その十九 忠告
『それはそうと、興味がわいた。貴様たちの名は?』
魔狼の問いに、少年と仮面の剣士が答える。
「俺はケイっていいます」
「私はソナーだ」
『……ケイとソナーか……』
魔狼がつぶやく。
続いて、仮面の剣士も少年に尋ねる。
「そういえば少年、ずっと気になっていたのだが、その服装……もしかして、きみは異世界転移者なのか?」
異世界転移という言葉を聞き慣れていない少年は、困ったように頭をかきながら、
「え、えーっと、よく分かりませんけど、この森のすぐ近くの街にいる知り合いからは『異世界の民』とかって言われてます」
「…………やはり、そうだったのか……」
仮面の剣士が少しだけさびしそうな目になる。しかしすぐに真顔に戻ると、真剣な口調で少年に聞いた。
「絶対に助けたい人がいると言っていたな。それはもしかして、いまきみが言った街にいる知り合いなのか?」
「あ、はい、そうです」
「ならば、修道会には行かずにその薬草を採りに来たのは正解だった。助けてもらった礼に忠告しておくが、あの街の修道会とは関わるな。特に、ジャセイというチート能力者にはな」
「ジャセイ……?」
「やつはあらゆるチート能力者の中でも、間違いなくトップレベルだろう。私が知る限りでは、最強、無敵、そして不死身に近い力を持っている」
ごくり、と少年がつばを飲み込む。仮面の剣士は続ける。
「なによりも、やつは目的のためなら手段を選ばない。やつが修道会に現れてからというもの、修道会も堕落してしまった」
そして、「いいか」と、最後に仮面の剣士が言った。
「死にたくなければ、大切な人を殺されたくなければ、絶対にジャセイと、やつがいる修道会には関わるな」
有無を言わせぬその言葉は、少年の心に刻み込まれた。
感染症に罹り危機に瀕している黒髪の少女――サキと、その彼女のそばに寄り添って病の進行を遅らせている金髪の少女――イブの、二人の姿を脳裏に描きながら……。




