ⅵ スススススーーーッと
ーーーなんだ。有り難い。
感謝の念のその目の先には小さい丸いテーブルがあった。木製で出来ている様だ。上品な木目が美しい。
おそらく何十分もアリスを追ったであろうその身体はあちこち痛かった。
なのでアリスを追いかける中、少しはひと休みできる場所がほしいな、と感じていた白うさぎはちょっと落ち着けるぞと、呼吸を切り替えひと休みしようと思っていた。
理想の休憩所が目の前にある。
テーブルをひとつだけ置いて。
そしてその木でできた割といいテーブルの上にこんな物がちょこんと置いてある。
“私をお飲み”
そんな高飛車に書かれたメッセージが添付された手のひらに乗る程の瓶だ。
「うん?この変な紫色した液体を飲めと?
これは飲み物か?いやどうかしてるこんなもの飲むもんか。」
白うさぎはアリスの影を追いかけてここまで来たがここは行き止まりかと諦めなければいけないほど周りに道がないのだ。
後ろの道は真っ暗で光もない。戻るのには躊躇する。
他にどこか道はないかと探すとうさぎのこぶしひとつ分しかない穴があるだけだ。
その穴からは向こう側に繋がる光が漏れていた。
白うさぎは考えた。どうすればその穴を通り抜けられるかと。探したけれどどうにも見つからなかった。アリスを追いかけなければという焦りと行き止まりに達した諦めとで頭もうまく回らなかった。
少し動転していたのかもしれない。
その目の前に置かれた紫色の何かが入った不気味に輝く瓶に白い小さい手が伸びてしまった。
そして次の瞬間には
ゴクゴク、ゴクッ
「の、の、のの飲んじゃった!」
そうだ。私は気が動転している、絶対にそうだ。きっと冷静にしている普段通りの私ならこんな物には手を触れないはずだ!ああ、なんで飲んでしまったんだろう!後悔だ!後悔だ!なんて後悔だ!
しかし時というものはそんな後悔など気にも留めずに過ぎていく。
そして、白うさぎの身体も見る見るうちにスススススーーーッとどこかに消えてしまうではないですか。
消えるといっても。
その空間の一部から消えただけで
そこからすぐ下の方に目をやればそこには変わり果てた姿の白うさぎが目に留まるのだが。
けれど、ショックで気がおかしくなりそうなのかという心配をよそに歓喜するうさぎの姿がそこにはあった。
「やった…、やったぞ。穴が大きくなった!
あの紫色の液体はこの穴を大きくする魔法の飲み物だったんだ!やった。これでこの小さな穴を抜けてアリスに追いつけるぞ。」
白うさぎは気付いていなかった。大きくなったのは周りの風景ではなく、小さくなった自分の勘違いだと。




