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ⅷ 息を切らして tea time



ーーーコーカスレースってのはね。



ルール



・決められた輪の中を走る

・スタート地点は各々輪の中なら何処でもいい

・スタート時間もいつでもいい




ってことなんだ。と、簡単なルールを得意げにドブネズミが説明した。




白うさぎはこの自由すぎるルールに少々困惑したがびしょ濡れすぎる服をどうしても乾かしたかったので




このレースに参加することにした。




ドードー「さあ!レースが始まったわ!みなさんスタートはご自由に!」




という言葉と同時にドブネズミはいびきをかいて寝てしまった。




グリフィンはおっとそうだ、読みかけのものがあったのだと古書を取り出しそのまま読書に入ってしまった。




アヒル達は池で遊んでいる。




ドードー「どう?うさぎさん、レースは順調かしら。服が乾いてきたでしょう?」




そう尋ねると、「まあまあそうだね…さっきよりはいいみたいだよ」走り始めて息が切れてきた白うさぎは返した。




しかし、ドードーが余りにも本気に競り寄ってくるのだからいつの間にか白うさぎも少しばかり本気になってしまっていた。




服を乾かすのも忘れて。




今何周走り終わったのだろう?さっきからずっとドードーのご婦人が私の後を付かず離れずに攻め追ってきてもう周回なんて覚えてないや。




そう思うが早いか、逃げるのに夢中になりすぎた白うさぎは道を外れてしまった。




その事実に気づくのには何かおかしな大きな出来事がないと無理だ。




誰かが白うさぎの前にいってパチンと手でも叩いてやれば目が醒めるのに。




でもネズミは寝てるしグリフィンはレースに興味がないしアヒル達に至ってはきっとレースのことなんてもう忘れてしまってるだろう。



そしてドードーはルールに則って輪の中をきちんと走り、周っている。





しかし、そんな白うさぎがギョッと目を醒ますような出来事が嬉しいことに、待っているのである。




「おい、誰がケーキを用意しろといった?僕は食べかけのケーキを用意しろといったんだぞ?昨日食べてたやつだよ、あれのことだ!」




なんともおかしな会話が聞こえてきましたよ。





声の主は上に長〜く伸びた帽子をかぶっていた。




そう。それは帽子屋だった。あのイカレ帽子屋である。





「お!おい、丁度いい、そこのキミ、おいそこにいるあんただ!誰だかわからないけどこっちへきてこのケーキを一口食べてくれ!」と、帽子屋は白うさぎを誘った。



白うさぎはこんなところに帽子屋がいることにギョッとした。

私の毛がまだ濡れててクタッとなってるから私だって気付かないのかな。と、疑問に思ったが




すぐに、まあいつものことさ。帽子屋だから。と気がかりを直してその誘いの方へ、少し小高い花畑の中にセッティングされたテーブルへと向かった。




帽子屋はご機嫌だった。




帽子屋「やあやあ。どうしたんだ?そんなにクタッとして。シャキッとしたくないならずっとクタッとくたびれるのもいいけどな。まあそこにお座りよ。」




今日はティーパーティなんだから、と白うさぎを席に座らせた。




白うさぎ「どうせ昨日もその前もティーパーティなんだろ。」



帽子屋「アッハハ!おかしなこと言うなあ。昨日のティーパーティは昨日のティーパーティ。その前はその前のティーパーティ。当たり前のことさ。いつもおんなじじゃない。だけど今日だってティーパーティをするに決まってるじゃないか?それが楽しいんだよ?」



白うさぎ「じゃあ明日も楽しいティーパーティだな。」



静かに紅茶をすする白うさぎに帽子屋は




「明日はするかわからないさ。明日はもしかして今日かもしれないし昨日になってるかもしれない。明日のことは明日にしかわからないのさ。」




と、白うさぎの言葉をわざと遮ってまるで哲学でも語っているかのように流暢(りゅうちょう)にふざけた。



そんな会話の中、白うさぎは本題を思い出し大方話にならないであろうがダメ元で帽子屋にアリスのことを聞いてみた。



「あ、そうだ、ねえねえ、君ならわかるだろう?アリスを見なかったかい、すっかり頭になかったよ、何しろ自分の池で溺れてグリフィンにつままれてさっきまでレースをしていたんだ。」



帽子屋「なんだそのわかりやすい話は。全然面白くないぞ。わかって欲しかったらもっとわかりにくく話せよ。終わりから最初まで逆さまに話すみたいに。」




予想通り帽子屋はまた訳のわからないことを言って白うさぎを呆れさせた。




そして「アリスならあっちへ行ったよ。」と、同席していた三日月うさぎがその隣で寝ぼけている眠り鼠を叩き起こしながらそう言った。



白うさぎ「ありがとう!長居はごめんだ、私はそろそろ失礼するよ。あそうだ、ケーキはもういいのかい?」



と、尋ねられると帽子屋は「ケーキ?何のことだ?」と、食べかけではなかった新しいケーキを自らの口でもぐもぐ、と食べかけにしていた。





そしてやっぱり紅茶は冷たかった。











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