その二十七 ひょうひょう、殺気
「なんだおまえは」
急に現れた青年に、警戒感を強めながら壮年の男が言う。
青年の年齢は二十代くらいだろうか、黒い外套を羽織っていて、明らかに愛想笑いと分かる表情を浮かべている。ひょうひょうとした雰囲気を醸し出すその青年が説明した。
「俺ら旅のパーティーを組んでましてね。数日前に別の仲間が風邪をこじらせちまったみたいで、その薬を入手するために、みんなでいろいろと探し回ってたってわけで。で、こいつがそれを見つけたと」
うさんくさそうなものを見る目で、男が青年を見やる。
「ふん、それならば修道会に行けばよかろう。あそこならばいま……」
「いやー、俺たちもそうしたいのはやまやまなんですけどねー」
青年が頭をかいた。
「俺たちって超貧乏なパーティーなんですよ。だから、ジャセイさんって言いましたっけ、その人に風邪を治してもらっても、払えるお金がないんですよねー」
勲章をつけた男の眉がピクリと動いた。
「何を言っている。あれは治療費などではなく寄付だ。皆、ジャセイさまに感謝しているだけだ」
語を強める男に、青年は笑い声を上げた。
「あははー、こりゃーうっかりしてました。そうでした寄付でした。いやーすみません」
「ふん、分かればいいんだ」
「そんじゃあ、せっかく薬を探してもらったこいつには悪いけど、これから修道会に行ってジャセイさまに治してもらうことにしますよ。ほら、行くぞ」
振り返り、少年の背を押して、青年は立ち去ろうとする。そんな彼らに、男が押しつけがましいように言う。
「おまえたちがちゃんと修道会に行けるように、わしもついていこう。夜盗や悪いチート能力者に襲われたら大変だからな」
「あ、それなら大丈夫です。心配にはおよびません」
ついて来ようとする男を、青年は手で制した。男がムッとする。
「何が大丈夫なものか。そんなモヤシみたいな、ひょろくさい格好のくせに」
「あー、実は俺、チート能力者なんですよね」
「なにッ……⁉」
男の表情がこわ張った。へらへらと笑いながら、青年は続ける。
「こう見えて、パーティーのランクもAランクなんですよ。だから、街のゴロツキ程度のやつらなら、簡単に返り討ちにできるんで。なんなら、試してみます?」
愛想笑いを浮かべていた青年の瞳が、一瞬、キラリと光った。その瞬間、それまでのひょうひょうとした雰囲気からは想像も出来ないような、研ぎ澄まされた鋭利な剣で刺すかのような、殺気が青年から放たれる。
男もそれを感じ取ったのだろう、慌てて、
「い、いや、それならばいいのだ。ちゃんとジャセイさまに治してもらうのだぞ」
そう言い残して、関わり合いになりたくないとばかりに、その場から走り去っていった。
その背中に、殺気を消して、ひょうひょうとした雰囲気に戻った青年が、手を振りながら言う。
「はいはーい。おつとめ、ごくろうさまでーす」




