その四十三 教えるわけにはいかない
金髪の少女を前にして、ジャセイは張り付けたような笑みを浮かべ続けている。
「イブさん、そちらから出てきてくれたのは、とてもありがたいです。私にサトリの居場所を教えに来たのでしょう? サトリはいまどこにいるのですか?」
その問い掛けを、しかし金髪の少女は、はねのける。
「いったいなんのことですか? ここにはあたししかいませんが」
「…………」
ジャセイの瞳が鋭くなる。ちらりと、そばにいる修道士の男に視線を向けると、修道士の男は慌てふためいた。
「わ、私は嘘など申しておりません! た、確かに見ました! イブとサトリが一緒にいるところを!」
再び金髪の少女に視線を戻して、鋭かった瞳を柔らかくして、ジャセイは言葉を続けた。
「嘘はいけませんね、イブさん。サトリをかばっても、あなたには何の得もありませんよ」
「ウソなど申しておりません。そちらのかたがなにかを見間違えたのではないでしょうか」
彼女の言葉に思わず反論しようとした修道士の男を、ジャセイが手で制した。ジャセイがやれやれといった身振りをする。
「……最後のチャンスですよ。正直に教えてくれれば、あなたに危害を加えるつもりはありません。サトリはどこですか?」
ジャセイの言葉に、今度は金髪の少女がうっすらと笑みを浮かべた。
「それはつまり、『あたし以外には危害を加える』ということですね」
揚げ足取りといえば、そうかもしれない。しかしサトリに、すなわち黒髪の少女の身に危険がおよぶ可能性がある以上は……。
金髪の少女が強く言う。
「そういうことでしたら、たとえあたしがサトリの居場所を知っていたとしても、やはり教えるわけにはいきません」
「…………やれやれ。強情なかたですね」
ジャセイが息を吐いた。
「私を騙そうとしたこと、後悔させてあげますからね」
言った直後、ジャセイが実験室の出入り口へと振り返り、手をかざした。
そこには、いままさに脱出しようとしていた黒髪の少女と少年がいた。
「この私から逃げられると思っていたのですか!」
ジャセイの手から撃ち出された紫色の球体が、黒髪の少女と少年の背中へと迫る。




