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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第三幕】 【修道会】

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その三十五 人質となる修道会と街


 みすぼらしい男とジャセイのやり取りを、そばにいた修道長は難しい顔で見ていた。その修道長に、ジャセイが振り向いて言う。


「それでは修道長、この者たちを奴隷小屋へと案内してください」

「……かしこまりました、ジャセイさま」


 うなだれている男へと修道長が近付いていき、その腕を取って立ち上がらせると、広間の一方にある扉へと連れていく。


 ……。しばらくして、修道長は広間へと戻ってくる。見ると、ジャセイはそこにある長椅子に足を組みながら横になって、組んだ手を枕にして目をつむっていた。


 ゆっくりと近付いて、修道長は失礼のないように気をつけながら声を掛ける。


「ジャセイさま」

「なんですか?」


 目をつむったまま答えるジャセイに、修道長は進言した。


「奴隷小屋がもうすぐいっぱいになります」

「そうですか」

「少し奴隷を増やし過ぎなのではないかと思います。これからはもうちょっと……」

「まさか、私に奴隷を増やすな……と言うつもりじゃありませんよね」


 ジャセイはうっすらと瞳を開けて、鋭い視線を修道長に向けた。


 慌てて、初老の男は否定する。


「め、滅相もございません。ただ……奴隷小屋にもう入りきらないのも確かで……」

「それならば、もう一軒、新しく作ればいいではありませんか。そうするだけのお金はあり余ってるでしょう」

「は……おっしゃる通りで……」


 初老の男は頭を下げる。その修道長に釘を刺すように、ジャセイは身を起こしながら言った。


「忘れているようですから言っておきますが、あなたも含めて、この修道会にいる修道士たちの命は、私の心一つで簡単に奪えるのですからね。もっと言えば、修道士たちだけではなく、この街に住む人々全員ですら、私は一瞬で殺すことができる」

「は……忘れたことなど……」


 頭を下げたままの修道長の額に、冷汗が浮かび上がる。


 ジャセイの言ったことは単なる空威張りでも、脅しでもない。このチート能力者は確かに、この街に住む人間全てを瞬殺できる力を持っていて、機嫌を損なえば、有言実行するだけの行動力も備えているのだ。


 ジャセイには、絶対に、逆らってはいけない。


(逆らえば、全てが死に絶える……私も、修道会も、そしてこの街すら……)


 ポタリ。額から浮かび上がった冷汗が頬を伝い、床へと落ちた。まるで、初老の男の涙のように。


 修道長に忠告して、再びジャセイが長椅子に横になろうとしたとき、修道会の入り口が開いた。男の修道士が駆けこんでくる。


「サトリのサキを見つけました……ッ!」


 その知らせを聞いて、ジャセイがニヤリと笑った。




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