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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第三幕】 【修道会】

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その三十 メッセージ


 黒髪の少女の元まで戻った金髪の少女が、外に聞こえないように小さな声でささやく。


「ここを離れるわよ」

「え? なぜですか?」

「ジャセイがあなたを探してる」

「ジャセイ?」


 聞き慣れない名前に、黒髪の少女は小首をかしげる。彼女の腕を自分の肩に回しながら、金髪の少女は短く言う。


「悪いチート能力者、って言えば察しはつくでしょ」

「あ……」


 黒髪の少女は気が付いて、金髪の少女に言われるままに、作業台から降りる。足を床につけたとき痛んだのか、


「……っ……!」


 我慢はしたものの、わずかに顔をしかめる。金髪の少女が言った。


「痛いだろうけど、我慢してね。裏口を出て少し行った先に、学院があるから、そこに向かうわよ」


 そこで気が付いたように、


「あ、あと、ケイだっけ、あいつが戻ってきたときのために、別の場所に移ったって書き置きしておいた方が……いや、ダメか」


 思い直したように、金髪の少女は首を横に振る。


「そんなもの残して、修道会のやつらに見つかったら移動した意味がないし……かといって何もメッセージを残さなかったら、あいつが分からないし……困ったわね……」


 金髪の少女は考え込む。


「あいつにだけ見えて分かるようなメッセージがあればいいんだけど……そんな都合のいいものなんて……」

「……あります……」

「え……?」


 金髪少女が黒髪の少女を見る。黒髪の少女は作業台に手を触れた。すると、呪いの力であるメッセージウインドウが出現する。しかし文章は現れず、淡く光るウインドウは空白のままだ。


「この呪いは残留思念みたいなものも表示できるんです。これを応用して、わたしたちが移動したことを知らせましょう。ケイさんがここに戻ってきたときだけ、自動で出現するように設定して……」


 文章が表示されたあと、メッセージウインドウは淡い光を残して消えていった。


 目を丸くしていた金髪の少女が、神妙な顔に戻って言う。


「ケイってやつも言ってたけど、確かに呪いじゃなければ、便利な能力かもしれないわね……」

「……本当に……そうだったら良かったんですけど……」


 悲しげに黒髪の少女はつぶやく。


 そして二人は工房の裏口から外に出て、近くに建てられている学院へと向かった。




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