第4話 ~side ヒコ~ いろいろやってみた
今回はヒコちゃん目線のお話です。
~side ヒコ~
あたしの名前は田村緋子。
ヒコ、ってちょっと変わった名前だけど気に入ってる。
今年念願の大学に入った一年生!
どこにでもいる普通の大学生。
性格は楽観的?
なんとかなる~で乗りきるタイプ。
乗りきれなくてもまぁいっかで流しちゃうテキトーさん!
そして大の犬好き!
今は3ワンのダックスと暮して幸せ。
そんなあたし。
昨日も普通の日だった。
明日は2限からだから朝ゆっくりできる~なんて思いながら、ワンコたちと眠りについた。
ほんとにいつもと同じ夜だった。
目覚めたら、知らない場所にいた。
草原、湖、森。
…どこ?
隣にはあたしにちょっと似てる男の子が寝てた。弟がいたらこんな感じかな~。
ミルクティー色の髪、170cmはなさそうな小柄な子。
…誰だろー。
起き上がろうとして違和感。
あれ?
手…肉球!?
これ、あたしの体!?
てててっと湖まで走る。
湖畔を覗き込むと、ミルクティー色の毛並みにアーモンド型の目、チョコ色のお鼻のダックスさん…きぃちゃんが映ってた。
え、あたし、きぃちゃんになってる?
ってことは、寝てた男の子は…きぃちゃん!?
パニックになるよりなんだかワクワクしてきた!
なにこの状況!面白い!
ワンコの体で走り回ってみた。
速い!楽しい!
きぃちゃんたちがするみたいに地面にゴロゴロしてみる。
あはははは!
少しだけきぃちゃんたちの気持ちがわかった気がする。
ひとしきり動き回って、ふぅ、と息をつく。
さてこの状況。
ネット小説なんかをよく読んでたあたしの答えは、異世界転移。
「勇者様~!!」的なのがないって事は、召還じゃないんだろう。
て事は、少なくともこのあたりは平和なのかな?
なんでいきなりこんな事になったのかはわからないけど、帰る方法を探しつつ、のんびり楽しんでいいんじゃね?
よし、そうしよう!
なんかあったらその時考えよう!
異世界転移といえば魔法やらが使えちゃったりするのかな?
うふふ、試してみようか。
呪文やら詠唱なんてわかんないから、とりあえずイメージでいってみよー!
まずは火かな?
短い手を前に伸ばして火をイメージ。
お!
小さい火の玉が出た!
ゆっくり力をこめていくと、火の玉は大きくなった。
どんどん大きくなる…おうふ、火事が怖いからこの辺にしとこう。
消えてと思ったら火の玉はなくなった。
よし、成功。
次は水。
火と同じ感じだった。
風はどうしよう?
湖のほとりにあった木の枝に向かって力を出してみた。
ぽとり、と実のついた枝が落ちてきた。
よしよし。
土は…あたしのイメージだと壁作ったりとかなんだよなーできるかな?
地面に手をついて壁をイメージ。
にゅうっと壁が生えた!
結構丈夫そうだ。
これも、消えてって思ったら消えた。
氷。
細かいのも大きいのも作れた。
雷。
ちょっと怖いから遠くに向かって力弱めにしてみた。
ビリビリ電流みたいなのが飛んでった。
光。
火の時みたいに光の玉ができた。
闇。
これも光とおんなじ。効果はわからないけど…
あとなにがあったっけ?
あー重力!
近くの大きな岩に軽くなるイメージをしたら宙に浮いた。
重くなるイメージをしたら地面にめり込んだ。
転移とかはどうだろ?
10mくらい移動できた。
回復…は自分にかけてみたけどよくわからなかった。
おっと、忘れちゃいけないバリア!
しっかりできた。
大きさも調節できるみたい。
これできぃちゃんの事も守れるな。
ありがたいことに魔法はかなりいろいろ使えるっぽい。
チートってやつだね!
あとはー、そうだ、鑑定とかできるかな?
さっき風魔法で切り落とした木の実を鑑定してみる事にした。
これなあに?と思いながらじっと見てみる。
小さなウィンドウが出てきた。
何やら書いてある…どれどれ。
【コモモの実】
完熟。食用可。甘くてとても美味しい。そのまま食べられる。
おー!
さっそくかじってみる。
甘ーーー!!
桃みたいな味ですごく美味しかった。
あとできぃちゃんにも食べさせてあげよう!
鑑定があれば食べ物見つけるのが楽!
うふふ、果物狩りとかできちゃいそう。
一通り試してみて満足したところで、もう一つ思い出した。
あったら超便利なアレ!
あるかなーどうかなーワクワク。
イメージしながら目の前にそっと手を伸ばす。
にゅっ。
空間に手が入った!
あった!?
これも鑑定できるかな?
【アイテムボックス】
異世界人仕様。容量無限。時間停止。
ひゃっほい!!
これで荷物もバッチリだ!!
異世界人仕様ってことは、この世界の人も使えるのかな?機能が違うとかで。
一応秘密にしておいたほうがいいのかも。
へーほーと思いながら手を引っ込めようとした時、何かが手に触れた。
ん?
まだなんにも入れてないのに中になにかある?
引っ張り出してみると、トランクみたいなケースだった。
中身はなんだろー。
開けてみると…
包丁、鍋、フライパンに木でできた食器。
調理セットだあああ!!
ステキすぎる!
そしてよくわからない四角い箱。
なんじゃこりゃ?
鑑定さん、よろしくです。
【魔法のコンロ】
赤いボタンに魔力を流すと火がつく。ツマミで火力調節可。
もう一度ひゃっほい!
焚き火使わなくても料理できちゃうじゃん!
料理はそんなに得意な方じゃないけど、とりあえずこれ使えばなんとかなるでしょ!
思わぬステキセットをゲットできてテンション上がる。
ほかにもなんか入ってないかな?なんちて。
アイテムボックスをまた探る。
あった!
今度はバスケットみたいなのが出てきた。
中身は…
瓶に壺にチューブがいろいろ?
かたっぱしから鑑定さん。
結果、調味料セットだった!!
さしすせそから胡椒になぜか麺つゆ、ケチャップにマヨネーズ!だしの素もあった。もちろん料理に欠かせない油も。その他もろもろ。
ちょ、これ至れり尽くせりじゃ…
食事に関しては心配いらないでしょ!
Oh Yeah!
そのほかアイテムボックスにはワンコ服(防具扱いだった)、せっけん、ワンコブラシ、ワンコシャンプー(うちのと同じ!)、布類が入ってた。
わーい!
いきなりの異世界転移だけど許す!
よーし、せっかくだから楽しんじゃおうっと。
とりあえず、きぃちゃんらしき子を起こそうかな。
お読み下さりありがとうございます!
読者様から初めて評価をいただきました。
本当にありがとうございます。
ヒコちゃんから謎ダンスのお礼をしたいくらい感激です。
これからもよろしくお願いします♪