その四十 浄化魔法の攻撃転化
金髪の少女が言い放った言葉に、少年はジャセイたちに聞こえないように小さな声で、だがはっきりと反対の意見を上げる。
「そんな……! そんなことできるわけないよ……! 注意をひきつけるなら、俺が……」
「あなた、防御魔法は使えるの?」
「え……?」
防御魔法……? 金髪の少女に問われて、少年は答えることができない。
防御魔法どころか、魔法そのものが使えないのだから。そのことを正直に言えば、金髪の少女のことだ、やはり自分が注意をひく役を引き受けるだろう。そして言わなくても、また同じように。
言葉に詰まる少年を見て、金髪の少女が口を開く。
「ジャセイのチート能力はこっちの世界でいうところの『回復魔法』」
そのことは前に、仮面の剣士から聞いたことがある。疑問を覚えて、少年は問う。
「回復だけで攻撃する力じゃないのなら、防御魔法とかっていうのがなくても……」
自分でも注意をひけるはずだと言おうとしたとき、何かに気付いた黒髪の少女が口を挟んだ。
「……浄化魔法の攻撃転化……ですね……」
「サキは分かったみたいね」
「どういうこと……?」と、少年は黒髪の少女を見る。意味を飲み込めていない彼に、黒髪の少女は答えた。
「前にイブさんが説明しましたけど、回復魔法には大きく分けて二種類あります」
「うん、怪我を治す治癒魔法と、病気を治す浄化魔法。それがどうかしたの」
「より詳しく説明すると、治癒魔法は生き物の身体を作っている細胞に働きかける魔法なんです。細胞を修復したり、増やしたりして、傷を治していきます。そして浄化魔法というのは……」
黒髪の少女の説明を、金髪の少女が引き継ぐ。
「浄化魔法にはいくつか種類があるけど、その一つに、病気の原因である細菌やウイルスを死滅させることで、病気を治すというものがあるの。簡単に言えば、病原菌を攻撃するってことね」
「あ……」
そこまで聞いて、少年も気付いたようだった。
「分かったみたいね。病原菌を攻撃するこれを、人間や動物に対して応用したのが、浄化魔法の攻撃転化。ジャセイの『回復』のチート能力は、不死身に近い再生力と同時に、生き物に対してなら最強の攻撃力を備えているの」
ごくりと少年はのどを鳴らす。彼はようやく理解できた、仮面の剣士がジャセイに対して言っていた、最強と不死身という意味を。




