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精霊剣士の物語〜Sauvenile〜  作者: 伊藤睡蓮
精霊剣士の物語〜Sauvenile〜
14/23

精霊剣士の物語〜sauvenile〜其の拾肆

お久しぶりです。作者の伊藤睡蓮です。

中々時間が取れず投稿が遅れてしまいました。

いよいよレオとの最終決戦です。

どうぞお楽しみください(〃・д・) -д-))ペコリン

26〜決着! 秋翔&ジェミニvsレオ〜


元デモンシア・双子座のジェミニと俺は隣り合うように立ち、その前にはデモンシア・獅子座のレオが立っている。一見2対1に見えるがジェミニも俺も身体中ボロボロでまともに戦うことはまず無理。ジェミニから魔力をもらったもののその量も僅か。ジェミニの魔力も残り少ないことがすぐにわかった。


それに対してレオも傷を負ってはいるが1番厄介なのは奴の能力だ。分身できる上にその力を倍増することができるのだから、正直今の俺たちに勝ち目がない。


「……待てよ。だったらなんであいつは分身しないんだ?」そう口にすると、ジェミニはくすっと笑ってこちらを見た。


「秋翔くん鋭いねー。まさしくそれが彼の能力の"欠点"よ。どんな能力だって"欠点"がある。私の能力にも"欠点"あったでしょ?彼の能力は確かに分身できる。でもなぜ、"分身したレオの魔力が低くて、分身したレオの魔力を増やして本体に近づける"というややこしい能力なの?最初から魔力がレオと同じじゃない理由ってなんだと思う?」


頭の中にクエスチョンマークが無数に浮かび上がる。それを見たジェミニは「あ、ちょっと難しかった?」みたいな顔をして、話し始めた。


「つまり、奴の能力の欠点っていうのは……。」

俺とジェミニはとっさに左右へと離れた。その瞬間、俺とジェミニの間を黒い炎が通り抜けていく。


「なに無視して話進めてんだよ?倍増分身(デッドビート)!………チッ。」レオの体から黒い炎が溢れ、レオを形作る。これじゃあきりがない。なんなんだよ、あいつの欠点って。


今レオが能力使おうとした時、一瞬苦しそうな表情を浮かべたような気がする。何か関係があるかもしれない。


「ジェミニ、あいつもしかして、自分の体力と引き換えに分身出してるんじゃないか?魔力が少なくなるのは奴の本体の魔力を半分にして出して、一瞬で魔力を倍増させてるから、とか?」

そう言うとジェミニは右手の親指と人差し指で輪っかを作った。


「正解。さすが私が選んだ精霊使いなだけはあるわね。さ、後は倒すだけよ。」

それが1番難しいだろ。でも、やるしかない。


「イグニ、魔力を無駄にはできない。レオ自身もだいぶ消費してるだろうから精霊の加護なしで行く!」

「おうよ、元からそのつもりだ!」

刀に火を纏い、相手を迎え撃つ準備を整えた。

2体のレオが同時に駆けてくる。能力が分かったところでレオの魔力が減るわけでもない。レオの能力は種が分かったところでマジックとは違って対処の方法が全力でぶつかるしか今の俺には考えつかない。


鋼鉄のように硬いレオの腕と刃が再び交わった。何度斬ろうとしてもその硬さには驚かされてばかりだ。もう一体のレオは俺の足を掴もうとしていた。


紅翼(アーラ)!」咄嗟に上空へと飛び上がる。あの腕に掴まれたら俺の足は100%お陀仏だろ。


「秋翔くーん、上手く避けてね♬」


「え?」ジェミニがこちらにウィンクをした瞬間に、嫌な予感がした。


炎魔獅子(フーフェルレオール)Ⅹ。」

ジェミニから放たれる10体もの黒き獅子。


「「嘘だろ⁈」」流石イグニ。タイミングばっちりの重なり具合。

そういえばレオの技をさっき奪ってたな。

もちろんレオに向けて放ったのだろうが技の規模からして確実に巻き添えをくらう。


「イグニ、とりあえず全速力で離れるぞ!」

紅翼で空を駆け巡る。


黒き獅子はレオに直撃した。


「よしっ、全弾命中。あ、全獅子命中か。」

「なんにも上手くないからな、ジェミニ。」

ふらふらになりながらもジェミニの元へたどり着けた。


「い、生きてるー。まじで死ぬかと思った。」

「あなたなら大丈夫だろうと思ったのよ。」

信頼はされてるのは構わないが死にかけるほどの信頼はなるべく背負いたくはない。


「ったく。すっかり忘れてたぜ。お前のそのめんどくせー能力をよ。」黒煙の中で仁王立ちをするレオがいる。あの攻撃を受けてなお、立っていられるレオの強さ。やっぱり悪魔は只者じゃないな。


ジェミニも流石に予想外だったようで、額からは少し汗を浮かべている。そして、横で難しそうに考え始めたと思ったらこちらを向いた。

「ねぇ秋翔くん。私の作戦に乗ってみる?」

真剣な眼差しでそう言った。


「なんだよ?」


ーーー遠目から見ていても凄い勢いで爆炎が起こり、吹き飛ばされそうになっていた。近くにいた詩織の手を握ってなんとか堪えてその場にいることができた。


「真冬さん、大丈夫?」

「えぇ、ありがとう。私は大丈夫。」まさかジェミニが飛び出していくとは考えてなかった。あんなにボロボロで傷だってまだ癒えてないのに。


レオと2人の力の差は今のところ、五分五分ってところね。どっちが勝っても、負けてもおかしくない。


ジェミニと秋翔が何か話をしているのが見えた。一体何を話してるの?


「真冬さん、気休めにしかならないと思うけど、回復魔法かけておく。範囲回復(ヒールエリア)Ⅱ。それから、ちゃんと頭も休めないとだめ。」


「詩織さん。」


「今私たちにできることは見守ることぐらい。でも、もしもの時のために身体と頭をゆっくり休めて、いざって時に私たちも戦う。わ、私は戦力にならないかもしれないけどね。」そう言って笑った。


首を振った。


「戦力にならないとかそんなの誰も思ってないよ。私何度も助けられてるし。ジェミニと秋翔ならきっと大丈夫って信じてるから。」


ジェミニを信じている。自分でも思わず口にしてしまった。でも、それが本音。謎も多いけど、秋翔とあんなに真剣に話せてるのは、本当に信頼していないと出来ない。だから、私は秋翔が信じるもの全てを信じる。


顔が急に熱くなってきた。

「ど、どうしたの真冬さん⁈顔が真っ赤だよ⁈」


「な、なんでもない。」

今考えたことを振り払おうと首を振った。

秋翔、勝ちなさいよ。


ーーー「今の作戦の勝率、お前的にどのぐらいなんだ?」


「50%、今の私たちにできる最大限を尽くしての計算で言ってるから。」

ジェミニはそう言って笑って俺を見た。


「なんでこの状況でも笑ってられるのかが不思議なとこだけど。その作戦でやってみるか。」

そう言うと、その作戦をあっさりOKしたのが予想外だったのか、ジェミニは戸惑った顔をした。

「私を信じるの?今さらだけど、私悪魔だよ?普通に考えるなら私はあなたたち人間の、精霊の敵よ。そんな奴の作戦なんか聞いてもし罠だったらとか思わないの?」


「それこそ今さらだろ。初めてお前に会った時は敵としか見てなかったけどさ、今日お前の話聞いててなんつーか、悪魔にも色々いるんだなって思っちまった。お前は俺とイグニを命がけで守ってくれたし、信用しないわけないだろ。」刀が紅く光った。

「助けてくれて…その……ありがとよ。」

イグニはそう呟くと刀の光りは小さくなった。


ジェミニは優しく笑った。

「本当にお人好しなのね、あなたたち。」

「いやいや、この場合は悪魔好しだろ。」

「秋翔くん、全然上手くないからね。」

そう言って、また笑った。


「それじゃあ秋翔くん。行くわよ!」

「おう。イグニ、精霊の加護・炎舞!」身体が温かい炎に包まれる。


「お前の残りの魔力でその状態、どこまで保てる!炎魔槍(フーフェルランツェ)Ⅴ!ジェミニ、お前の能力の対象は1体のみ。つまりこの槍全てを奪うことは出来ない!」

3体のレオから放たれる無数の黒き槍。


「わたしの能力を知ってる奴に簡単に使うわけないでしょ。それに、そんな弱そうな魔法、私いらないから。双光破穿(ツインブラストエクスキューション)!」

ジェミニの手から光の光線が放たれる。炎の槍を簡単にかき消し、レオの元へと一直線に向かっていく。


「まだそんな力が残っていたか。炎魔獅子(フーフェルレオール)Ⅱ。」黒き獅子は双光破穿とぶつかりあい、衝撃波が起こる。


双光束(ツインバイン)Ⅲ!」

ジェミニが両手をレオに向ける。すると、レオの足元から光が生み出される。3体のレオを包むように拘束する。

レオが大技を放ったその隙をついた。

「今よ、秋翔くん!」


「任せろ!」上空へと飛び上がり、下を向いて、3体のレオを視界に捉えた。


「焔狐の尻尾(ヴォルクナテイル)Ⅲ!」刀を振り下ろしすと、炎の斬撃が刀から勢いよく放たれる。3体のレオを拘束して一気に必殺技を放つ。これなら俺の残り魔力でも倒せる!


レオは不気味に笑った。

「ふざけんなっ!炎魔爆砕(フーフェルグラン)!」レオの周囲が一瞬にして爆炎に包み込まれる。自爆か?


いや、これは⁉︎

双光束を解くために自分の周囲を爆発させたのか。しかし、その代わりに2体のレオは消えていた。しかし、それを気にもせずレオは俺を目掛けて飛んできた。炎の斬撃を簡単に躱すと、俺に手をかざした。


「紅葉秋翔、これで終わりだーーー!」

レオが叫ぶ。


「終わるのはあなたよ。」

ジェミニの声。


さっきまでレオがいた場所にジェミニがいる。炎の斬撃を手で受け止めると、一瞬にして消えた。

レオが振り返ってそう叫ぶ。

「ジェミニっ!」


「秋翔くん!2人で決めるわよ!」


チャンスは今しかない。


「焔狐の尻尾Ⅴ。」

「炎狐の尻尾(フールナテイル)Ⅴ。」

両方から放たれる斬撃に、レオは咄嗟に手で防いだ。


「俺様がやられるわけがねー。俺は、誰にも負けねー!最強の悪魔になる、はずなんだー!」

徐々に斬撃を抑える手が炎に包まれていく。


「終わりだ、レオ。」レオの目の前に迫って、刀を振り上げた。


「く、そ……が…っ!」

レオの身体が少しずつ黒くなっていく。

そして、そのまま灰のようにして消えていった。


「イグニ、勝った。勝ったぜ、レオに!」

「あぁ、シュウ。喜ぶのはいいんだけどさ……魔力切れだ。」


「へ?」空中からそのまま地上に向かって一直線に落ちていく。


「秋翔くん!いま助け………。」その瞬間、周りの結界が崩れはじめた。


「ごめん秋翔くん……、私も魔力切れ。」ジェミニは両手を顔の前で合わせて謝っていた。いやいやいや、これマジでやばいからね!


「しゅう先輩!」

聞き馴染みのある声。辺りを急いで見渡してみると、一瞬にして自分のいる場所が変わったことが分かり、さらに手を繋がれていることも分かった。


「春香……なのか?」


「はい。そうです。春香です。………加速、初速。」ゆっくりとスピードを下げて着地した。


「悪い、まじ助かった。一時はどうなるかと思ったぜ。」


「いえいえ、しゅう先輩が無事でよかったです。」春香はにっこりと笑った。


ーーー春香とジェミニと一緒に真冬たちの元へ行くと、そこには美希と雲雀真純学園長がいた。美希も悪魔と戦ったのか、体の傷はなかったが服が所々裂け、ボロボロだった。


「怪我人しかいないわね、まったく。吹雪に怒られても知らないわよ。でも、本当にみんの無事でよかった。」

雲雀学園長はホッと息を吐いた。

雲雀学園長の前にジェミニが立ち、膝をついた。


「お初お目にかかります、雲雀真純学園長。私は元悪魔刻所属、双子座のジェミニといいます。今は紅葉秋翔の元に仕える悪魔です。以後、お見知り置きを。」

そのまま下を向くジェミニ。

「勝手に仕えてんじゃねぇよ……。まぁ別に悪い奴じゃないからいいけど。」

ジェミニは下を向きつつこちらを見て舌を出して笑っていた。


「ジェミニ、詳しく話を聞かせてもらうことはできるわね?」

雲雀学園長はこれまでと同じ口調、とはいかず、真剣な表情で尋ねていた。


「はい。ですがその前に、四学園はどうなっているでしょうか?そこをまず教えていただきたいです。」

ジェミニの声にもさっきの顔のような明るさはなかった。


「………分かりました。結論から言えば、どの学園でも、怪我人は数名いましたが、死者はいません。武精学園には悪魔は来なかったようです。しかしながら、磨精学園の魔導書が奪われてしまいました。霧崎千学園長が駆けつけた時にはもう全てが片付いていたとのことです。」


魔導書?なにか特別なものなのか?そんな事を考えていると、ジェミニは暫く考え込むと、「うまくいったみたいね。」と口にした。


「ジェミニ、あなたから話を今すぐ聞きたいところだけど、今はみんなを手当て出来る場所に移動します。いいですね?」


「はい、もちろん。」ジェミニは即答した。春香や美希は目の前に悪魔がいて、状況もつかめないでいるのに、何も言わずただジェミニを見ていた。


「春香、美希。悪いな。後でちゃんと説明すっから。」

2人にもちゃんと話さないと。


「「はい。」」春香と美希はただそれだけの返事を返した。


「それから、みんなに伝えるべきことがもう一つ。」雲雀学園長のその言葉に全員が耳を傾けた。


「さっき連絡があったのだけれど、その魔導書を今所有している人物は、葉月夏音さんだそうよ。」

真冬や春香、詩織、美希はその事を聞くと、驚きを隠せずにいた。俺もそうだった。


「夏音が………どうして?」

まさか、その魔導書も過去に飛ぶために必要なのか?


「それをはっきりさせるためにも、まずはみんなが元気に集まれることが大事よ。私も今その魔導書を持ってるのが夏音さんだとしか分かってないから。とりあえず吹雪たちと合流してからね。」

迷っていたが、みんなの姿を見て、雲雀学園長に賛成するように頷いた。


「それじゃあ私たちもその会話に混ぜてもらおうかな。雲雀学園長。それにみんなも。」

こちらに近づいてくる2人の影があった。1人は姿を捉えるまでもなくすぐに声でわかった。


この声を聞くだけで安心感が一気に増すのはなぜだろう。単にこの場の空気を知らないだけか?


「しゅうとくん、今私をバカにしてなかった?」

「いえ、バカにはしてません。神崎先生。」即答した。


「神崎さん、無事で何よりだわ。それに、花蓮さんも。ご苦労様、本当によくやってくれたわ。」

"花蓮さん"と言われた少女は雲雀学園長を見ると頬を赤らめて頷いた。


「花蓮さん!よかった、また会えたよ〜!」

春香が少女に飛びつき、そのまま2人で倒れこんだ。

どうやら春香が忠精学園にいたころの友達みたいだな。


「春、話が進まなくなりそうだから、一旦離れて。」花蓮がそういうと、春香は立ち上がり、花蓮に笑顔のまま手を差し伸べた。


「ごめんごめん。でも、本当によかった。」


「春も無事………ってことでいいのよね。身体中ボロボロだけど。」春香は頭に手を当てて「大丈夫、大丈夫」と言って笑った。その笑顔に花蓮も少し笑った。


「それじゃあちょっと、私と花蓮さんが倒した悪魔について、近くの病院に向かいながらでも話そうかな。"ちょっと気になること言ってたから"。」最後の一言は、ふざけた言い方はしていなかった。


「分かりました。神崎さん、それに花蓮さんの話を聞きましょう。」


これから語られるのは、神崎零架と四ノ宮花蓮がここに来るまでの物語

改めまして作者の伊藤睡蓮です。

次回のお話は本編にあった通り、神崎&花蓮のペアがここに来るまでのお話。まぁちょっとした過去編みたいなものになる感じですね。夏音のその後もこの後にありますのでそちらもお楽しみに。


それでは今回はこの辺りで……。

twitter等でも告知しますのでそちらもご確認していただけるとありがたいです(*´ω`*)

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