その十三 【魔獣】
少年たちの姿を認めて、灰白のオオカミがうなりを上げる。そして少しだけ身を低くしたかと思うと、その脚力でもって仮面の剣士へと飛び掛かった。
前脚による鋭い爪の一撃をかわした仮面の剣士は、即座に腰の長剣を引き抜くと、地面を蹴って灰白のオオカミへと斬りかかる。
きらりと光る切っ先が灰白のオオカミの身体を切り裂こうとした刹那、その灰白のオオカミの身体を囲むように、奇妙な文字の書かれた、円形の黒く輝く魔法陣が現れる。
それまで生身だったはずの灰白のオオカミの腕が金属的な光沢と硬質感のあるものへと変化し、剣士の振り下ろした一撃を受け止めた。
「!」
驚く剣士を、灰白のオオカミは長剣を受け止めた腕を振り払い、向こう側に生えていた木の一本へとたたきつける。
「ソナーさん!」
とっさに駆け寄ろうとした少年の前に、小柄な白狼が立ちはだかった。小柄というのは、あくまで灰白のオオカミと比べたときの話であり、その体躯は少年の身体と同等か、それより少し大きいほどだ。
「逃げろ、少年! こいつらは【魔獣】だ!」
「ソナーさんを置いて逃げることなんか、できません!」
いや、そもそも白狼も灰白のオオカミも、二人を逃がす気などない。
白狼が襲い掛かり、少年はとっさに横に飛んでそれをかわす。
視界の端では、同じように灰白のオオカミが立ち上がった仮面剣士へと襲い掛かっていた。仮面剣士は長剣でそれを防ぐ。
なんとかして助けに向かおうとした少年の前に、再び白狼が立ちふさがる。どうやら灰白のオオカミが仮面剣士と戦い、白狼は少年の相手をするように役割分担しているらしい。
もう一度、飛び掛かってくる白狼の一撃を少年は横に避ける……が、それを予期していた白狼が、少年の横を通り過ぎざま、尻尾を振り払った。
「⁉」
予想外の攻撃に、少年は回避が間に合わない。いや、予想できていたとしても、戦闘訓練を積んでいない少年に、この連続攻撃は避けられないだろう。
「が……ッ!」
吹き飛ばされ、木の幹にぶつかり、少年は地面へと落ちる。
立ち上がることができないでいる少年に、トドメの一撃を加えるために、白狼が牙をむいて飛び掛かった。
(殺される……ッ!)




