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精霊剣士の物語〜Sauvenile〜  作者: 伊藤睡蓮
精霊剣士の物語〜Sauvenile〜
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精霊剣士の物語〜Sauvenile〜其の壱

どうも、作者の伊藤睡蓮です。

というわけでついに新章突入ということで気合入りまくりで誤字等あるかもしれませんm(_ _)m

その時は教えていただけると幸いです。

それでは早速どうぞ!

1,〜再び始まる物語〜


ーーー「それではこれから武精(アルファ)学園の第20回始業式を始めたいと思います。」女の先生はそう言うと、深くお辞儀をした。


「学園長からのお言葉を頂戴したいと思います。学園長、よろしくお願いします。」


女の人の横に座っていた1人の女性が立ち上がった。

ゆっくりと歩いて登壇する。


全生徒の前に立ち、明るく微笑んだ。


「みなさん、おはようございます。学園長の時雨吹雪(しぐれふぶき)です。今日はみなさんに2つ、お話ししたい事があります。まずは1つ目、みなさんに紹介したい人がいます。どうぞ出てきてください。」

学園長はステージの左側を見て、手招きした。


幕があるのでまだ誰なのかを確認することはできない。

その場にいる全生徒が学園長の視線の先を見た。


すると、この学園の制服を着た1人の女子が姿を見せた。


学園長の横につくと軽く礼をしていた。そして、生徒の方を向いた。


「1年生は知らないと思いますが、この子、弥生春香(やよいはるか)さんには、約1年の間、東の都市の学園、忠精(ガンマ)学園で学園生活を過ごしていました。まぁ留学のようなものですね。」


春香は生徒たちに向けて、ぺこりと頭を下げた。


「これからはいつも通り、武精学園の2年生として学園生活を過ごすということの報告です。」


「新1年生のみなさん、よろしくお願いします。また、2年生、3年生の方々も改めてよろしくお願いします。」今度は深くお辞儀をした。


体育館は大きな拍手で包まれた。


「はるちゃん帰ってきたんだー。」

「春香先輩、噂は聞いてたけど本当に忠精学園に行ってたんだ。」

「なんでも忠精学園の学園長と住んでたらしいよ。」

「どうして忠精学園に行ってたんだろ?」などと喜びから疑問の声まで様々あった。


「みなさん色々と思うことはあるかもしれませんが、あまり深く追求はしないようにお願いします。」学園長はそう言うと、春香に何か合図を出した。すると春香は頷き、幕の奥へと戻って行った。


「そして2つ目は………。」



学園長は急に話すのをやめた。どちらかというと躊躇したという方が正しい。学園長は深刻な顔をしていた。まるで、これから全生徒に話す事がとても言いたくないという感じだった。


周りがざわつき始めた。


「みなさん、静かに。」司会の先生の淡々とした言葉が、一瞬でざわつきを断ち切った。


司会の先生は学園長とアイコンタクトを取っていた。学園長は頷き、


「2つ目は、みなさん楽しく学園生活を過ごしましょう。と言うことです。大変な事もたくさんあると思いますが、その一つ一つが貴重な経験です。それに、辛い時は周りに仲間がいます。辛い時、悲しい時は思いっきり甘えればいいんです。きっと力になってくれますから。」


お辞儀をして、ステージを降りるのでなく、春香が戻って行った方の幕へと入っていった。


「学園長、ありがとうございました。それでは………。」


ーーー「学園長、お疲れ様でした。」ぺこりと頭を下げた。


「こちらこそ。やっぱり言えなかったわ。副学園長に助けてもらっちゃった。」


「ですね。それにやっぱり夏音先輩の事は私たちだけの秘密にした方がいいと思います。みんなショックを受けて勉強どころじゃなくなるかもしれませんし。」


副学園長、司会をしていた先生のこと。


学園長は頷いた。

「そうね。でも、いつまでも隠してはおけないわ。もしかしたら夏音さんが何も知らない武精学園の生徒を利用する可能性もあるし。」

そこまで考えていたなんて。


「そしてもうひとつ気になることがあるのよね。」


学園長はそう言った。


「あ、学園長もですか。実は私もなんです。」


………、同じ事だとすぐに分かった。


「しゅうとくんがいなかったのよね。」

「しゅう先輩が見当たりませんでした。」


ーーー広い空間の中に、俺はいた。目の前には1人の男が立っている。


「赤城さん……。」

特務部隊所属で俺の父さん、紅葉秋玄(くれはしゅうげん)の上司的な立ち位置の人で、今は俺の特訓のために協力してもらっている。


「構えろ、しゅうとくん。特訓の続きだ。」


そうだ、俺は強くなるんだ。


「イグニ、行くぞ。」持っていた刀に語りかけた。


イグニは俺の精霊で相棒だ。

しかし、返事がない。


赤城さんが向かってくる。

「おい、どうしたイグニ⁉︎イグニ!」


赤城さ胸倉を掴まれた。

「しゅうとくん、しゅうとくん。今日始業式なんだろ。入学式を休んで始業式まで休んでしまったら流石に吹雪学園長に怒られてしまうよ、私が。早く起きたらどうだい?」


始業式……。そうだ!


今日が始業式だという事を思い出し、跳ね起きた。が、自分が寝ていたのがベッドではなくソファだったため、床に落ちてしまった。今の全部夢だったのか。


「ようやく起きたね。おはよう、しゅうとくん。これから私は仕事があるからもう出なくてはいけない。君も早く支度をした方がいい。」


「また取り締まりとかですか?」

制服に着替えながらなんとなく聞いてみた。


「いや、私も詳しいことは聞いていないが特務部隊の部署に来客予定が入っていてね。その方の対応を頼まれたのさ。」


奥で朝食を食べ終え、ネクタイを締めてもう家を出る直前の赤城さんはそう言った。


時計を見るともう既に9時を過ぎていた。


「赤城さん。もっと早く起こしてくださいよ。」慌てながら制服に着替る。


「何度も呼んださ。それでも爆睡していたのは君のせいだ。だから昨日はもっと早く寝るべきだったのに。


赤城さんがリビングの扉を開きかけた時、ふと手を止めこちらをみた。

「そうだった。昨日の夜、飾から連絡があってね。『ようやく納得のいくものが出来ました。』、だとさ。」


飾、飾麻耶(かざりまや)さん。赤城さんと同じく特務部隊に所属し、ガンマ都市で刀職人としても働いている。悪魔との戦いで砕けてしまった俺の刀の代わりに新しく作ってもらうことになった。


「本当ですか!あ、でも取りに行く時間ないな。明日取りに行くか、飾さんに刀を送ってもらうか。」


赤城さんに聞いたわけではなかったが、赤城さんは即答した。


「明日取りに行くのがいいだろう。送ってもらうこともできなくはないが、金をごっそりと持っていかれるぞ。」

赤城さんは汗を少し流していた。


盗られたんですね。………


「あ、明日行きます。」


「それより、始業式はいいのかい?もうかなり時間経ってるけど。始業式は確実に始まってるだろうね。」


「マジですか!?」


急いで荷物をまとめ、狐のストラップを手にした。

「イグニ、紅翼(アーラ)使って学園まで一直線で行くぞ!」


「おいおい、もともと紅翼は長距離用じゃねぇ。魔力をかなり消費するぞ。それに俺には今宿るべき武器がねぇ。この状態のままで魔法を使うから、長時間は無理だからな。」


「分かってる分かってる。」

今はそんなことよりも早く学園につかなくてはいけないという気持ちの方が勝っていた。


玄関に急ぎ、靴を履いた。


「いってらっしゃい。といっても私もすぐに出るのだけどね。」


「赤城さん、1年間お世話になりました。本当にありがとうございました。」深くお辞儀をした。


「イグニ、行くぞ。」

空高く舞い上がり、全速力で武精学園を目指した。


ーーー「しゅう先輩、まだ来てない。連絡した方がいいのかな?」ステージの幕から体育館を覗き込んでいたが、やっぱり3年生が座っている場所にはしゅう先輩の姿はなかった。


流石にちょっと遅すぎる。事故にでもあっていたら大変だよね。学園長は赤城さんに連絡してみると言ってどこかに言ってしまった。


携帯の連絡先を見つめ、やっぱり電話することに決めた。


「別に連絡しなくても大丈夫よ。どうせ寝坊でしょ。」と後ろから聞き覚えのある声がした。


「ま、真冬先輩!どうしてここに⁉︎」


「始業式も暇だったし、あんたがステージ上に急に出てくるから学園長に許可もらって会いに来たのよ。」

時雨真冬(しぐれまふゆ)先輩、吹雪学園長の娘で親子ではあるけれど家にいる時と学園にいる時とでは呼び方を変えている。


「学園長、何か言ってませんでした?」


「言ってたわよ。赤城さんが今さっきこっちに向かったって言ってたらしいわ。」

とりあえず無事だったことに安心した。


「よかった。」


「春香、あなた優しすぎよ。1年経ったんだから少しぐらい厳しく言ってもいいのよ。完全に遅刻だからね、あいつ。万が一私たちも連帯責任で居残りとか言われたらどうするの?」


「その時はその時ですよ。」

真冬は深いため息をつくと、諦めた声で、

「分かったわ。もう何も言わない。その時はその時でいい。それより、雲雀学園長とはどんな特訓をしたの?結構気になってたんだけど。」


雲雀真純(ひばりますみ)学園長、忠精学園の学園長で、私を1年間鍛えてもらった。


「えーっとですね、魔法の持続力を上げることとか、新しい攻撃魔法の習得、戦闘訓練とか色々です。」

正直かなり大変で何度もこころが折れかけたし、途中折れた。特に戦闘訓練は実際に雲雀学園長との戦闘だったのでかなりボコボコにされた。


でも、しゅう先輩、真冬先輩、そして今は離れてるけど夏音先輩のために、私が諦めちゃいけないと思って、頑張れた。


先輩たちのおかげで私は強くなれた。


「真冬先輩はどんな事をしてたんですか?真冬先輩は確か夏音先輩のご両親に特訓してもらってたんですよね?」


「そうよ。まぁ私も似たようなものかしらね。他には魔法の組み合せを考えさせられたわ。私は攻撃パターンが殆ど同じだったから。」

真冬先輩も大変だったんだろうな。もちろんしゅう先輩も。


そんな事を思っていると、学園長が近づいて来た。


「2人とも、始業式ももうすぐ終わっちゃうけど、一応自分たちのクラスのところに行きなさい。閉会式ぐらいは出てほしいからね。それに、しゅうとくんは少しお説教の時間があるからあなたたちが会うのは午後からになるわね。」


しゅう先輩、お気の毒に。


「わ、分かりました。」

そう言って私と真冬先輩はそれぞれのクラスの列へと並んだ。


ーーー「つ、着いたーー。」

魔力がギリギリもってくれて助かった。もうすっからかんだ。けど、大分魔力量が増えた実感はあった。イグニも感じているようだ。


「まさか武精学園に着いちまうとは思わなかったぜ。ギリギリだったけど。」少し自慢げに言うイグニ。


「言っておくが時間的には超アウトだからな。……ほらみろ。」昇降口に教員が1人、仁王立ちしていた。


よりによってあの鬼月(おにづき)先生か。最悪だ。


生活指導担当の先生で、遅刻の生徒にはかなり厳しい。


2人で唾を飲み込み、覚悟を決めた。


「紅葉秋翔だな?」


「は、はい。遅刻してすみませんでした。」ここはもう先に謝っておいた方がいい。


「学園長から話は聞いてる。今回だけは大目に見てやるが、次は気をつけろよ。」

まじか、ラッキーだぜ。吹雪先生ありが……


「と言うとでも思ったかー!いくら学園長の言葉とはいえ遅刻は許さん。今日の放課後、この学園内の全てのトイレ掃除をお前1人でやれ。」


「1人!?じょ、女子トイレは流石に無理ですよ!?」


「甘ったれたことを言うな!いない時を見計らってやれ!」マジかこの先生。下手したら俺捕まるぞ。


「返事は?」

「は、はい!やります。やらせていただきます!」


もうどうにでもなれ。


ーーー急いで体育館に向かった。しかしもう既に始業式は終わり、体育館には誰もいなかった。予定よりも早く終わったらしい。


「間に合わなかったか。」

呼吸を整えながら呟く。


「待ってたわよ。秋翔くん。」

この声は……。

後ろを振り返ると、壁に寄りかかっている女性がこちらを見ていた。


「吹雪先生。」


「さて、長くなるし立ち話もなんだから……学園長室でゆっくり話そうか。」


「あ……いやでも俺達のクラスのみんなが待ってるんじゃ……。」


「他の先生に任せてあります。」


「はい、行きましょう。」


「素直な子は好きよ。」

最悪だ。(part2)


ーーー学園長室に向かう途中で何人か知り合いと会ったが、空気の違いを感じ、誰も話しかけることは無かった。無論俺も話しかけることはできなかった。


学園長室に辿り着き、吹雪先生はいつもどうり自分の席についた。

今回はふかふかのソファに座るわけにはいかない。

大人しく吹雪先生と机を隔てて立っていた。


「まぁ仕方がないのは分かってるんだけどね。甘やかすだけじゃダメだと思うし。それに遅刻が1回だけならまだ私なら大目に見るわ。……何回目?」


指で数える。


指がもっと欲しい。


どこまで数えたか分からなくなる。


「いくら特訓だからと言って別に遅刻していいわけじゃない。それは分かってるわよね?」


「も、もちろんです。」


「夏音さんも大事だけど、あなた自身も大事なんだから、もっとしっかりしなさい。そんなんだと夏音さんに会ったときに怒られちゃうわよ。」額をツンと触られた。


「吹雪先生……はい!」どこか緩んでいた気持ちが引き締まった。


「さて、鬼月先生からトイレ掃除言われたみたいだけど、私からは課題を出そうかな。」


「ちょっ、今なんかいい感じでしたよね?終わる感じでしたよね?」あまりの唐突さに不意をつかれた。


「ふふふっ。冗談よ冗談。その代わりといってはなんだけど頼みがあるの。」


「頼み?」

吹雪先生は頷いた。おそらくこの頼みのために俺をここに呼んだのだろう。


「新入生が入って来たのはもちろん知ってるでしょ。」


「はい。それが何か?まさかその中に夏音に関わる人がいるとか!」


吹雪先生は首を振った。


「そうじゃないわ。でも少し気になる子たちがいてね。」


「子たちって、1人じゃないってことですね?」


「ええ。この子たちよ。」見せられたのは3人の名簿だった。


「えーっと、1組 天津(あまつ) 風音(かざね),薄緑の髪色をしていてショートヘアの女子だ。2組 児玉(こだま) 氷架(ひょうか),こちらは水色のロングヘアの女子。3組の山崎(やまざき) 炎麻(えんま)。赤黒いような髪色の男子。見た目も特に変わったところないですけど、この子たちがどうかしたんですか?」


「その子たち、この学園に推薦で受けに来たんだけど、その時は3人とも精霊はいなかったの。もちろん武器も持っていなかったわ。けど、入学式の日、あの子達はそれぞれバッグやズボンにストラップを提げて来たの。私の精霊アルファにも確認させたけど魔力を感じた。間違いなく精霊よ。約1ヶ月で精霊を宿しているなんて、私にはどうしても不思議で仕方が無いのよ。」


「推薦入試の前の時から少し接触していたんじゃないですか?」

吹雪先生はまた首を振った。


「もちろん私も考えたわよ。けど、家族や周りの友達、その子達の中学校の先生に聞いても誰1人そんな関わりがある子はいなかった。」


「この3人のことをそんなに調べたんですか……。」


けど、そこまでして何も無いということは確かに吹雪先生の言う通り入学式に入る前に精霊と契約をしたということになる。


「まぁあなたたちも短期間で宿したということはあるけどあの3人は他にも何か気になる事があると言うか………。隠してる事がありそうな気がするのよ。」


なるほど、

「それで俺にその3人に接触して探ってもらいたいわけですね。」


「そういう事。私が近づいたら怪しむに決まってるからね。うまくやってくれたら今回の遅刻の件はなしにしてあげる。」吹雪先生はそう言ってウィンクをした。


断る理由がない。それに、俺とイグニ、春香のように短期間で精霊を宿した。春香の場合は精霊が一方的に見ていたらしいけど、そんな感じなのか。それとも俺とイグニのようなのか。一体どんな精霊なのか、どのくらい強いのか。気になることがたくさんある。それを知りたい。

「分かりました。」


「そう言ってくれると思ったわ。さて、そろそろお昼休みの時間ね。そうだ、久しぶりに2人と話してみたら?話したそうだったわよ、あの2人。」クスッと笑った。


あの2人、春香と真冬の事だろう。春香は磨精学園で約1年間学園生活を送っていたので、メール以外では全く話すことがなかった。


真冬は同じ学園内にいたものの、化学の授業の先生が変わってそれぞれのクラスで授業をすることになり、放課後はそれぞれの事情があり、会う機会も自然と減ってしまっていた。


「はい、そうします。吹雪先生、

ありがとうございます、色々と。」

お辞儀をした。


「こちらこそ。そうだ、赤城さんに聞いたわ。あなたたちの刀、出来たらしいじゃない。いつ取りに行くの?」


「明日の放課後に取りに行こうかと思ってますけど、それが何か?」


「なんとなく気になってね。もし今日だったら鬼月先生の罰をサボることになるかなーって思っただけよ。」


「そんな事するわけないじゃないですか。サボったら俺あの先生に殺されますよ。」と肩を落としてため息をつきながら言った。


「それじゃあそろそろ俺は失礼しますね。あいつらにも会いたいし。」


「えぇ。分かったわ。あ、最後にひとつだけ。この件は他の誰にも話しちゃだめよ。もちろん春香さんや真冬にも。あくまでこれは私の推測だけで言ってるだけだから表向きにはしたくないから。」


「はい、分かりました。それじゃあ、失礼します。」扉を閉めた。


「ここからだと春香のいる教室の方が近いな。」春香の教室を目指して歩き始めた。


「なぁ、イグニは吹雪先生の言っていた3人、どう考えてるんだよ。さっきから何にも喋んなかったろ。」

カバンにつけていた狐のストラップ、イグニは

「色々と考えてたんだ。俺がお前と契約したのはお前を信じてたってのもあるしな。俺が言うのもなんだが俺とお前のような契約はかなり珍しい。だからそれが3人もこの学園に、それに同じ学年にいるのはちょっと気になるってのはあるな。」

精霊との契約は普通、お互いが信頼できると認め、それぞれの利益になる内容。利益といってもいくつかある。まぁ幸せと感じれることかな。


信頼を築くのは簡単じゃない。普通短くても1ヶ月は必要だ。精霊はかなり人間に対して警戒心が高い奴が多いからなかなか精霊使いになるっていうのも難しい。


イグニと俺ってやっぱりそう考えるとすごいのか。腕を組み手を顎につけて考えていた。


「おい、しゅう。ここだろ、春香の教室は。」


危うく通り過ぎるところだった。


教室を覗き込むが春香の姿は見えなかった。


教室のドア付近にいた女子に聞いてみることにした。


「すまん、ちょっと聞いていいか?」

「はい、何でしょう?」


「春香ってこのクラスであってるよな。」

「はい、そうですけど……。もしかして秋翔先輩ですか?」

この子は俺を知っていた。


「そうだけど、何で分かった?初めてだよな、会うの。」


「はい、初めてですよ。会うのはですけど。実は“春”に写真見せてもらったことがあるんですよ。」


春、春香の事だろう。なるほど、それで俺の顔を知っていたというわけか。なぜ俺の写真を見せてたんだ?


「あ、春なら今トイレに行ってていませんよ。もう少ししたらくると思うので待っていてはどうでしょう?」


と言われたのでそうすることにした。


「あぁ、そうさせてもらうよ。」


ーーートイレの洗面台の前の鏡で自分を見つめながら、「しゅう先輩に早く会いたいな〜。」と呟いた。


「なになに、もしかして春の彼氏?」と、隣から声が聞こえた。


「ち、ちがうよ!先輩って言ってるでしょ。もう……、美希ったら分かってて言ってるでしょ。」

私をからかったこの子は今井美希。去年から同じクラスの友達。私がしゅう先輩の事を口にするとすぐにこういう聞き方をしてくる

「ごめんごめん。先輩ね先輩。確か武精祭の時におんなじチームだったんだよね。」


「そうだよ。しゅう先輩や夏音先輩がいなかったら今の私は……。」

今の、私は……


「どうしたの春?そんな悲しそうな顔して。らしくないよ。」


「ご、ごめん。ちょっとね。」


「分かった。夏音先輩が急に転校しちゃったのが悲しいんでしょ?そりゃ同じチームで優しい先輩だったから寂しいのは分からなくはないけどさ。前向かないとだめだよ?」


転校……か。夏音先輩の事は一部の人にしか知られていない。混乱を避けるためにも言うことはできない。

でも、転校という点は間違っていたが、夏音先輩のことで悩んでいるのは当たっていた。


「正解、やっぱり美希ってすごいよ。人の心を簡単に読んじゃうんだもん。」


「春って思考ダダ漏れだもんね。」

「ちょっと、それどういう意味!」


顔を膨らませて美希を見た。美希はまたごめんごめんと軽く謝って笑っていた。


「さて、そろそろ教室戻ろ。」

美希はそういうとスタスタと歩いて廊下の方へと向かった。


「あ、待って。私も行くから〜。」

慌ててハンカチで手を拭き、ポケットにしまいながら小走りで追いかけた。


廊下に出た瞬間にトイレに入ろうとしていた誰かにぶつかってしまった。


「いたたたっ。」


「ちょっと春、何やってんのよ。」

美希が私に近寄った。


「う、うん。大丈夫。あの、すみません。大丈夫ですか?」


私とぶつかった人は特に目立った怪我はなかった。薄緑色の髪のショートヘアの女子だった。その子はすぐに立ち上がり、

「こちらこそ、すみませんでした。」と軽くお辞儀をしてトイレに入って行った。


「あの髪の色……。今の子、私知ってるかも。」

と美希は言った。


「え?知り合い?」と聞くと美希は首を振った。


「ちがうけど、ちょっと噂を聞いたことがあってね。1年生の中にちょっと注目されてる子達が3人いるのよ。その3人のうちの1人に特徴がにてるな〜って思ったから。」


「注目されてるって、どうして?」


「さぁ?私はそこまで知らないかな。まぁ試験の成績がめちゃくちゃいいとかそういう系だと思うよ。」


「そ、そうなんだ。」

私は一瞬だったけど、その子と目が合っていた。立ち上がる瞬間の目。


真冬先輩と、似たような目。だけど、真冬先輩とは何かが違う。それでも誰かに似ている……。


わかんない。


ーーー「真冬と俊也、今日はお前らが日直だったな。それじゃあこのノートをまとめて職員室の俺のところまで持って来といてくれ。」

先生はそう言って教室を後にした。

教卓の上に並べられた約40冊ものノート。


「まぁ、これぐらいならまだましね。」場合によってはワークやら他の提出物やらでもっと多くなるときもある。


それに比べたらまだまし。


「俊也くん。半分ずつでいいわよね。」


「別に僕が全部持ってもいいんだけど。」


「いいわよ、そこまでしなくても。日直なんだから2人で運びましょ。」

小田俊也くん。私と同じクラスで秋翔と友達の天才メガネキャラ。前まではクラスの人たちとは一言も話すことはなかったけど、色々あって私はクラスに溶け込むことができた。


「それにしても、秋翔は入学式も始業式も休むなんてな。命知らずだよな、ほんと。」


「そうね。まぁそれがあいつらしいと言ったらあいつらしいんだろうけど。」早く会って話が……って何考えてるのかしら。私があいつと話すことなんて特にないのに。


首をぶんぶんと回して自分の考えていることをかき消した。


「真冬、どうかした?顔がちょっと赤いけど。」


「なんでもない……。は、早く職員室に届けましょ。」


その時、1人の少女と私たちはすれ違った。水色の髪の女子と。その子は私だけに聞こえるような微かな声で、

「退屈。」と呟いた。


「えっ……。」その子に話しかけようと振り返る直前に俊也くんに止められた。


「真冬、職員室はここだぞ。」

「あ、うん。わかってる。」。さっきの言葉の意味を知りたかった。


ーーー暫くすると春香は教室にやって来て、こちらに気づくなりダッシュで近づいて来た。


「しゅう先輩!お久しぶりです!」

「お、おう。久しぶり。どうした、勢いがありすぎてついていけてない。それに、お前の友達もついてこれてないぞ。」


指を指す方にはさっきまで春香と話していた友達が廊下に倒れていた。


「美希、どうしたの?」

「どうしたの?っじゃないわよ!私のこと跳ね飛ばしておいて!」


春香はごめんと何度も誤り、こちらに2人で戻って来た。


「さっきトイレで話してたしゅう先輩。しゅう先輩、こっちが私の親友の今井美希です。」

と隣にいる春香よりも髪が少しだけ長い女の子の方に手を向けた。

「よ、よろしくお願いします。」

「今井さん、よろしくな。」


「学園長とのお話は済んだんですか?」

「あぁ、終わったぜ。だからお前らと久しぶりに集まろうかなと思ってな。」


「そうなんですか。あ、それならこれから美希とお昼ご飯食べるんですけど、真冬先輩もお呼びして一緒に食べませんか?」


「別にいいけど…今井さんに確認とらなくていいのか?」


「わ、私は別に構いませんよ。」

なんだか逆に断りづらくさせてしまったかな?


「それじゃあ学園長に許可もらって屋上で食べましょうよ。一度でいいから屋上でお昼ご飯食べてみたかったんですよ〜。」と目を輝かせながら春香は言った。


屋上は普段は閉鎖されていて、学園長、吹雪先生から許可を得ないと行けないようになっている。


「それじゃあ屋上の許可をもらいに行く人と真冬呼びに行く人で分けた方が早いな。」


「それなら、私と美希で許可もらってきますよ。」

春香は即答した。

そんなに屋上行きたいのか。まぁ吹雪先生なら簡単に許可をもらえるだろう。

「分かった。それじゃあ俺は真冬呼びに行ってくる。」

そうして俺と春香たちは別々の方向に歩いて行った。


ーーー適当に空いている教室を見つけ、その中へと入った。


「風音、氷架。先輩方はどんな感じだった?」


風音は静かに答える。

「あの人が本当に強いとは思えない。悪魔を撃退したのもきっと偶然。」


「退屈。何もかも。」と氷架はそれだけ言った。


「やっぱりそうか。チーム192の先輩方がどんな人たちかなって思ってたけど、あんまりたいしたこと無いのかもね。……絶対、俺たちの方が強い。」


「炎真の発言を肯定。」

「退屈。……戦いたい。」

黙って頷いた。


「これからが楽しみですよ、紅葉 秋翔先輩。」そう言ってニヤリと笑った。

どうも、改めまして作者の伊藤睡蓮です。

新章早々、秋翔を落としに落とした(・ω・)

これから活躍していくので温かい目で見守ってください。


次回もなるべく早めに投稿するで是非見てください( ´ ω ` *)

twitter(suiren110133)でも活動していますので、そちらも是非確認してみてください。

それではまた!

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