その十二 ソナー
「あ、ありがとうございます。助けてもらって……」
起き上がりながら、少年はお礼を言う。
「気にするな」
そう答えた仮面の剣士は短剣の刺さった木の幹に近寄ると、その短剣を抜き取り、太ももの鞘に納める。少年へと振り向きながら、
「それより、きみはどうしてここに?」
「あ、薬草を採りに。助けたい子がいて、早く戻らないといけないんです」
「そうか。私はギルドの依頼で発光石を採りに来たんだ。せっかくだから探すのを手伝うよ」
「あ、ありがとうございます」
「困ったときはお互いさまだからな」
「世界樹の根元に生えているみたいで、これがその薬草らしいんですけど……」
少年は手にした紙に描かれたイラストを仮面剣士に見せて、二人は世界樹の根元を探す。ほどなくして、少年が喜びの声を上げた。
「あった!」
手にしたイラストと見比べて、目当ての薬草だと確かめる。
「良かったな、見つかって」
そばに寄ってきた仮面剣士も、少年の嬉しさが伝わったのか、静かに微笑んだ。今度は少年が仮面剣士に言った。
「あの、俺も探しますよ、その発光石っていうの。いろいろと助けてもらいましたし。どういうのなんですか?」
「発光石っていうのは魔法具の発光玉や照明弾などに使われることがあってね。見た目としては普通の石だが、衝撃を与えると光を放つんだ。この近くに落ちているはずなんだが……」
少年は足元の地面を見回す。普通の石と同じ見た目らしいということで、ちょっと見渡しただけでは、どれがそうなのか、まったく分からない。
背を少しばかり屈めて、なおも地面を探そうとする少年に、仮面の剣士が心配そうに言う。
「手伝ってもらうのはありがたいんだが、いいのか? 一刻も早く助けたい人がいるのだろう」
「あ……」
「私のことなら気にするな。それより人の命の方が大切だからな」
「あ、ありがとうございます……! このお礼はいつかまた会ったときに」
「気にしなくていいって」
「そういうわけにはいきませんよ」
黒髪の少女の口調が移ったように、少年は言う。仮面剣士はため息をついた。
「やれやれ……。強情だな。それじゃあ、まあ、いつ再会できるかは分からないが、待っておくよ」
「はい! それじゃあ、俺はここで。えーっと……」
「そういえば、自己紹介がまだだったな。私は……」
そこで、仮面の剣士は少しだけ口ごもった。「?」と不思議そうな表情を浮かべる少年に、気を取り直して、言う。
「……ソナー、だ」
「俺はケイです。本当にありがとうございました。それじゃあ……」
少年は頭を下げる。仮面剣士に背中を向けて、街へと戻るために走り出そうとしたとき、森の茂みがガサゴソと音を立てた。
そこから姿を現したのは、さきほど追い払った白いオオカミと、もう一匹。その白狼よりも一回りも二回りも大きな、仲間と思しき灰白のオオカミだった。




