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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第三幕】 【修道会】

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その十七 不殺の意志

「……どういうつもりだ、少年」


 目の前で、倒れた灰白のオオカミをかばう少年に、仮面の剣士は静かに尋ねる。仮面から覗く剣士の瞳を真っすぐに見つめ返して、少年は答えた。


「勝負はもうついています。このオオカミはもう動けない。殺す必要はないと思います……!」

「こいつは魔獣……魔法を扱える獣だ。治癒魔法でその傷を回復されたらどうする。その前にトドメを刺さなければ」

「そのときは……気絶させればいいだけです。俺があっちのオオカミをそうしたように」


 仮面の剣士は、それまで少年が戦っていて、いまは地面に横になっている白狼をちらりと見る。顔を少年に戻して、


「……魔獣はときに人を襲うこともある。こいつらが私たちをそうしたように。いま生かせば、あとでたくさんの人が死ぬことになるかもしれないんだぞ」


 少年の顔に一瞬、逡巡の色が現れる。


 倒れていた白狼が起き上がり、傷付いた灰白のオオカミへと近寄っていく。仲間の顔や傷を、いたわるようにぺろぺろとなめ、悲しそうな声を漏らす。


 その様子を見て、少年は迷いを払うように首を横に振り、言った。


「俺がこいつらに言い聞かせます。人を襲ってはいけないって……!」

「もし、それでも、罪のない人々を傷付けてしまったら……?」

「……そのとき……は……」


 少年の声が落ち、広げていた両腕を下げ、顔をうつむかせる。


「そのときは……仕方ありません……倒してください……」


 もう一度、仮面の剣士へと顔を上げる。


「でも、でも、いまはダメです……! こいつらだって、俺たちがいきなりやってきて、この森を荒そうとしたって、勘違いしただけかもしれないんですから」

「…………」


 長剣を振り上げたまま、仮面の剣士は黙って目の前の少年を見つめる。


 しばしの沈黙。静寂の思考。


 ふう、と、小さなため息を吐いて、仮面の剣士は長剣を静かにわきへと下ろし、腰の鞘に納めた。


「きみがいなければ、私は死んでいたかもしれない。ならば、きみの言うことを信じるしかないじゃないか」

「あ、ありがとうございます!」

「それはこちらのセリフさ。助けてくれて、ありがとう。さっそく、さっき助けた礼を返されてしまったな」


 仮面の剣士は微笑んだ。



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