その十五 仮面の剣士 VS 灰白のオオカミ
つぶやいた少年の耳に、硬質なもの同士がぶつかり合うような、きらめきのような高い音が聞こえてくる。音の方に振り返ると、視界の向こうで、仮面剣士と灰白のオオカミが凄絶な攻防を繰り広げていた。
鈍色となった灰白のオオカミの腕は鉄や鋼などの金属と同等の硬度をもっているのだろうか。剣士の剣戟を灰白のオオカミの腕が受け、灰白のオオカミの爪撃を剣士の長剣が受ける。
どちらも一歩も引けを取らないように見えたその攻防だったが、わずかに灰白のオオカミの方が力が勝っていたらしい。剣士の足は徐々に後ずさり始めていた。
「く……」
そのとき、剣士が受けた灰白のオオカミの腕から、先ほど見たのよりは小さい魔法陣が出現する。同時に、剣士の足元にも同じような魔法陣が描き出され、そこから一本の、槍のような鈍色の突起物が現れ、剣士へと襲い掛かった。
「しま……っ!」
その槍を、かろうじて剣士は避ける。……と、瞬間的にできたその隙をついて、剣士の眼前へと迫った灰白のオオカミが、仮面の剣士の身体を薙ぎ払った。
「ぐ……っ!」
防御も回避も間に合わなかった剣士が木の幹に衝突する。地面に崩れる剣士に、灰白のオオカミが飛び掛かる。
「ソナーさん!」
間に合わない。たとえ少年が全力疾走したとしても、彼がいる場所から剣士がいるところまでたどり着くのに、数秒はかかる。その間に、剣士は灰白のオオカミに殺されてしまうだろう。
いや、たとえ灰白のオオカミが襲うよりも先にたどり着けたとしても、戦闘訓練を積んでいない少年には、やはりどうすることもできない。剣士の代わりに殺されて、そしてそのあとに剣士も殺されるだけだ。




