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ⅰ カフェ・プランドル でのお喋り







「アリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリス〜〜!!」



一度に何度も自分の名前を呼ばれたそのブロンド髪の女の子は。



飲んだ紅茶をむせそうになりながら。



「あらぁ。またすごく、慌てたお客さんね」



お客さん、と言ったけれどアリスはもうこの慌てん坊の声の主が


誰だかわかっていたので



「真っ白うさぎの白うさぎさん。」と付け加えた。



その真っ白うさぎの白うさぎはピョンピョン忙しく動かしていた足を止めて切れた息を整えた。



「アリスぅぅ〜。大変なんだ、大変大変こりゃ大変なので…」

と白うさぎが言い終わるが早いか




「ちょうど今三時だ、午後のtea timeといこうじゃないか。どうかねうさぎくん?」

そういってお茶会に誘ったのは帽子屋だ。



むろんただの帽子屋ではない。今、午前十時を午後の三時と本気で間違えている、と思わせるくらいなのだから。


彼はみんなにイカレ帽子屋と呼ばれている。



「あぁ…そうだねそうだ。時間がない…かもしれない…でも…でも、できればそうだ、うん、ひと口紅茶をもらおうかそうしよう。」

いつもは帽子屋のおかしな誘いには呆れてのらない白うさぎが今日はのってきたので、



帽子屋は可笑しくてたまらなかった。


「キャハハッ!ハハハハッ!うさぎくん!これはまた!悪い冗談だ!今は零時だよ!それも午前のね?午後のじゃないよ、アッハハ!」

と、またおどけてみせた。


しかしそんな帽子屋のからかう言葉にも今日の白うさぎには馬耳東風なのである。



白うさぎはゴクゴクゴクッと小さいティーカップに注がれた-冷めた-紅茶を一気に飲み干した。



「なんだ?この紅茶はてんで冷たいじゃないか。」



紅茶というものが普通は熱いことなど忘れてカップに口を付けた白うさぎは内心ホッとした。


そして ふぅ。と小さくため息をつくと、あっ、と思い出したように慌て話し始めた。


「アリス、大変だよ。大変なんだ。」



アリスは少し心配そうに「どうしたっていうの?いつも慌てているけれど今日の貴方の慌て方はいつもとは違うわ?訳を話して。」



「実は…アリス…私…とんでもない物をひ、ひ、拾ってしまったんだ!」




午前中のティーパーティに一瞬興味という名の静けさが しん、と響いた。



皆んなが白うさぎに注目する中誰かが先に気づいた。



「おやおや?その懐に隠し持っているのは…うん…その形は…もしかしたらあれかも…うん…あれだな…うん。あれだ…間違いない」


というとなんでも知ってる芋虫おじさんはゆっくりと近づいてきて


パイプの煙をふーっと窓の外にやった。



「間違いないもの?ハハッじゃ間違いじゃないんだな!答えはひとつじゃなかったらでもそれは間違いかもな!キャハハッ」



そう言って帽子屋は茶化した。



「まあまあ、そんなこと言わずに話を聞きましょうよ。それで?うさぎさん、その拾った物は何だというの?良かったら見せて欲しいわ。」


アリスは優しく諭した。




ごそごそと、例の懐からその拾った大変な物を出すと、


「こ、これなんだ…アリス」



どう扱っていいのかわからず弱気になっている白うさぎだった。



帽子屋「おお、これは。」

アリス「あらまあ。素敵。」


「ふむ…やっぱりそうだったかね。」納得すると興味がなくなった様子の芋虫おじさんはもうつまらない、というようにどこかに姿を消してしまった。



帽子屋「これはだな、アリス凄い物だ、たいへん迷惑な物だよ!いやぁ驚いた」



アリス「迷惑?ふふふ。そうね貴方にとっては大迷惑ね。だってこの落とし物は…ふふっ 貴方をも困らせる物だもの」と言って笑った。



「笑い事じゃないんだ!これを拾ってしまったってことは私が、この、靴を、このガ、ガ、ガラスの靴を…届けなきゃいけないんだ。あの方に…はぁぁ。どうすればいい!こんな私が、はぁっ!あの方に!お、お会い…できる?…なんて…!!!!」



と言って白うさぎは真っ白な顔を真っ赤に赤らめた。




「ど、どうしよう…アリス。君が届けてくれないか…?もしよかったら、よかったらでいいんだ!」



動揺うさぎの…おっと失礼、白うさぎのそんな言葉にアリスは無情にもこう言った。



「いいえ。あの方にその落とし物をお返しするのは私ではないわ。だって私が、拾ってないもの。ふふっ。拾ったのは…貴方よ。うさぎさん。」




帽子屋「いいや!困った、困ったぞ?ダメだ!アリス?これは大事件だ。うさぎじゃダメだ!これはもっと賢い、運のいい!プライドのあるものでなければダメダメ。」



アリス「もう。貴方が最後に言いたいこともうわかってしまったわ。」



帽子屋「そう!それだよ、それが正解さ。君がわかったということは僕が知ったということ。僕も今わかったのさ!」



アリス「それで?ふふっ。どんな言葉を付け加える予定なの?聞かせて、帽子屋さん。」



帽子屋「勿論、勿論の事。僕がお届けに…」




その時。トトトトトーンと強い音が弾けたと思ったら。



白うさぎの精一杯の抵抗という名の足踏みだった。



「ちょーーーっと!!待ってくれ、私はこの落とし物を拾ったんだ?なぜ君が届けようというんだ。おかしな話だよ。でも君はおかしなことを言う天才だから正しいのか…それがまともならそっちが正しいのか…。… … …いやっ!違う!いや?でも私はアリスに代わりに行ってくれと頼んだから…。帽子屋が行くのに何か問題でも…あ、ある!あるある!問題ありだ、君じゃ駄目だよ。

だってだって賢い、運のいいプライドのある者で君は間違ったことばっかり言ってる賢くないじゃないか!行くのは君じゃない、わ、…」




アリス「私?」



と言うと息継ぎも忘れて話立てるうさぎさんに対してアリスはまた小さく笑った。



「わ…私と一緒にアリスも行ってくれないか?私一人じゃどうも…頼りないと言うか、、、途中でうさぎ穴があったらもし衝動を抑えられなくてのぞいたりしちゃったら…大変だから…。」




いいわよ、とアリスは言うと席を立った。





そして、帽子屋はというと。




帽子屋「なんだい、アリスも白うさぎのやつも。全く。なんで僕が留守番なんだ!芋虫のおっさんのせいだ!戻ってきた時誰もいないと困るからって…ひどいや。あの方を一目見たかったのに。」



そう言って芋虫おじさんの食べかけのクッキーを屑かごに捨てた。










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