その三十六 サトリの元へ
修道会へと入ってきた修道士の男に、ジャセイは言う。
「見つかりましたか。それで、どこにいましたか?」
「この近くにある学院の、魔法実験室です」
「修道長の話では、怪我をした者と一緒のはずでしたが、そうでしたか?」
「いえ、遠くてはっきりとは見えませんでしたが、どうやら怪我をしているのは、サトリの方でした」
修道士の男の言葉に、修道長が尋ねる。
「それは確かなのか? 私が見たときは、サトリは怪我などしていなかったはずだが……」
それに、あのとき重傷を負っていた者はどうしたというのだ? 修道長の心の中の疑問に答えるように、ジャセイが口を挟んだ。
「おそらく、修道長の助言を聞いたあとギルドに向かって、そこにいた誰かに治してもらったのでしょう」
「ふうむ……」
腑に落ちないといった感じで、修道長は声を漏らした。
考え込む修道長を置いて、ジャセイは修道士の元まで歩を進めていく。
「それではさっそく、サトリがいる場所まで向かいましょうか。案内してください」
ジャセイに言われた修道士の男は、しかし、なぜかためらう様子をみせた。
「どうかしましたか?」
「それが、その……」
言おうかどうか逡巡している様子だった修道士の男だったが、問いただすように見つめてくるジャセイの視線に耐えかねて、口を開いた。
「……理由は分かりませんが、イブが、サトリと共にいました……」
「なにっ⁉ イブがッ⁉ それは本当なのか? 見間違いではないのか?」
イブの名前に、修道長がいち早く反応する。見間違いなどでは決してないというように、修道士の男は首を縦に振った。
「間違いありません。あれは確かに、ここに属しているイブでした」
「……ッ⁉」
神妙な顔つきの修道士の男と、驚愕の表情を浮かべる修道長。二人を順々に見て、ジャセイが口を開く。
「これではっきりしましたね」
「何がですか?」
唐突なジャセイの言葉に、修道長は意味が分からないという顔をした。ジャセイが説明する。
「サトリと一緒にいた者の怪我を治したのが誰かということですよ。そのイブさんとやらが治したのでしょう。いやはや、修道士の鑑ですね」
「……そうかもしれませんが……しかし私に黙って、サトリと共にいるなど……街の誰かに見られでもしたら……」
修道会があらぬ誤解を受けてしまうかもしれない。呪われた者を助けた、悪魔に魅入られた修道会などという……。
そんな心配をする修道長を、ジャセイは笑い飛ばした。
「ハハハハ。それを言ったら、私だってそうでしょう。これからそのサトリに会いに行くのですから」
ジャセイが修道士の男を見やる。
「では、案内してください」
修道士の男はうなずいた。




