきほど見せた小さな火球をいくらかと、いまやっている炎の壁がせいぜいだった。


 この炎の壁を維持し続けているだけで、金髪の少女の魔力、精神力、体力は刻一刻と、すり減っていっている。


 そんな炎の壁を眺めつつ、ジャセイがあごに手を当てて、つぶやく。


「ふむ。この程度の炎くらいなら、私であれば口笛を吹きながらでも簡単に突破できるのですが……さすがに服は燃えてしまいますね」


 ジャセイのチート能力は『回復』に関連したもの。生物は治せても、物体は直せない。


「服がないと困りますからね……どうしたものか……」


 思案するような声を出してはいるものの、その表情にはまったく困った様子は見えない。建物を取り囲む炎の壁から視線を外したジャセイが、部屋の床に手をついている金髪の少女を一瞥する。


「ふふふふ。単純なことではないですか、あの小娘を殺してしまえばいいだけのこと」


 追いつめた獲物を狙うヘビのように、ジャセイが金髪の少女へと手をかざそうとした、そのとき、それまで床にへたりこんだままだった修道長が慌てて立ち上がり、ジャセイへと声を掛ける。


「お、お待ちください……! それだけは……! 私が何とかしてみますから!」


 ジャセイが修道長をちらりと見るが、そんなことには構わず、修道長は金髪の少女に言う。


「イブ! いますぐこの炎を消しなさい! どうしてサトリなど守る必要があるのだ! あんな呪われたものなど……!」

「……どうして……?」


 金髪の少女が顔を上げる。炎の壁を維持し続けているからか、その表情には疲労が見て取れた。息を切らしながら、それでも炎を絶やすことなく、正面にいる修道長たちを見据えて、言葉を放つ。


「彼らが困っていたからです……『困っているものには救いの手を』、それが、あたしが理想とする修道士の姿だからです……そのことに、呪われているかどうかなんて、関係ありません……!」

「…………⁉」


 修道長が息を飲む。修道長だけでなく、修道士の男もまた、金髪の少女の気迫に目を見開く。


 ただ一人、ジャセイだけが薄い笑みを浮かべていた。




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