その十三 【第二幕 終】
呆然とした様子でその場に突っ立っていた少年に、我に返った少女が声を掛ける。
「ありがとうございます。疲れましたよね、わたしなら大丈夫ですので、降ろしてください。重かったでしょう」
「……いや、そこまで重くは……走るのに夢中だったし……」
しかし極度に疲労していることは確かなので、少年は素直に少女の身体を降ろす。
怪我した足に痛みが走ったのか、少女は一瞬眉をひそめるが、すぐに元の表情に戻って、少年に言う。
「本当にありがとうございます。すごかったです」
「いや、うん、自分でもびっくりしてるよ……」
「とはいえあの男が気が付いたら、また襲ってくるでしょう。とにかく早くここから離れましょう。そしてあなたの傷の手当てもしなければ」
「あ……そういえば、背中ナイフ刺さってたままだった……つッ!」
危機が去り安堵したからか、それまであまり気にしていなかった肩と背中の傷が、ここにきてジクジクと痛み出した。いや、痛いどころではない。視界が急にグラグラと揺れて、暗くなり、少年はその場にうつ伏せに倒れてしまった。
「! ケイさん……⁉ ケイさん‼」
ぼやける視界の中、かがみこみ、悲痛な表情で身体を揺する少女が映った。
【第二幕 終】