表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊剣士の物語〜Sauvenile〜  作者: 伊藤睡蓮
精霊剣士の物語〜Sauvenile〜
12/23

精霊剣士の物語~sauvenile〜其の拾弐

どうもお久しぶりです

作者の伊藤 睡蓮です(〃・д・) -д-))ペコリン


今回は2本同時投稿の予定なので、後書きは、もう一本の方で書かせていただきます


今回は春香と美希の絶体絶命の状況に現れた、雲雀真純と悪魔との対決です。遂に本気が見れるかも?


夏音側ももうちょっとしたら投稿しますのでお待ちください。もう忘れている人もいるかもしれませんが(笑)


一応夏音は磨精学園にいるところで終わってますね。


ひとまず、イプシロンで起きている対決をどうぞ!(*´ω`*)

22,圧倒的な力

「ひ……ばり……学園、長。」

私がそう呼ぶと、雲雀学園長は私に歩み寄ってきて、耳元でこうささやいた。

「待っててね、すぐに安全な場所に連れてくから。」

すごく、安心させられた。


「雲雀真純。あんたは自分の学園を諦めたの?ここにいるってことはそういう事よね。たった2人の人間のために自分の学園の生徒を見殺しにするなんて、人間ってそういう種族なのね。」パルムは雲雀学園長を嘲笑った。嘲笑っているパルムには嫌な気持ちにはなったけど、雲雀学園長がここにいることは確かに不思議だった。

雲雀学園長は悪魔の方を一切見ずに、私たちの体を横に並べて最低限の安全を確保していた。


「雲雀学園長……、どうして、学園に戻ら、なかった、んですか?」

雲雀学園長は私の方を見ると、私の肩から流れる血を自分のYシャツをちぎり、包帯の代わりとして巻いた。


それから私の口元に手を当てると、笑みを浮かべてこう言った。

「怪我人があんまり喋るのはだめ。今はゆっくり体を休めなさい。それに、学園には私が信頼できる"2人組"が向かってくれたから。どっちもあなたの知ってる人よ。」

私の知ってる……人?


「ねぇ、さっきから無視してるけど今の状況分かってる?あんたは足手まとい2人を抱えての勝負、さらに1人だけ。学園も捨て、悪魔に殺される。あぁ、いいシチュエーションかもね。」パルムって悪魔、本当に嫌い。今すぐにでも倒したい。


「あなたたちこそ、やられる覚悟はできた?言っておくけど、手は抜かないから。」

雲雀学園長がようやく後ろに立つ3体の悪魔、ラーナ・パルム・メルクにようやく言葉を発した。

そして、いつのまにか雲雀学園長の手には鞘に収まった長刀を持っていた。


「私の学園なら大丈夫よ。吹雪と一緒にここへ来てた神崎さんが向かってくれてるし。私の学園の子も1人、向かったから。」

神崎先生が。そうだったんだ。


「それに、"忠精(あの)学園の敷地内なら"彼女の方が私よりも強いから。」

分かった。雲雀学園長が言ってる忠精学園の子。四ノ宮花蓮(しのみやかれん)、花蓮ちゃんだ。私が1年間修業するために忠精学園に通っていた頃に友達になって、術式魔法で右に出る人がいないと言われてたっけ。1年生の頃からそのくらい有名人で、すごいなーって思ってた。そっか、花蓮ちゃんならきっと大丈夫。神崎先生もいるし最強だよ。


「そんな子がいるなんて。もっとちゃんと情報集めとけばよかったわね。」メルクは淡々とそう言った。

「まぁ、いいじゃない。私たちの目的はもう達成したも同然なんだから。そこで倒れてる2人に、もうちょっとだけ遊んでもらわないと。」ラーナは笑みを浮かべてこちらをみる。美希はまだ目を覚ましていない。私は、そっと美希の手を掴んだ。


「そろそろ始めましょう。2人をこんなところに寝させるなんてかわいそうだから。」


「始めましょう?もう始まってんの、殺し合いはね!双光爆散(ツインブラット)!」ラーナから放たれた光輝く爆発がこちらに向かってくる。それも、広範囲に渡る攻撃。雲雀学園長は私たちをかばって動こうとしない。


疾風斬(しっぷうざん)!」雲雀学園長は瞬時に鞘から刀を抜き、ラーナが放った光を斬った。


「メルク、パルム、時間は稼いだよ。」

ラーナはそう言うと、真上にジャンプして、雲雀学園長と距離をとった。上を向くと、メルクとパルムはこちらに向かって右手を向けていた。その手には徐々に光が収束していく。


「ご苦労様。第5位となると遊んでなんていられないし、一気に倒すしかないでしょ。逃げられないこの状況でね。」雲雀学園長は私たちに攻撃が当たらないように、ほとんどその場から動かずに、さっきの攻撃を防いでた。それを分かってるからこそ、あの3体の悪魔たちは狙ってる。


「春……。」隣からかすかに私の名前を呼ぶ声がした。

美希だ、美希が目を覚ました。無事でよかった。美希は魔導書をギュッと握る。


範囲回復(ヒールエリア)。」美希は残った魔力で私たちの周りに回復魔法を発動させた。少しずつだけど、体力が回復してくる。それでも、まだ体は思うように動かない。


「2人とも、その場所から絶対に出ちゃだめよ。私も一気に決めるから。」雲雀学園長は私たちに背を向けながら言った。


「後ろの子たちも悪あがきかしら?無駄よ。私たちの魔法をくらって立ってた人はいないんだから。」ラーナもいつのまにか魔力を手に集中させていた。私たちでも感じる魔力の濃さ。


双光破穿(ツインブラストエクスキューション)!」3体同時の超高密度の光線。今まで見てきた魔法の中でも、夏音先輩の魔法、風神の剣の比じゃない。雲雀学園長は一度刀を鞘に閉まった。


「これは厄介ね。被害が出なければいいけど……。真刀・宝勾斬 壱式(しんとう・ほうごくざん あかのたち)。」鞘から再び抜かれた刀は、赤い光を帯びていた。とっても綺麗な刀を雲雀学園長は下から上へと斬りあげる。


雲雀学園長の刀は3体の悪魔が放った光線とぶつかる。


「私たちの攻撃を真正面から受け止めようとしたのはあなたが初めてよ、雲雀真純。せいぜい足掻いて足掻いて、死になさい。」

パルムは嫌な笑みを浮かべてそう言った。ラーナとメルクも勝ちを確信して、笑みがこぼれる。


3体の悪魔はまだ分かってない。自分たちのおかれている最悪の事態に。


雲雀学園長は静かに、囁くように言う。

「あなたたちの敗因は3つ。私を甘く見たこと、3人いれば勝てると油断していたこと、私の親友の生徒を傷つけたこと。」


斬りあげた刀は、高密度の光線を、真っ二つに斬り裂いた。


3体の悪魔はその事態に気づくのが少し遅れ、斬撃に巻き込まれる。悲鳴をあげて地面へと落下していく。

「ジェミニ様……。」

「世界は直に我々デモンシアのものに。私たちはその礎となりましょう。」

「………おチビちゃん。命拾いしたわね、けれどその悪運、いつまで続くかしら。」

パルム、メルク、ラーナ。それぞれ体がどんどんと黒い塵となって消えていく。デモンシア、前に吹雪学園長が言ってた悪魔の集団。やっぱり動き出してた。その悪魔たちを倒した学園長。


これが精霊使い第5位の実力。忠精学園の雲雀真純学園長。全ての属性の技とそれらを操る長刀を巧みに使って戦うその姿は、私の憧れにもなっていた。


「はい、おしまい。」雲雀学園長はゆっくりと刀を鞘にしまった。鞘は刀が収まると同時に小さくなって、雲雀学園長の手に握られた。


「さすがです。雲雀学園長。」

私と美希が肩を取りながらが歩み寄ると、雲雀学園長は心配そうな顔で私たちを見た。


「動いて大丈夫なの?すぐに仲間を呼ぶから、ゆっくり休んでなさい。」

美希の回復魔法のおかげで今ではだいぶ体が動く。美希はまだ少し休んだ方がよさそう。初めての戦闘で疲れ切ってるのが見て分かった。雲雀学園長は携帯に電話がかかってきたようで少し私たちから離れた。


「美希、ごめんね。私が油断してたばっかりに。」美希は首を振った。

「違うよ、私が謝らなくちゃいけない。アクアさんの魔法も、ちょっとだけしか扱えなかったから、まだまだ力不足だね。」

美希は一生懸命頑張ってくれた。私は雲雀学園長からもらった"とっておき"を使ったのに。油断してやられて。余計に美希を危険にさらした。


電話し終えた雲雀学園長がこちらに戻ってきた。

「2人とも、本当によく頑張ったわよ。あなたたちが結界を壊さなければ私たち4学園の学園長たちは動けなかった。本当にありがとう。」雲雀学園長は私の方をじっと見ていた。


「な、なんでしょうか?」

雲雀学園長は私の額にデコピンした。


「いたっ⁉︎きゅ、きゅうに何するんですか。」額をさすりながら尋ねる。


「よく頑張ったって言ってるじゃない。もっと喜んでいいのよ。」


「……私は、美希を遭わせることのない危険にさらしました。喜ぶことなんて出来ません。雲雀学園長からもらった新しい武器でも結局、悪魔を倒すまでの力を引き出せませんでしたし。」

私は下を向いて、目に涙を浮かばせた。私の1年間の修行の意味って一体……。


雲雀学園長は両手で私の頰を包むと、ゆっくりと顔を上げさせられた。


「美希さん、あなたは今の春香さんをどう思う?」

美希はそう尋ねられ、最初は戸惑っていたけれど、ゆっくりと私の近くに来ると、


デコピンをした。


「いたい。」

また、デコピンをされる。

「いたいってば。」


「春について行くって言ったのは私。危険なことは充分なぐらい分かってたよ。少し前の私なら、ここにはきっと来てないよ。」

そうだとしても、あと少しで美希は死んでいたかもしれない。


「春香さん。1年間修行しただけが自分の力だと思わないでね。これからもあなたは強くなれる。前にも言ったはずよ、私があげたその武器も、仲間を、大切な人を守るために使いなさいって。あなたがそれを使いこなせてないのは仕方ないこと。まだ数回しか練習してなかったもの。まだまだ、あなたは強くなれるわ。だから、今は喜びなさい。」雲雀学園長は、とても優しく温かいて手で私を包んでくれた。


「美希、ありがとう。雲雀学園長、ありがとうございました。」


「春……私のことを大切な仲間って、親友だって思ってくれて私も嬉しーよー。」

美希は私に飛びついてきた。お互いボロボロだっていうのに。


「美希、さっきのデコピンいたかったよ。」

「ごめんね。でも、春が落ち込んでるのも悪いんだよ。」

親友との絆が………より一層深まった気がした。


「あなたたち、大人しくしてなさい。まったくもう。そういえば、忠誠学園なんだけど、今さっきあなたの親友から連絡があったわ。」

忠誠学園……私の親友……花蓮ちゃんからだ!


「どうだったんですか?」確か神崎先輩も一緒にいたはず。


「あなたの携帯、見てみなさい。送るように言ってあるから。」

私の携帯……。ポケットを探って見つけると、確かに一件のメールが届いていた。


「えーっと…………短いなー。もう。」

美希と目を合わせて、クスりと笑った。


『余裕のV』か。花蓮ちゃんらしいね。


23,〜ジェミニの真意〜

光の空間、双天世界(そうてんせかい)に閉じ込められた俺は、ジェミニと面と向かって刀を構え立っている。


「ねぇ、紅葉秋翔くん。君はなんで私がここに来たか分かる?多分、外にいるあなたの仲間たちは分かってるでしょうけど。」ジェミニはにこりと笑って俺の名前を呼び、突然話し始めた。


「おい、お前。戦う気あるのか?外がどうなってるだとか。俺に話してもなんの得にもならないぞ。時間稼ぎのつもりか、お前みたいな奴がそんな事する必要ないと俺は思うけどな。」刀を構えると、ジェミニは呆れたようにため息をつく。


「もう、こっちが教えてあげようとしてるんだから素直に聞きなさいよ。全く、この年頃の人間の男ときたら……。この空間にあなただけを閉じ込めた理由は2つ。1つ、あなたに単純に興味があったから。前に一度戦った時に言ったわよね、私はあなたが気に入った。それだけ。2つ、私の"元"仲間たちからあなたと私の気配を消すため。」

ジェミニの仲間?しかも、"元"だと?


「どういう意味だ?別に仲間なら気配を消す必要なんてないはずだ。」

そう言うとジェミニは俺が興味を持ってくれたのが嬉しかったのか、俺に微笑んだ。


「それがあるのよね。私、デモンシアにもう興味ないし、あなた側につくわ。」


………ん、今なんて?


「もうあんな集団に関わってても、何にも面白くないんだもん。それよりも、紅葉秋翔くんと一緒にいた方が絶対に楽しいし。」


「待て、話が見えてこない。」


「だから言ったじゃない。なんで私がここに来たか教えてあげようかって。」

こいつを信じていいのか?すごい怪しいな。みんなと早く合流しないといけないし。こいつがいつ攻撃を仕掛けてくるかも……。


そんなことを考えていると、ジェミニは自身の前に手を出すと、空間から光に包まれた何かが降ってきた。それを手に取ると、光がはじけて、光輝く剣が姿を現した。


「これ、私の武器。どう?綺麗でしょ。これが私の100%の力を発揮するためには必要不可欠なもの。」

やっぱり、さっきの話は俺の気をそらすために!


「これを……はい。あなたに渡しとくわ。」そう言って剣を投げると、俺の近くの地面に突き刺さった。


「これでも信用できない?とりあえず刀を閉まってもらって話を聞いて欲しいんだけど。なんなら、私を拘束してくれてもいいわよ。後でちゃんと解いてくれるなら、だけど。」


「お前、本当に何が目的なんだよ。」

ジェミニはその場にゆっくりと座る。


「だから言ってるじゃない。その話をするために、私はなんだってするわよ。」

わけわかんねー。

(おい、シュウ。怪しすぎるぞ、こいつ。話をするとか言っておいて急に攻撃してくるかもしれねぇ。早く倒してみんなと合流しようぜ。)

頭の中にイグニの声が流れ込んでくる。

(早く助けに行きたいのは俺も同じだ。けど、真冬たちなら簡単にはやられないだろ。一先ずこいつの話を聞く。)

(おいおい、あいつの話を真に受けるのかよ⁉︎まだ一度しか会ってない敵、それにあいつは多分ほかの悪魔たちとは強さが圧倒的に違う。今100%出せないのが本当なら今倒すしかないだろ!)

イグニの言ってることも確かに正しい。

(けどそれはあいつの言ってることを信じてることになるぞ。)

(うっ……。ま、まぁ戦う武器がないからな。そりゃ全力出せないだろ。)

(前回も相手は武器使ってなかったぞ。それで夏音と俺を相手してたんだぞ。)

(………。)

(みんななら大丈夫。だから俺たちは奴らの目的を知る。今できることはそれぐらいだ。)

(…………。奴が変なそぶりしたらすぐに"あれ"使うからな。)

(わかったわかった。)


「お話は終わった?どう、私の話を聞いてくれるかしら?」

ジェミニは待ちくたびれたような素振りをして俺とイグニの会話が終わるのを待っていた。


「あぁ。とりあえず、話だけは聞く。イグニ。」手に握られていた刀を上へと投げる。刀は紅く輝いて、炎を纏ったような紅い狐、イグニが姿を見せた。


「わぉ。初めましてだね。あなたが紅葉秋翔の精霊、イグニね。よろしくね。」

ステラはイグニに向かって挨拶すると、イグニは「フンっ。」と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。


「それで、お前の目的は何だ?」俺が聞く前にイグニが先にジェミニに聞いた。ジェミニはそれを見てクスッと笑って俺たちの方を見た。


「今回ここに来たのは、私たち……というより精霊使いたちには悪魔刻(デモンシア)と呼ばれてるわね。まず、それは知ってる?」


「あぁ。」武精祭のときに聞いた。


「そこで決められた計画がこの都市、イプシロンの陽動襲撃と4学園会議が行われている場所に結界を張って隔離する陽動襲撃。そして本命の、4学園の襲撃。」


4学園の襲撃⁉︎それに今、学園長たちを隔離って。


「ってことは今、学園長たちは身動き取れないってことか」


「そういうこと。」顔色一つ変えずにジェミニは答える。というか、4学園会議の場所って公にされてないだろ。それに、いつ行われているかすら分からないのになぜこいつら悪魔が知っている?

「色々考えてるねー、割とそういう顔も好きよ。なぜ場所と時間が分かったか。これはまぁ、あなたたち精霊使い側に内通者がいると見て間違い無いわよ。実際私も知らないんだけどね。だいたい"うちらのボス"が持ってくる情報は内通者がいなければならない情報のみだし。」内通者……。今の俺には分からない。学園長たちに聞けばなにか分かるかもしれない。


「続きを話すわね。武精学園に二体、他には一体ずつ、イプシロンには私含めて計五体、さっきのステラもその1人。ちなみにこの配置を命令したのも私。レオがまんまと引っかかってくれてよかったわ。」

レオ?

「やっぱりレオは生きていたのか⁉︎」


「ふーん、やっぱり。か……。と言うことはあなたたちも薄々は気づいてたわけだ。賢いねー。」


「気づいていたのは俺とアクアだ。シュウには俺が説明してやった。」

イグニは自分とアクアの手柄だと胸を張って言った。まぁ、その通りなんだけどな。


「レオは刻精学園に向かわせた、他の学園にはそれぞれレオの配下たちが向かったわ。ここイプシロンにいるのは私の手下たち。まぁ、彼女たちはそのうち倒されるでしょうね、あなたたちの仲間に。」


「おい、お前。この配置はお前たち悪魔にとっては失敗なんじゃないか?」

どういうことだ?イグニの言ってる意味が分からない。


「そんなことまで分かるのね。それが私の計画の一つなのよ。イグニちゃん。」

イグニもその言葉を聞いて訳が分からないような顔をした。


「おい、お前ら。話が全く見えてこない。結局どういうことだ?」

2人はこちらを見ると、顔を合わせて大きなため息をついた。こいつら意外と息合ってるじゃねぇか。


「考えてもみろ。陽動にどうしてジェミニがイプシロンに来るんだ?どう考えてもジェミニは4学園のどこかに行って襲撃すれば、こいつからしたらほとんど人のいない学園なんざ簡単に壊せると思うぜ。そして、そのぶっ壊す意味もわからねぇ。」

ジェミニは首を縦に何度も振って頷いていた。


「そりゃ、イプシロンには学園長たちがいるから、万が一の時のためにとか。」


「それも考えられなくはないが、だったら今ここにいる時間こそ無意味だろ。つまり、お前。レオやほかの悪魔たちにはさっき言ってた通り、万が一の時のためにとか言っておいてイプシロンに来て、俺たちに会いに来る事が目的だったのか。」

ジェミニはパチパチと手を叩きながら賞賛する。


「すごいわね、イグニちゃん。……レオをここから遠ざけるために磨精学園に行かせた。おそらく霧崎千は磨精学園にある魔導書を守るために精霊使いのトップ10の誰かを呼んでいるはず。まぁ、ジャック・ノワールがいれば安全でしょう。刻精学園には直に結界が剥がれた後に速攻で精霊使いのトップ、神谷晴明が行って被害は最小限に収まる。神谷晴明が着くまでは、デルタ5と厨二くさく言われている子たちが足止めできるでしょう。」

こいつはどこまで計画の内だと言うんだ。こいつは本当にデモンシアから抜けようとしてるのか?それとも俺たちを嵌めるために。どっちだ。


ーーー真冬&詩織ペア ステラ撃破後

「真冬さん、やっぱり私たちも結界のところに向かった方がいいのかな?」

詩織さんは春や美希たちが心配みたいね。さっきから少し時間が経つたびにこんな感じに聞いてくる。まぁ、分からなくはないけど。


「彼女たちならきっと大丈夫。それに、今向かったとしても、春のスピードがないとすぐには着けないから時間もかかる。秋翔が戻ってくるのを待って、その間私たちも出来るだけ体力を回復させた方がいいわ。」

今できる最善の行動は、身体を休めること。次に何が起こるか分からない今はそれしかない。


「特務部隊も動くだろうし、後は彼らに任せましょ。」


「うん。そうだね。」詩織さんも怪我はないとは言っても、初めての悪魔との戦闘で大分集中してただろうし、疲れきってる。どこかに座って待ってるのがいいと思って、ベンチを見つけると、詩織さんに声をかけて一緒に向かう。


早く戻って来なさいよ。秋翔。


「あぁー。ジェミニの野郎、ボスの言ってた通り裏切ったか?魔力がこの辺で消えてんなー。双天世界、か。」

この声……まさか。ふと上を見上げると、そこには、この間倒したはずのレオの姿があった。


「おっ、いいところに人間がいた。って、お前はこの間俺の分身倒して喜んでた精霊使いか。お前、ジェミニがどこ消えたか知ってんだろ?」

こいつ、間違いない。レオ。やっぱり生きてた。しゅうとが話したかったのはこの事と関係している、絶対に。


「真冬さん……この人は一体。」

詩織が震えながら尋ねる。心のどこかではもう感じてるのかもしれない。

「人じゃないわ。悪魔よ。それもかなりの手練れ。離れてて、流石に危険すぎる。」詩織さんに背中を向けながらそう伝えた。目を一瞬でも逸らしたらだめ。全神経をレオだけに集中する。


「おいおい、俺はジェミニの場所を聞いてるだけだぜ?ちゃんと確かめねぇといけねぇしな。」

教えて仮にも秋翔のいる空間にレオが入り込んだら、悪魔との2vs1という最悪の状況になる。それだけは絶対に避けないと。


氷衣(グラージョン)!」刀に手をかけて、全身に氷の羽衣を纏う。もう魔力も残り少ない。一気に決める。


絶対凍結斬(アブソートシュラク)Ⅱ!」刀を前に突き出すと切っ先から凍てつく氷が放たれる。


「やべっ!この技は!」レオは絶対凍結斬をまともに喰らった。これで倒せるとは思ってないけど、少しでも時間を稼げれば。



ピキッ!

氷の砕ける音が公園内に響く。


「中々の威力だな。この間よりもまた少し成長したのか?って、この間倒したのは俺の分身だったな。」


相手は自分の分身を生み出せて、記憶を共有できるのね。レオの能力は力を倍増させるだけじゃなかったって事ね。


それよりも、この状況はまずい。今の攻撃でほとんど魔力が残ってない。


「そろそろ教える気になったか?俺とお前じゃ格が違う。それに今回は裏切り者がいるかどうか来ただけだ。お前は興味ねぇよ。」

裏切り者?ジェミニの事を言ってるのかしら?もしそうだとしたら、仲間割れをしてくれる可能性もある。それに、しゅうととジェミニが消えてから少し時間が経ち過ぎてる。いくらなんでもどちらかが出てきてもおかしくはないはず。このまま黙ってれば間違いなく殺される。詩織さんももう戦えないはず。


「分かったわ。ジェミニが消えた場所を教えるわ。」

レオは今の言葉を聞くとニヤリと笑った。


「それは助かる。」


「あそこ、あのベンチの近くよ。急に光に包まれて消えていったわ。」


「なるほどな。場所は分かった。もうお前たちには用はない。」

結局こうなるのね、詩織さんを守らないと。


「詩織さん!」


炎魔獅子(フーフェルレオール)Ⅲ。」

私たちの方に手をかざす。黒い炎を纏った三体の獅子がその手から放たれる。


氷壁(グラスミュール)Ⅲ!お願い、耐えて!」黒き獅子は厚い氷の壁をもろともせず、砕いてくる。今のところまだ同等の力で相殺してる。何かこの場をしのぐ方法を考えないと。


パリンッ!


氷衣が解ける。音を立てて崩れていく。

魔力切れ。このままだと氷壁が崩れるのも時間の問題。最後の一枚の壁、黒き獅子がもうそこまで迫っている。

「詩織さんだけでも逃げて。詩織さん?」

詩織は前を向いて、口を固く結んだようにしてレオを見ていた。


黒き獅子は公園のほぼ全体を焼き尽くすと、静かに消えてなくなった。


「さてと、あいつが言うにはここだったよな。確かに僅かだがジェミニ魔力反応を感じる。ぶっ壊すか。」


ーーー秋翔&イグニ&ジェミニ

「さてと、ここまで情報をあげたんだからそろそろ信用してくれた?」ジェミニは首をかしげて聞いてきた。

いや、これは。


「「逆に怪しい。」」イグニと口を揃えて言った。


「どうしてそこまで俺たちのところに来ようとしてるんだ?なんでデモンシア、だったか?そこから抜けようとしてるんだよ。」


「…………。」急にジェミニが黙り込んだ。そして、暫くそのまま何も話さなかった。


「私は、あなたに興味が移ったの。ただ、それだけ。」

なんだ?このモヤモヤする感じ。


「じゃあ、そもそもなんで俺に興味が移った?この間会ったのが初めてだよな、あの時すでに興味あるとか言ってたけど。」


「そりゃ、人間的に言うなら一目惚れってやつでしょ。」


ひ、一目惚れ⁉︎


「おい、シュウ。さっきから相手のペースに飲まれそうになってるぞ。お前、シュウは騙されても俺は絶対に騙されないからな。」


「イグニちゃんって割と警戒心高めなのね。悲しいわ。」

「さっきから馴れ馴れしくイグニちゃんって呼ぶな!」

「えー、可愛いじゃない。イグニちゃん。」

イグニは相変わらずだな。まあ俺も完全に信用してるわけじゃないけど、まだジェミニは俺たちに言ってない重要なことがある気がする。


それに、今の俺たちも無防備といえば無防備な状態。それなのにジェミニは攻撃をしてこない。いくらでもチャンスはあったはずだ。これも相手の思惑だとしたら完全にいいようにされてるだけだろうけど、そんな風には見えないんだよな。


「紅葉秋翔くん。あなたはどう?私のこと信用してくれる?」ジェミニのこの眼。やっぱり何か隠してる。それを聞くためにも、俺の近くにいてもらった方がいいだろう。どうせここじゃあ"これ以上言ってくれなさそう"だし。


…………って何で俺そんな事分かるんだ?


まぁ、そう思うこともあるか。とりあえずジェミニに一緒にいてもらおう。


「まだ完全に信用したわけじゃない。だから……。」


バリバリッ!


大きな音が空間に響き渡る。何かが裂けるような、大きな音。


「シュウ、やばいぞ!この空間の魔力が不安定になってる!やっぱりこいつ俺たちを

倒すために!」イグニがジェミニを睨む。しかし、ジェミニも妙に焦っていた。


「まさか、レオ⁉︎どうして、あいつがここに来てるの。2人とも、早く逃げ……⁉︎」ジェミニは俺たちの後方をみて、驚いていた。


パリンッ!真後ろからガラスの割れるような音が聞こえる。慌てて振り返ると、空間の裂け目から、イグニに向けて誰かの手が伸びている。しかも、その手から放たれる殺気はまるで。


徐々に身体全体が空間に入ってくる。

レオだ!ジェミニの話だと磨精学園で第4位と戦ってるはずじゃなかったのか。


「邪魔だ。どけ。」その手はそのままイグニの方へ伸ばされる。このままだとイグニが!


ドスッッ!禍々しい手は、俺の目の前で体を貫いた。


「おい、どういうことだ?ジェミニ、なぜお前が精霊を庇う。」

ジェミニの腹には、レオの手が貫通して刺さっていた。イグニを庇って間に入ったのか。


「おい、お前……どうして俺を庇った?」イグニは戸惑いながらジェミニに聞く。


「……そん……なの、あたりまえ……じゃない。……私はあなたたちと、もっと一緒にいたいから。死んじゃ困るの。」ジェミニは涙を浮かべてそう言った。レオがジェミニの腹部から自分の腕を抜く。ふらふらになりながらも俺たちの前からどこうとしなかった。


こいつは本当に俺たちと一緒にいたいだけだったのか。悪魔と一つにくくっても、こうも分かれてるなんて知らなかった。こいつは、人間や精霊と同じような関係になりたかったんだ。この間の時も、レオの能力を、イグニたちに伝えるためにあの場所にいた。俺たちが重傷を負わないようにリブラと一緒に撤退することで、あの場にレオの分身のみにした。悪魔の力を分かってもらうために。


「やっぱりボスの言った通り、裏切り者だったか。お前の魔力が消えたらイプシロンに向かうようにボスからの伝言で伝えてあった。もちろん、"お前以外の全員に"な。」

空間の裂け目から次々と何かが勢いよく入ってくる。


「ローク、ソーロ。って残ったのはこれだけか。他は先に学園に着いちまってたか。まぁいい。お前ら、裏切り者の処刑だ。」


「残念です、ジェミニ様。」ソーロと呼ばれた悪魔は躊躇することなく、持っていた槍をジェミニの右足に突き刺した。


「……やめろ。」


ジェミニが苦痛の表情を浮かべる。

「裏切り者は処刑せよとのボスの命令です。」もう一体の悪魔、ロークはジェミニに向けた手から放つ炎。左足、右手、左手とじわじわとジェミニを弱らせていく。ジェミニは崩れるようにその場に倒れた。

「やめろ。」


「に、げて。今のあなたたちじゃ、悪魔3体相手に、それもレオがいるの。勝ち目がないから。今は逃げなさい。」ジェミニは掠れた声で囁く。


「シュウ。」

「イグニ。」

俺とイグニは目を合わせて頷いた。

イグニは狐の姿から一本の刀へと形を変える。

「あ?邪魔するつもりか?」

レオがこちらを睨みつけてくる。


「お前ら、ジェミニとは少なくともこの間までは一緒にいた仲間じゃないのかよ。」


「仲間?なんだそれ。悪魔にはそんなもん必要ねぇよ。ボスに従わなければ死を待つのみ。こいつはそれを分かった上で裏切った。こうなるのは当然だろ?」

ジェミニは確かに悪魔だ。けど、こいつらとは違う。少なくとも俺と、イグニはそう思った。


「ジェミニ、ちょっと待ってろ。あとでちゃんと話し聞くから死ぬんじゃねぇぞ。」

3対1?上等。


「おいおい、やめとけよ。外にいたやつらみたいに黒焦げになってもしらねぇぞ。」


「みんなに何をした!紅一閃・炎舞(くれないいっせん・えんぶ)Ⅳ!」絶対にお前は倒す!

一直線にレオの元に突撃する俺の前に2体の悪魔が立ちふさがる。ロークとソーロと呼ばれていた悪魔。おそらくこいつの手下。


「邪魔すんな!紅狐の尻尾(フールナテイル)Ⅲ!」刀を上に向け、紅い尻尾の形の炎を纏った一振りは、2体の悪魔を弾き飛ばした。


「ほぉ。前よりは強くなってるみてぇだな。おもしれぇ、ちょっと遊んでやるか。炎魔獅子Ⅲ。」黒い炎を纏った獅子が現れ、俺たちに向かってくる。


逃げることはない、ただぜんりょくで目の前にいる敵を倒せばいい。

火纏(フーラップ)Ⅲ。火焔破斬・炎舞(フレアスター・えんぶ)。」炎を纏った一撃は黒き獅子を真っ二つに斬り裂いた。


「いいねぇ。それじゃあこいつはどうだ?炎魔獅子Ⅴ!」数が多ければいいってもんじゃない。こんなのさっきと同じ……。


ロークとソーロが態勢を立て直してまたこちらに向かってくる。


「炎魔Ⅲ。」

炎魔槍(フーフェルランツェ)Ⅲ。」

黒い炎と、槍が左右から放たれる。


「数が多すぎるのも問題だな。」


双光爆(ツインブラスト)。」

左右から迫る攻撃を光が相殺した。


この魔法、ジェミニか。

ジェミニの方を見ると、少し離れたところに倒れながらも片手をこちらに向けていた。


「炎狐の尻尾Ⅴ。」5体の黒き獅子をなんとか相殺する。ジェミニの助けがなかったらやばかったな。

「ローク、ソーロ。お前らはジェミニを殺せ。俺はこいつをもらう。」


「了解。」

「かしこまりました。」

まずい。今のジェミニの状態はとても戦えそうにない。


紅翼(アーラ)。」ジェミニの元に飛んで、ロークとソーロの前に出た。


「こいつは殺させない。」集中しろ。分かってるはずだ。今こいつらを倒すにはあれしかない。

(シュウ、今あの魔法を使うのは危険だ。俺は許可できない。)

(けど、あの魔法しかみんなを救う方法がない。)

(んなことわかってる!けど、俺たちまで倒れたら意味がないだろ。)


「紅葉秋翔。それにイグニちゃんも、肩に力を入れすぎよ。あなたの仲間は簡単にやられるほど弱くないって信じてたじゃない。」

ジェミニ。


「大丈夫。私もあなたたちの仲間の強さは十分に分かってるわ。レオを倒せないからと言ってやられたと思わないこと。」その声に応えるように誰かが応える。


「ま、そういう事ね。詩織さんがいなかったらやばかったけど。」

「違うよ!私も真冬さんがいなかったら本当に危なかったんだから。なんとか残った氷壁に私の全魔力で強化したからギリギリ耐えれただけ。」

割れた空間の外から、2人の姿が見えてくる。

詩織、それに真冬。無事だったか。


「春香と美希はどこに?」


「安心しなさい。4学園会議の開かれているビルに向かって、学園長たちの救出に向かって行ってるし、あの子達なら大丈夫よ。」

そうか。ジェミニの言った通りだな。


「まさかお前たちが生きてるとはな。だが、ボロボロのお荷物が二つもくっついて、絶体絶命だな。炎の精霊使い!」

レオは勝ち誇ったように言った。


「絶体絶命はお前たちの方だ。逃げればよかったと後悔させてやるよ。ジェミニ、無理でなければだが、双天世界、張れるか?」


「このぐらいの傷なんとも……ないわよ。それより、双天世界を今張ってしまったら逃げられなくなるわよ。」

これぐらいの傷ね。立っているのですらつらいのは目に見えて分かる。


「逃げるつもりはねぇよ。あいつら全員ぶっ倒す。」

ジェミニは暫く俺の顔をじっと見ていた。

「分かった。あなたを信じるわ、あなたのその目を。双天世界。」

崩れかけていた光の空間は再び元に戻り、俺たちをこの空間に取り込んだ。

「ありがとな、ジェミニ。ゆっくり休んでろ。」


「自分から逃げ場をなくしたな、精霊使い。」


刀を地面に突き刺す。刀は徐々に切っ先紅く染まっていき、それは手まで昇って全身にイグニの炎の魔力が伝わってくるのが分かる。


「「行くぜ相棒!」」魔力が爆発的に膨れ上がる。


「こ、この魔力はなんだ!俺たちデモンシアの12星座の悪魔に匹敵する魔力だと⁉︎」

今の俺たちならこの力をコントロールできる。みんながいてくれるから、守ってやれる。


「俺たちがみんなを、守る!精霊の加護・炎舞(ベラーダ・えんぶ)!」


次回、紅葉秋翔vsデモンシア・獅子座のレオ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ