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第四話 自エリアと共有エリア

 目を覚ませば遠矢は平原の真ん中で倒れていた。そして近くには異様なまでに不機嫌な小悪魔りりあの姿。

 先程までおかしな空間にいたはずなのに気づけば平原のど真ん中。突然の事態だが、さすがに二度目となるため遠矢はそれほど驚かなかった。


「りりあ、ここはどこだ?」


「はあ! 良く私に話しかけられますね!」


 勝手に腕輪を付けたことに怒っているりりあに遠矢は話しかけたが怒鳴られてしまう。

 悪いことをした、とは遠矢も思っている。しかし会社に使い捨てられた遠矢は最終的決定権を他人に渡したくなかった。


 怒っている人、いや小悪魔から情報を聞き出すことは難しいと思い、遠矢は少し周りを探るように歩く。

 どこまでも続くかのような平坦な平原。人工物はなく、ゆったりとした風が吹く何もおかしくない平原なのに遠矢は違和感を抱き、すぐに気付いた。

 遠矢とりりあ以外に生き物がいない。


 こんなだだっ広く何の障害物もない平原。なのに視界に鳥どころか虫の姿もない。


「変な所だな。それとこの腕輪。意外に邪魔だな」


 重くはないが存在感がないわけではない。腕を動かす際にどうしても気になってしまう。

 どうにかして必要な時以外は外せないかと遠矢は腕輪を触っていると。


「おおっ」


「うわっ!」


 腕輪から窓状のメニュー画面が映像で現れた。

 試しに指で触ろうとしてみれば、反応してメニュー画面が切り替わった。

 中々に先進的、と遠矢は感心しつつ一緒に声を上げていたりりあの方を向く。

 するとりりあの方にもメニュー画面が表示されており、そしてりりあの中指には先程までなかった指輪があった。


「え、え! 何これ、すごーい!」


 りりあは目の前の事態に楽しそうに反応し、躊躇なくメニュー画面を全力で弄っている。

 その様子を見てから遠矢は慎重に画面を見る。

 画面の右上には謎の十万ポイント。項目ごとに付箋のようなタブがあり、そのタブに触れば切り替わる。

 そして今はヘルプの項目。この腕輪の使い方について。


 慎重に読み進めていると、突然画面の上からメッセージが連続で現れる。

 内容はお菓子や玩具の絵があり、そして隣にはポイントが提示されている。


 見るからに購入を示唆する内容。しかし右上のポイントは減っていない。

 ポイントは個別に所持しているのかと遠矢は考えるもすぐに共有の扱いだと察した。最後に送られてきたメッセージのおかげで。


『りりあさんが以上の物品も購入しようとしています。同意しますか?』


 ちらりと遠矢がりりあの方を向くも、りりあは楽し気に画面を見ているだけ。自分が何をしているのか遠矢に伝わっていることを把握していない様子。

 ポイントの消費にはこの主の腕輪を所持者の同意が必要。それを理解して遠矢は遠慮なく同意せず、のボタンを押してりりあが買おうとしていた物を全て却下する。


「……え! 何で!? ハッ!」


 りりあは購入を全て却下されたことに驚き、その犯人が遠矢だと気付くと背中の翼を羽ばたかせ文字通り飛んできた。


「何で駄目なのよ! 良いじゃん! 十万ポイントもあるんだし!」


「馬鹿か。ポイントの獲得方法も分からないのに消費できるか。もしもこのポイントで輝天祭の間を生き延びろと言われたらどうするつもりだ」


 飛び掛かるもあっさりと反論され、言い返すことも出来ずりりあは唸ってその場から離れようとしたが。


「待て。表示される情報に違いがないか調べる。まずはヘルプからだ」


 遠矢が呼び止め、その場に座らせる。りりあは非常につまらなそうにするも、必要なことと割り切り遠矢と同じ画面にする。

 そうして調べていた結果、ヘルプの内容は同じであり、物を買うことが出来る物品の一覧では。


「大きく違うな」


「ほんとだ。え? トーヤ、そっちの画面のそれ何? 美味しそう。頂戴」


 遠矢の食品が並ぶ画面ではサンドイッチやおにぎりが並ぶのに対し、りりあの画面では赤と黒のグミのや縦縞模様の飲み物が並んでいる。


「これは自分の世界にあるもの、か。りりあ、その気味の悪い食品はお前の世界にあるものだな?」


「気味が悪いってのは心外だけど、そうだよ。後で食べ物を交換しよう? 異種族の食べ物って興味がある」


「俺はない」


 それからも両者の間に表示される情報に違いがないか確認していき、物品以上に差がないことを確認し終える。

 これで確認すべきことの一つは終わった。


「次は外に行ってみよう」


「ええ、大丈夫。りりあは怖いんだけど」


「大丈夫だろう。ヘルプには原則対戦以外で危害を加えることは出来ないと書かれていた。それに参加者は英雄なのだろう? 参加者の中で最も弱い俺たちに因縁を付けてくることはないだろう」


「どうだろう? 英雄って言っても品行方正とは限らないし」


 りりあの言葉に遠矢も確かに、と納得して相槌を打つ。

 偉業を成し遂げた英雄だからと隠れてしまいやすいが、正確に難があるなど良くあること。むしろ品行方正の方が珍しい。

 とはいえ、ここに引き籠ってもいられないと遠矢は腕輪を使い共有エリアに飛ぶ。




 輝天祭で主に使われるエリアは二つ。

 一つは今まで遠矢たちがいた自エリア。役割としては家に近く、誰かを招かない限り誰も来れない遠矢とりりあだけの空間。家を建てたりと湖を作ったりなど自由に改造して居心地の良い空間が作れる。ただし改造にはポイントが必要となり、今の遠矢たちの所有ポイントでは豪邸を建てるなど夢のまた夢。


 もう一つは今遠矢たちが向かった外。共有エリアと呼ばれる。東にはポイントを貨幣とした店が並ぶ商業エリア。ポイントを支払うことで自分の店を持つことが出来る。南にはポイントを獲得する手段であるダンジョンがあり、ダンジョン内の魔物を倒すことでポイントを貰え、下層の魔物程強く、貰えるポイントも多い。西は広い空間が広がっており、そこでは両者合意の下で行える野良試合が出来る。腕試しや賭博が行われると思われる。北には運営の事務所があり、多くの運営がそこにいる。輝天祭のついての質問、野良試合の見届けなど様々な利用方法がある。

 そして中央には輝天祭公式戦が観戦できるコロシアムがある。コロシアム内は共有エリア内で唯一、腕輪の力で物品を買うことが出来る。通常は自エリア内でなければ出来ない。


 ただそんなことは遠矢やりりあには些細なことで、共有エリアは名前の通り輝天祭参加者全員が使えるエリア。それはつまり。


 巨人に天使、獣人やエルフ。他にもりりあですら知らない様々な異種族がそこにいた。

 他の参加者もいるだろうと軽い気持ちでやってきた遠矢とりりあにはあまりにも衝撃的な光景にしばらく二人は呆然としていた。


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