その四十一 呪いの事情
室内を探すジャセイの足音が、次第次第に三人の元へと近付いてくる。こうなれば、見つかるのは時間の問題だろう。
しかしだからこそ、少年にとっては。
「でも、でも、それならなおさら、イブさんを置いていくわけにはいかないよ……!」
不死身に近くて、対生物最強……そんなことを聞かされて、金髪の少女をおとりにすることなど、少年にはできなかった。黒髪の少女に同意を求める。
「サキさんだって、そう思うでしょ」
「はい。ここはなんとか、三人全員が逃げ延びる道を探すべきだと……」
思います、そう言おうとした黒髪の少女の言葉にかぶせるように、金髪の少女が口を開いた。
「呪いのこと、忘れたの? あなたの呪いは……」
最後まで言わずに、じっと見つめてくる彼女に、黒髪の少女がハッとした表情を浮かべる。意味が分かっていない少年が、二人を交互に見た。
「え、サキさんの呪いって、サトリのことでしょ……?」
それで間違いないはずだ。黒髪の少女の呪いは、対象のあらゆる情報を知ること。それがいま、何の関係があるのか。
少年がそう問おうとしたとき、思い直したように黒髪の少女が言った。
「……分かりました。わたしたちが外に出るまで、お願いします、イブさん」
「最初からそう言えばいいのよ」
「ちょ、ちょっと待って……!」
話の内容に一人だけ取り残された少年が口を開く。
「なんでそうなるの……⁉ サキさんも、さっきは三人で逃げようって……」
「……事情があるんです……」
「事情……?」
「はい……あとで……ここから無事に逃げることができたら、説明しますから……」
深刻な表情を浮かべる黒髪の少女に、だが少年は納得することができない。……いま聞かせて……彼がそう言おうとしたとき、それを阻むように金髪の少女が言った。
「安心しなさい、ケイ。修道長がいるんだし、ジャセイのやつも手荒なことは控えるはずよ。あたしは大丈夫だから、二人は早く逃げるように」
少年がなおも反対の声を上げようとする前に、金髪の少女は物陰から飛び出していた。
彼女を引き戻すために、思わず続けて飛び出そうとする少年のことを、その腕を強く取って、黒髪の少女は引き止める。
離して!
そう叫ぼうとした少年の口を、黒髪の少女が手で押さえる。
そして少年の思いもむなしく……金髪の少女は近付いてきていたジャセイの眼前に姿を現した。




