その二十一 森の入口へ
少年や二体のオオカミには一瞥も与えずに無視して、フードをかぶった人物は仮面の剣士に言う。
「戻るようにとのことです。ご同行しましょう」
「……分かった……」
仮面の剣士は小脇に抱えていた発光石を収納魔法の中にしまい込む。そして少年の方にちらりと振り返ってから、早口で、
「ジャセイのチート能力は、こちらの世界でいうところの『回復魔法』に該当する。とにかく、ジャセイと修道会には関わるんじゃないぞ。絶対な」
最後にそれだけ言い残すと、仮面の剣士はフードの人物の元まで向かい、二人は森の入口の方へと歩いていった。
その後ろ姿を見つめていた少年は、少しして、思い出したように「あっ」と声を上げる。二体のオオカミの方へと振り返り、
「俺も街に戻らないといけません。世界樹でしたっけ? 勝手にこの大きな樹に近付いて、すみませんでした」
頭を下げる少年に、オオカミは言う。
『謝ることはない。早とちりした我らにも非があるのだからな。その詫びと言っては何だが……我の背中に乗るがいい。森の入り口まで連れて行ってやろう』
「え、いいんですか……? 俺なんか乗せたら、疲れちゃうんじゃあ……」
気にかける少年を見て、魔狼が笑い声を上げる。
『人間の小僧一人、乗せたくらいで誇り高き魔狼の我が疲れるものか。それよりも、早く街に戻りたいのだろう? つべこべ言わずに、魔狼の好意は素直に受け取っておくものだ。さあ、乗れ』
「は、はい」
威厳あふれ、有無を言わせない調子の魔狼に、少年は恐縮しながらその背中に乗った。
『これでは、詫びなのか命令なのか分からんな』
半ば呆れた様子で魔狼がつぶやく。少年が乗ったのを確認して、白狼を見やる。
『おまえはここで待っていろ。それでは小僧、行くぞ。振り落とされないように、しっかりつかまっていろよ』
「は、はい……!」
そして魔狼は疾風のような速度で、宵闇に包まれる森の中を駆けだした。




