表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第二幕】 【異世界【ラウンド】】
13/325

その十 分析、行き止まり

 少女の瞳が駆ける少年の足元に向いた。


「あの男がわたしたちの居場所が分かったのは、おそらくあなたの肩の傷から流れ落ちた血をたどったからでしょう。……いまあなたに向かっているナイフは何本でしたか」

「え……」


 数まで数えていなかったので、少年はもう一度背後を見やった。空中を飛んでくるナイフの数は3本だ。ついでに、その後ろからは男の駆ける音も響いている。


「3本。でもそれがいったい……」

「あの男のマーキングは4か所まで可能です。……ということは、残る一本は一応念のために残しているということでしょう」


 マーキングという言葉に、少年はさっきの男が言ったことを思い出す。


「でもおかしくない? あいつはこの街の色々な場所にマーキングしてるって言ってた。チート能力ってやつがどういうものかよく分からないけど、『場所』に目印をつけてるなら、俺たちめがけて真っすぐ飛んでくるなんて、ありえるの?」

「それは……」


 さきほど倒れた少女の頭めがけて垂直落下したナイフは、地面のその場所にマーキングしてあったのだろう。しかしこのナイフ群は、明らかに少年目指して向かってきている。


 もしかしたら、あの男のチート能力にはまだ続きがあるのか。そう思った少女はもう一度少年の肩の傷口に触れる。



【・能力者:ミョウジン

 ・能力名:ターゲット

    ――    】



 しかしそこに表示されたのは、先ほどとまったく同じ文面だった。少女が持つこの力の前に、ウソや騙りは通用しない。だからこそ忌み嫌われる【呪い】なのだ。


「いま、もう一度あの男のチート能力を確かめてみましたが……やはり先ほどと同じです。あの男の能力に、現状、これ以上の力はありません」

「でも、だったらなんで……」


 走り続けて疲れ果てている少年に代わって、少女は考える。いまの自分は、文字通り、彼のお荷物になっている。ならば、せめて考えることが、自分のやるべきことだ。


 ナイフは『場所』に向かっているわけではない。しかし男は少年の肩をナイフで刺したとはいえ、直接触ったわけではない。つまり『少年』がマーキングされているわけではない……? そこまで考えて、そうか、と少女は声をこぼした。


「分かりました。あの男がマーキングしているのは、あなたの背中に刺さっている『ナイフ』そのものです」

「ええっ⁉」

「なるほど……仮に元々マーキングしていたものが攻撃によって壊れてしまったとしても、投擲したものを新たにマーキングし続けていれば、延々と追撃し続けられる。確かにやっかいな能力ですね……」

「感心してる場合じゃないよ……! それならどうするの、刺さってるこのナイフ取るしかないんじゃ……」

「それはできません。そんなことをすれば、血が噴き出して、出血多量であなたが死んでしまいます。せめてあなたが触ることができれば、チートレイザーで無効化できるのですが」

「触れないって……! ゴム人間じゃないんだから、背中まで手なんか伸びないよ……!」


 いやそもそも、少女を抱えながら駆けているいま、どちらにしろ触ることはできないだろう。触るためには少女をいったん降ろす必要があり、そのあとで背中に手を回すとなると、そうしている時間に飛んでくるナイフで刺されてしまう。


「だめだ……っ! もうどうしようもないよ……っ!」


 絶望する少年に追い打ちをかけるように、駆けていた路地の先の道が途絶えた。行き止まりだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ