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精霊剣士の物語〜Sauvenile〜  作者: 伊藤睡蓮
精霊剣士の物語〜Sauvenile〜
19/23

精霊使いの物語〜sauvenile〜其の拾玖

お待たせしました。作者の伊藤睡蓮です。

頭では色々と構成しているのですが、文字に起こす時間がない。てか考える時間すらない。って感じになってきているので今後もしかしたら投稿ペースが極端に長くなったりするかもです。できる限り頑張りますが………。まぁ、頑張りますってことです。


それではどうぞ!

34,〜ミズハノメ〜

「ミズハノメ、私に力を貸して。」

その声に応えるように手に持っていた魔導書が光り輝く。


「随分と懐かしい感じ。久しぶりに呼ばれたと思ったけど、まさか夏音ちゃんだなんて。大きくなったわね。それに………大分変わったみたいね。いい意味でも悪い意味でも。」

私の魔力を感じ取ったみたいね。そりゃ、無尽蔵の魔力入れてたんだから誰でも違いには気づくわよね。


「うん、そうかもしれないね。」


「優姫が今どこにいるか分かる?夏音ちゃん。」

優姫さん、しゅうのお母さんの名前。やっぱり気になるよね。


「この近くにはいないよ。まだ眠ったまま。でも、まだ生きてる。まだ助けられる。ミズハノメさんは契約主である優姫さんとの契約が突然切れて、特務部隊の人たちに持っていかれた。ここからは私の推測だけど、優姫さんの出身は磨精都市。だから磨精学園に保管されていた。私も直接見るまで半信半疑だっけど、やっぱりあなただった。」

ミズハノメは優姫さんが無事だと聞いて安心したのか「そう。」と小声で呟いた。秋玄さんのことは何も聞いてこない。恐らく契約が切れる前に感じ取ったのだと思う。


「お願い、ミズハノメさん。少しの間力を貸して。"私が精霊使いとして戦える最後"のお願い。」


ーーー気がついたのは1年ほど前

私の体は完全に壊れていた。誰にも伝えていないけど、レイクなら知ってるかも。今の私の身体を巡る魔力の中に、本来ある私の魔力はもう無くなっていた。今ある魔力は全てレイクが供給してくれている魔力。失った魔力は二度と戻ることは無い。だから、仮に精霊と、アクアと再び契約したところで、私は戦うことができない。二度と、しゅうの隣に立って戦うことができない。だからこそ、ここで悪魔の力を知り、倒す。それが私に出来る唯一の償い。もちろん、こんな事で全て無かったことになんてできるわけがない。私がやってきたことは、決して許されるものなんかじゃない。悪役は私一人でいい。しゅうや、春ちゃんや真冬さんを巻き込みたくない。しゅうのお父さん、秋玄さんを助けたい、あの頃の楽しさを取り戻したい。それだけは本当の気持ち。


春ちゃんを裏切り、真冬さんを裏切り、みんなを裏切り、しゅうを裏切った。

私の居場所なんて、もうとっくになくなっている。せめて、特務部隊の本部に向かう前に、今の私に出来ることをする。せめてもの償いを、今。


ーーー「お願い、ミズハノメ。」


「優姫を守れなかったのは私の責任でもあるし、優姫を襲った奴と似たような魔力を感じる彼らを逃がすわけには行かない。今のあなたがどうであれ、やることの利害だけは一致している。夏音ちゃん、この戦いが終わったら………。」

最後まで聞かなくても大丈夫。無言で頷いた。これまで私が行ってきた報いを受ける。


私の近くの地面に何かがぶつかり、大きな音が鳴り響く。ジェミニが私の足元に吹き飛ばされてきた。


「いったー。もう、最悪!絶対に許さないからね。………とは言ったものの、連戦続きでそろそろ限界だから後はあなたに任せる。」

ジェミニは腰に手を当てながら苦痛の表情を浮かべながら私を見てた。私は黙って頷いた。

ヴィルゴがすたすたとこちらに歩いてくる。私とミズハノメの、最初で最後の戦い。ごめんね、アクア。出来れば、最後はアクアと………。」


「精霊の加護・水天(ヴェラーダ・すいてん)。」全身が透き通るようや水が包み込む。

周りには水で造られた槍、剣、斧、刀、大きさ、形が様々な武器が空中に浮いている。


水造武連戰(オーランダム)。」

左右の手、指を使って空中に浮く全ての武器を操る。


「全部切り裂く。旋風鎌鼬(ヴィルビカット)。」無数の鎌鼬が私の造った武器を粉々に切り裂いた。そのまま真っ直ぐこちらに向かってくる。


「私に切れないものなんてないから。次はあんたを……」ヴィルゴは咄嗟に後ろへ下がった。中々いい動きだと思う。粉々に切られたはずの水の武器は、一瞬にして元通りに戻っている。水は水。どんなに切っても消すことなんてできない。


「あなた、全力出さないと本当に死ぬよ?」

ヴィルゴがその言葉を聞き、舌打ちをした。

その瞬間、ヴィルゴから感じられる魔力がどんどん大きくなっていくのを感じた。

これがヴィルゴの本気。

ヴィルゴは軽く手を上げた。同時に辺りを強風が襲う。これだけの力を温存してたなんて。私の最後の敵にはもってこいね。


水剣乱舞(オーランラッシュ)。」全ての武器をヴィルゴに向かって放つ、上下、前後、左右、全ての方向からの攻撃。1度躱しても追尾するように襲いかかる。

ヴィルゴの頬を剣が横切る。額から血が滲んでいる。

「あ、ようやく当たった。やっぱりコントロールするの難しいな。それに、そんな顔してくれるようになったし。」

ヴィルゴは私を睨みつけていた。両手からは常に風が舞っている。あれに触れたら流石に死ぬよ、私。怒らせすぎたかな?


旋空烈覇鎌鼬(スカルクロスカット)。」

あの魔力、多分あれがヴィルゴの打てる最上級魔法。私とヴィルゴの周りが風に包まれる。

(夏音ちゃん、出し惜しみしないで。)

ミズハノメが私の心に語りかけてきた。


「最初からそのつもり!水造武連戰・(オーランダム・ショット)。」水で造られた無数の武器をヴィルゴに向かって放つ。私の全魔力使い果たしてでも倒してみせる。逃げる隙すら与えずに止めどなく発射する。


「あまいな、精霊使い!」

ヴィルゴの声が聞こえたかと思うと、周りを囲む風から、風の刃が放たれた。咄嗟に水の刃で防ぐ。防ぐと同時に別方向からまた刃が襲いかかる。


「しつこい!ミズハノメ、防御は任せる。多少のダメージは覚悟するから。」

(分かりました。)

ヴィルゴに放つ魔力を防御に回すしかない。このままだと私が先にやられる。


「勝つのは、私だー。」

ヴィルゴが水の刃を身体で受けながら槍を構えて走ってくる。

「うそでしょ?!ありえない……」

浮かんでいる水の剣を手に取り、槍を防ぐ。


「どんな身体してんのよ………あんた。」


「我々を非力な人間どもと一緒にするな。このぐらいなら耐えられる。」

はいはいそうですか。てか、剣とか握ったことないわ。普通に押し負けちゃう。投げるぐらいしかした事ないし。


思った通り、後ろへ弾き飛ばされた。ヴィルゴは体勢を崩した私に容赦なく槍を構えていた。周りの水の武器をヴィルゴに放つ。当たってる。間違いなく当たってるし、相当ダメージも受けてるはずなのに、全く勢いが止まらない。


「終わりだ、葉月夏音!烈風鎌鼬(スタムカット)。」全方向から鎌鼬が襲う。やばい、このままじゃ………。ヴィルゴが鎌鼬によって視界から消える。


「そのまま、まっすぐヴィルゴのいる方向だけ見てなさい!チャンスは1度きりよ!」

ジェミニの声がする。その瞬間、周りにあった鎌鼬が一瞬にして消え去った。目の前には驚いた表情のヴィルゴがいる。その横には右手をまっすぐ前に伸ばしたジェミニがいた。


「まさか、ジェミニ!」

ヴィルゴはジェミニを睨みつけ、ジェミニを蹴り飛ばした。ジェミニはごろごろと地面を転がる。身体全身がボロボロだ。いくら魔法を奪えるからといっても、触れるその瞬間のダメージはあるってこと。今までもそうだったの?


それを知っていて能力を使った。私のために?

(夏音ちゃん、今よ!)ミズハノメの声がする。そう、このチャンスは逃せない。


周りに浮かぶ武器を1つにまとめる。大きな剣を造りあげた。しゅう、ちょっとだけ真似させてもらうね。

「蒼水龍の尻尾・水天(カールドテイル・すいてん)。」

巨大な剣がヴィルゴに向かって振り下ろされる。水しぶきが起こり、辺りを蒼い水で埋め尽くす。

ふと、自分の右手を見る。魔力が、感じられなかった。


「夏音、助かったわ。あんたのおかげでヴィルゴを倒せた。私一人じゃほんとにキツかったわ。」

「別に、私はあんたを利用しただけだから。お礼なんて言わないし。」

ジェミニはクスッと笑った。


「まだ………終わってないっての。」

ヴィルゴの声。まさか、あの攻撃を受けて立っているの?


私とジェミニの前に仁王立ちで立つヴィルゴがいた。全身傷だらけで、今にも倒れてしまいそうな身体。それでも、目はしっかりと開いていて、こちらを見ていた。ジェミニももう戦えない。私にも魔力は残ってない。


ヴィルゴの真上に黒い塊のようなものが降ってくる。そのままヴィルゴを包むように小さくなる。

「待て、まだ決着がついていない!ジェミニを、葉月夏音を殺すまでは帰れない!」

黒い塊から逃れるように必死に暴れるヴィルゴ。その抵抗もむなしく、どんどんと飲み込まれて、消えた。


「そっか、時間ね。よかったー。」私は膝から崩れ落ちて地面に突っ伏した。

ジェミニは私の近くにそっと歩み寄ってきてそのまま座り込んだ。

「ジェミニ、そういえばあなたも悪魔よね。あいつら、時間制限みたいなのがあるっぽいけど。どうしてあなたは平気なの?」

ジェミニは「あ。」と何かを思い出したかのように声を発した。


「私は秋翔くんと契約したからいつでもこの世界に留まれるのよ。他の悪魔と違って。」


契約?しゅうと?どういうこと、全く訳が分からない。


「私たち悪魔には宿主、つまり精霊で言えば契約者がいないとこの世界にいるには20分くらいが限界なのよ。元々悪魔ってわるーい精霊の成れの果てだから。契約者がいないと、まともにこの世界にいることが出来ないの。」


「それなら、別に人間と契約すれば悪魔は暴れ放題。それだったら、今頃世界は悪魔に乗っ取られてると思うけど。」


「それは、契約者との相性も関係するから。ただ人間に取り憑くだけなら簡単だけど、悪魔の持つ魔力と、人間の魔力には差がありすぎて大体は人間が悪魔の魔力に耐えられなくて成立しないのよ。私としゅうとくんは相性が良かったってわけ。だから彼を選んだ。他にも理由はあるけどね。」

それなら今までの悪魔の行動にも納得がいく。発見報告が少なかったのも、なぜ時間制限があるのかも。もちろん、全てが分かったわけじゃないけど。

それからもう一つ大事なこと、

「しゅうに手を出したら私、あなたのこと一生恨むわよ。」ジェミニを睨みつけた。


「あら恐い。肝に銘じておくわね。」

薄笑いを浮かべてこちらを見ている。

(あら、夏音ちゃんのライバル登場かしら?)

ミズハノメはクスクスと笑っていた。


「あ、それからもう1つ、最後の魔力とか言ってた?あれってなんなの?」

ジェミニが不思議そうに聞いてきた。


「私の魔力、感じられないでしょ?私の魔力は長い間体外から供給されている魔力で戦っていたから、私の身体にあった元々の魔力はなくなったの。体外の偽物魔力に馴染んでなくなったって感じ。」

これは初めから薄々分かっていたことだけど、私の目的に合った代償。だから、魔力がなくなったことに関してはレイクを責めたりなんてしていない。


「なるほどね。それじゃああなたに"これ"、返しとくわ。」

そう言って私の胸にいきなり手を当ててきた。


「ちょっ!な、なにすんのよ!」

顔を赤くしてジェミニを見た。その次の瞬間に、私の中に小さな魔力が感じられた。間違いない、これは私の魔力。


「どうして?私の魔力は………。一体何をしたの?」

ジェミニはニコニコと笑っている。


「あなたと初めて会って戦った時、私はあなたの魔法を奪った。その時の魔力を再現して私があなたに魔力を植え付けてみました。はい、おしまい。」

得意げに胸を張ってジェミニが答えた。

「なにそれ?」


「私の能力の1つ。私は相手の魔法を奪った時に魔力を知ることが出来る。さーらーに、相手の魔力を真似ることも出来る。これが私の本来の能力、魔法模倣(ジックファルセル)。しゅうとくんにもこれを使って魔力を渡したことあるのよ。本人気づいてないけど。」

そんなことも出来る能力って、馬鹿馬鹿しくて思わず笑ってしまった。

「チートじゃないの、それ?」


「なんてったって悪魔ですから。」

ただそれだけ言ってまた笑った。

大事なことを言わないのは、誰でも同じか。本当に、嫌な奴だね。お互いに。


35,〜5番目と5番目〜

サギット、俺と雲雀学園長でなんとか凌ぐしかないか。出来るなら倒してやりたいが、まだ俺もレオとの戦闘で魔力的にも万全とは言えないし、実力見せてもらうとか大きく出たものの………大丈夫なのか?


「しゅうとくん。色々考えてるみたいだけど、あなたはサギットに一撃与えることだけを考えなさい。それだけでいいわ。」


「一撃って、その間は雲雀学園長は1人であいつと戦うってことですか?」

雲雀学園長は頷いた。吹雪先生でも勝てなかった相手に1人でなんて無茶だ。


「無茶でもなんでも、あいつの隙を作る機会ならいくらでもあるのよ。しっかりと見てなさい、一瞬でも目を逸らしてはだめよ。真刀・宝勾斬 壱式(しんとう・ほうごくざん あかのたち)。」雲雀学園長の持っている長刀が赤く輝き始めた。


やっぱり俺も。

(シュウ、待て。ここはあの学園長の言う通りにした方がいいと思うぜ。)

「イグニ?けど、このままじゃ雲雀学園長が。」

(あの人の強さは俺達も目の前で見てる。それに、俺たちが並んで戦ったところで、精霊の加護を使ってないと足でまといになるだけだし、今の魔力だとそんなに長くはもたない。だからここはチャンスを待つべきだ。)イグニまでそう言うのか。


「2人がそう言うならそういうことなんだろうな。分かった、待つ。待つけど、雲雀学園長がやばそうになったら迷わず使うからな。」

(あぁ。それでいい。)


ーーー

赤く輝く刀を握ってサギットへと向かう。吹雪を倒したのは事実だけど、あの時、吹雪なら防ぐことも出来たはず。


刀を振ると高密度の赤色の斬撃が放たれる。そのままサギットの元へと向かっていく。


無限獄炎(インフェルナイト)。」

無数の炎の光線がサギットの手から放たれる。炎は斬撃を貫いた。やっぱり、威力は相当あるみたいね。それよりも、壱式とぶつかった時よりも威力が増してる。相手の魔力を魔法が吸収したとでも言うの?もしそうだとしたら、あの攻撃に触れなければいい。


「真刀・宝勾斬 弐式(しんとう・ほうごくざん あおのたち)。」刀を鞘にしまって後方へ回避して、もう一度刀を抜いた。青い光を帯びている。


「烈風斬・連牙(れっぷうざん・れんが)。」

サギットに走り寄って刀を振り下ろす。サギットは両手を体の前でクロスして防ぐ。サギットの体は後方へと飛んでいく。追いかけるように走り、もう一度畳み掛けるように刀を振るった。一撃目よりも威力が増して、サギットは地面へと叩きつけられる。


「1回よりも2回、2回よりも3回。烈風斬・連牙は、斬った相手に斬った数だけ威力を増していく。簡単に防げるとは思わないことね。」

続いて3撃目。サギットのいたであろう地面は抉れ、土煙が辺りを包む。


「なるほど、これがあなたの力ですか。確かに晴明様に傷を負わせただけはありますね。」ゆっくりとサギットが立ち上がった。服に多少の汚れが見れただけで、身体へのダメージはほとんどなかった。


「まじかよ、雲雀学園長の攻撃が効いてないのか?!」

サギットは驚く秋翔くんに見向きもせず、私だけを見ていた。


「効いてなくても、はっきりと分かった事もあるわよ。やっぱりあなたに吹雪は倒せなかったってこと。能力は使ってないのなら尚更。あの攻撃は吹雪の刀なら確実に防げた。それが出来なかったのはもっと別の理由ね。」


「だからなんだと言うのです?時雨吹雪が負けたのは事実です。」

サギットは顔色一つ変えずに答える。

刀を再び鞘に収め、再び刀を抜く。


「真刀・宝勾斬終型(しんとう・ほうごくざんしまいのたち)。さっきと同じと思わないことね。あなたぐらい、倒せなくて悪魔を倒すなんて出来ないでしょうから。」抜かれた刀の色は黄色に輝く。


「えぇ、その通りですよ。獄炎乱舞(フェルナラッシュ)。それではフィナーレです。すぐに楽にしてあげましょう。」サギットから放たれた炎は網のように細く広がり、私を炎の檻へと閉じ込めた。


目をゆっくりと閉じる。全感覚、全神経をサギットだけに向ける。秋翔くんならこのチャンスを逃すはずがない。後は任せたわよ。

「神威・零式(かむい・ぜろしき)。」


周りに張り巡らされた炎の網は、一瞬にして消え去った。全力を出すと言ったとはいえ、相手が能力を使わず、こちらが手の内を全て見せてしまっては今後の戦い的にも不利になる。ここは、まだ伸び代のあるあの子たちに、頑張ってもらうしかない。


そのままサギットに走りよる。サギットが数歩後方に引いた。


「その程度でかわせると思わない事ね。」

鞘のギリギリを右手で掴み、思いきり横に振る。リーチが伸びた分、刀身はサギットを斬りつけた。

しかし、右手ギリギリで斬ったぶん、ダメージはそこまで通ってはいない。軽く皮膚が切れた程度。

「なるほど。これは確かに私が少し甘く見ていたようですね。だからといって、この程度のダメージでは………」

ふとサギットが上空を見上げた。


「神威に気を取られすぎよ。」

決めなさい、秋翔くん。


「精霊の加護・炎舞。焔狐の尻尾…………∞(ヴォルクナテイル・インフィニティ)!!」

烈火の炎が身体を包み、烈火の炎を纏った刀を悪魔目掛けて振り下ろす。秋翔くんの、全身全霊の一撃。刀を振り終わった時には秋翔くんの身体を包んでいた炎は消えていた。残っているのはサギットに放たれた炎のみ。


「先程までは確かに見る価値もなかった子供だと思っていましたが、これは少々考え直さなければいけませんね。」

サギットに烈火の炎が直撃する。炎の柱が天まで高く昇っている。どこまでも途切れることなく。


「流石ね、秋翔くん。予想以上のものを見せてもらったわ。」現段階でここまでの威力を出せる精霊使いは中々いない。


「そ、そうですか。でも、1回使っただけで魔力すっからかんだし、足ガタガタなんですけど。なぁ、イグニ?」

(あー、もう力はいんねー。)

刀は狐のストラップに早変わりする。余程体力を消耗しているみたい。


「無理もないわ。ごめんね、無茶をさせてしまって。」


「いえ、俺たちも今の限界をしれた気がします。けど、もっともっと強くなれるって感じが、さっきの技を使ってみて思ったんです。」そう、あなたたちはまだまだ強くなれる。精霊と人間の絆が深くなればなるほどに。


パチパチパチ、と手を叩く音がする。


私と秋翔くんは咄嗟にその方を見る。炎だ、炎の中に誰かいる。サギット?


………違う。もう一人いる。


「凄いね、サギットにここまでダメージを与えることが出来るなんて。」

炎の中から2つの影が現れる。1人はサギット。かなり火傷を負っているが、もう1人の謎の人物の肩を借りている。男が空いている左手で指をパチンと鳴らす。その次の瞬間、後ろにあった炎の柱は跡形もなく消え去った。あの魔法を一瞬にして消した?!


サギットの隣にいるもう1人の男。サギット以上に厄介ね。


「すまない、まさかお前が出てくるとは。」


「晴明様から様子を見てこいとのことでね。他の2人も回収済みさ。早く帰ろう、君は充分に戦ってくれていた。」

黒い塊がサギットと彼を包み込む。


「あなたは一体何者なの?」

その質問に、彼は直ぐ返答した。私の真横に移動し、耳元で。


「それはその内わかりますよ。」


刀を振るうが既にサギットの横に戻っており、黒い塊に包まれて、そのままどこかへ消えてしまった。彼が横で声を発するまで全く気が付かなかった。額から大量の汗が滲み出る。とりあえず一難は去った。大変なのはこれからだ。


「秋翔くん、一先ず皆と合流しましょう。」


「は、はい。雲雀学園長、あいつは一体なんなんですか?」

私は首を横に振った。


「それは私にもまだ分からないわ。ただ言えることは、私よりも遥かに強い悪魔ってことぐらいかしら。」


ーーーデルタ学園での悪魔との戦闘が終わり、無事に皆と合流できた。病院にいた炎真や氷架、風音、それに真冬も一緒で、真冬は地面に足を伸ばし、零架先生の両手で肩を支えられた状態の吹雪先生の傍にずっといた。


「真冬、心配してくれるのは嬉しいけど、私なら大丈夫だから。そんな悲しい顔はしないで。」

「そんな傷だらけで言われても余計心配になるよ。それに、私は………」

真冬の顔を見て、吹雪先生は頭をポンポンとそっと優しく触っていた。

それから皆の顔を見て、頭を下げた。


「みんな、本当にありがとう。よく戦ってくれたわ。学園長、そして精霊使いとしてあなたたちを心から称えます。失ったものは確かに大きい。」

吹雪先生はゆっくりと前を向く。私たちの前には、1人の老人?が横になっている。その横には磨精学園の学園長である霧崎千学園長が老人の手を握っていた。


零架先生が口を開いた。

「出来るだけのことはしました。ですが、私が到着した頃にはもう、かなり厳しい状態で。」

零架先生が下を向いた。


すると、霧崎学園長が今度は口を開いた。

「いや、傷口を治してくれただけでもありがとう。私は、本当にダメな精霊使いだ。恩師を亡くしただけで動揺し、君たちのように動くことすら出来ないなんて。私は精霊使いとしても、学園長としても失格だよ。上から物を言うことしか出来ない、最低な人間だ。」


「それに気づけたなら大進歩よ、霧崎千。」

雲雀学園長が容赦なく告げる。


「今回の戦い、確かにあなたが加わっていれば悪魔1匹は倒せた可能性がある。夏音さんも頑張ってくれたし、秋翔くん、ジェミニや春香さん、零架さんだって。あなたは第7位としても、本当に最低な人間だった。けれど、吹雪が言おうとしていたことがまだあるから、それを聞いてからまた考えてみなさい。そうよね、吹雪。」

吹雪先生はそう言われると、雲雀学園長の方を見て、にこりと笑って頷いた。


「えぇ。失ったものは確かに大きい。けれど、得られたものもある。失っただけじゃない。今ここにいる子たち以外にも強くなっている人達は大勢いる。もちろん、私達もこの戦いでいい経験を積んだと思うわ。悪魔との絶対的差、だけじゃなく、それを打開できる力があることも。1人では無理でも、2人、3人と集まれば、勝てない敵なんていないわよ。千、戦わなかったことを悔いるより、次の戦いに備えなさい。悔いるのはもっと後。」


千は、再び老人の手を、顔を見て、ぎゅっと握りゆっくりと手を離した。


「ジャックさん、私はまだまだ未熟でした。ですが、これからは違います。これからの私を見ていてくれますか?」

その返答が返ってくることはなかった。ただ、俺には微かに、聞こえた気がした。


「当然だ。」と。


ーーー

それから1週間と少しが経過した。

俺たちは普通の学園生活を過ごしていた。教室の外を眺める。最近はずっと学校に着いてから授業が始まるまで外ばかり見てるな。いや、授業中もか。本当に普通に生活してる。夏音がいないことを除いて。


夏音はあの事件の後、特務部隊が到着し、ミズハノメの宿る魔導書を俺に託して、特務部隊に連れていかれてしまった。それから、数日後、夏音と関係のある2人の男女も特務部隊に来たという。誰だろう?

「あいつ、今頃どうしてんのかな?」

「それって夏音さんのこと?しゅうとくん。」

急に声をかけられ、びっくりして後ろを振り向く。

「毎回驚く?さすがに慣れてもいいと思うけど。」少し笑いながら詩織が声をかけてきた。


「びっくりしちゃったよ。夏音さんとあんなに早く会えるなんて。でも、それでも残念だね。また一緒に学園で生活出来るようになると思ってたのに。」

俺もそうなると思っていた。けど、現実はそうもいかない。確かに夏音は悪魔を撃退した。しかし、それだからといってこれまで行ってきたことをなかったことになんて出来なかった。それは、夏音が1番よく分かっているはずだ。


「仕方ねぇよ。きっとすぐに会える。それより、今日は全校集会があったよな。体育館に行かねぇと。」

少し寂しそうな顔をしていた詩織は頷いた。

「うん、そうだね。」


真冬ともちょくちょく会っているが、なんとも言えない感じで話しかけづらい。とくに真冬は吹雪先生のことで本当に頭がいっぱいぽいし。まぁ家族だし分からないことはないから、落ち着くまでそっとしておこう。


春香も真冬には声をかけづらいようで、最近は俺と春香、美希、詩織の4人で行動することが多い。

詩織と一緒に体育館へ向かう途中の廊下で3年生や2年生の生徒が通り過ぎる。


「今日の全校集会、なんか大事な話があるらしいよー。」

「全校集会ってそんなもんでしょ。」

「いやいや、今回はまじでビッグニュースみたいだぞ。」

「それってまた悪魔絡みのことじゎないのー?私いやだなー。」


悪魔、か。今回、俺たちが悪魔と戦ったことはもちろん伝えられていない。公になってしまうと生徒を悪魔と戦わせたことになってるし、下手に大事にしてしまえば皆の家族にも影響が出てしまう。ということで、学園長や特務部隊の赤城さんたちが上手くやってくれたようだ。


体育館に着き、暫く待っていると、全校生徒や先生たちが集まり、全校集会が始まった。


「それではこれから全校集会を始めさせていただきます。学園長、それではお願いします。」


吹雪先生が演台に立ち、礼をした。


「みなさん、おはようございます。今日は皆さんにいくつか大事なことをお話したいと思います。まずは1つ目、………第2回武精祭を行います。」

生徒がザワザワしだす。武精祭。確かに2年生の時にやったな。記憶に残ってる。


「理由としましては、皆さんの個々の能力をさらに伸ばし、学園の仲間たちとともに成長して欲しいからです。前回、悪魔に襲撃を受けた際のことも兼ねて、今回は私も常に会場にいることにしました。皆さんの魔法も見てみたいですし。それから、教員ももちろんですが、世界精霊使いのトップ10に入る方にもお一人、お招きしています。」

トップ10の1人?雲雀学園長か?


「その方に関しては今後も武精学園に就いて仕事をしてもらいたいと思っていますが、まだ本人がイギリスにいて、こちらに到着出来ていないため、発表は後日にします。」

恐らく悪魔との戦闘が日本で多くなってきているからだ。特にアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンの5つの都市に。

このことを知るのは本当に1部の生徒くらいだと思うから、他の生徒は笑っていた。

「イギリスにいんのかよ。帰国子女か?」

「イケメンだといいなー。」

俺的にはどのくらい強いのか気になる。今度戦ってみたい。


「しゅうとくん、ちゃんと年上の人には礼儀正しく、だよ。」

横にいる詩織は俺の心の内を見透かしたように言ってきた。

「分かってるって。」


「そして2つ目、転校生を紹介します。3年生に3人ね。」


転校生?!3人も?!3年生に3人?!

このタイミングで転校してくるのかよ。一体どんな人達なんだ?


「出てきていいわよ。3人とも。」

演台の横、袖からスタスタと歩いてくる。


「…………うそだろ?」

「ねぇ、しゅうとくん。あれって………。」

俺と詩織だけでなく、生徒が1人の女子を見て唖然としている。

「1人はみなさん知ってるわね。磨精学園に1年間留学していた子と、磨精学園から来た2人の転校生です。」


「葉月夏音です。みなさんお久しぶりです。またよろしくお願いします。」

「イヴ=スマリクス。」

「カイ=シンだ。よろしく頼む。」

改めまして、作者の伊藤睡蓮です。

3人の転校生。ずばっと入れてみました。今後の展開にご期待下さいませ。いつも見てくださっている方、本当にありがとうございます。

次回もなるべく早く投稿したいと気持ち的には思っていますので。少々お待ち下さいませm(_ _)m

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