その十四 発光石
背を樹の幹にもたれるようにして座り込む少年の頭部を、いままさに白狼の牙が噛み砕こうとする。そのとき、死を覚悟した少年の視界の端に、あるものが映り込んだ。
それは、石。
少年の頭部と同じか、もしくはそれよりも少し小さいくらいの、風雨や土で汚れた石だった。
白狼の牙が迫る中、とっさに少年はその石を拾い上げ、大きく開いた白狼の口の前へと持ち上げた。
「⁉」
予想外の少年の行動に、驚きで目を見開く白狼は、眼前の石を回避することができず、口の中へと石がはまりこむ。ガキッと、白狼の牙が石の表面に突き立てられる。
しかし、さすがの白狼の牙をもってしても、硬い石を砕くことはできなかった。
すぐさま白狼は口にはまった石を吐き出そうとする。その隙を少年は見逃さなかった。即座に立ち上がり、頭を左右に振る白狼へと駆ける。
「ごめん……っ!」
「⁉」
人も動物も含めて、可能な限り誰も傷付けたくない少年は、その行動を取る前に詫びの言葉を口にする。
そして白狼のそばに近寄った少年は、隙だらけになっていたその横腹を、全身全霊、渾身の力を込めて蹴り飛ばした。
その勢いで白狼は吹き飛ばされ、すぐ近くにあった木の幹へとたたきつけられる。その拍子に樹上からいくつかの果物が落ちてきて、地面に倒れる白狼の頭にぶつかった。しかし白狼は何の反応も示さない。
「……?」
すぐに起き上がって反撃してくると思っていた少年は、おそるおそる白狼へと近付いていく。
顔を覗き込んでみると、ぐるぐると、白狼は目を回していた。
とりあえず危機は脱したらしいことを悟って、ほっ、と少年は胸をなでおろす。ふと気が付くと、白狼の口から転がり出たさっきの石が、ほのかに光を放っていた。
「これは……?」
少年は思い当たる。仮面の剣士、ソナーが探していたのは……。
「もしかして、これが発光石……?」




