はよ言うてぇや
「撃ちます!」
そう叫んでから、私は5〜6の弾丸を放つ。
激しく動き回るピャーチと大姉が確実に射線から離れた瞬間を見極めて狙撃する。定期的に照明弾も撃たなくてはいけないのでなかなか大変だ。
そんな中、キングさんはソロソロと蛇の尻尾付近に、剣先を真っ直ぐに向けたまま忍び寄る。
一歩ニ歩三歩と、一気に加速し、全体重を剣に乗せる。
そのまま蛇に真っ直ぐに付き立てると、剣は蛇の外皮を破り中程まで突き刺さった。
“ギィー!”と叫んだ蛇が、尻尾を大きく振ってキングさんに叩きつける。盾で受け止め、直撃を避けたものの、そのまま十数メートル飛ばされてしまった。
「キングさん大丈夫?!」
[受ける瞬間、自ら飛んだように見えたので恐らく大丈夫でしょう。]
慌てて叫んだ私に先生が言ったように、暗闇の中からガシャガシャガシャとキングさんの音が聞こえてくる。
「凄いやんキングさん!初ダメージやで!!」
「ハイ、上手く行って良かったです。しかしあの剣を抜いて出血させないと効果が半減ですので、もう一度行ってきます」
「いや、剣の回収は私がやろう。キングは予備の剣でドンドン刺していってくれ」
いつの間にか戻ってきた大姉が、走り出したキングさんを引き止めてそう言った。
大姉と二人で刺したほうが良いのではと提案したが、大姉では真似出来ないと言われた。
表皮の微妙な凹凸の、凹の部分を的確に突かないと滑ってしまうらしく、突く動作に慣れない大姉では、いくら力やスピードが優れていても無理なんだそうだ。
キングさんは主要武器が槍なので、突きに関しては一家言有るという。
このメンバーでパーティーを組んでからは、「身を持って盾になることでしか役立てません」と、若干気後れしていたので、攻撃で成果を出せてとても嬉しそうだ。
「トーコは頭部に攻撃を集中させて注意を引いてくれ。キング、頼りにしてるよ。」
「はっ!」
キングさんがピシャリと背筋を伸ばして敬礼する。
戦う人達にとって、大姉は雲の上の存在らしい。そんな人に頼ると言われたキングさんは、今にも感動で泣き出しそうだった。
私を神様の使者だと言った時でさえ、ここまで感動していない様に思える。
、、、、、、、、だからどうしたって訳でもないけどね、、、、。
「ピャーチ、一度休憩しにおいで!」
私は武器をタボールからミニミに持ち替えてそう叫ぶ。
“パパン、パパン、パパン”と、1秒に2発程のペースで弾を撃ち蛇の注意を引き付ける。
表皮を滑っていても、ペチペチと顔に弾が当たる感覚が鬱陶しいらしく、蛇は鎌首を持ち上げて”シャー”と威嚇する。
その瞬間、蛇の口が大きく開いたので、そこに撃てるだけの銃弾を撃ち込んでいく。
“ギイー”と叫んだ蛇がたまらず口を閉じると、またパパンパパンとリズム良く目を狙う。
この蛇、体の動きは機敏だが、移動は得意では無いらしく、ズリズリとにじり寄る事しかしない。
そうこうしているうちに忍び寄った大姉が、刺さった剣に鉄扇を打ち付けると、内側から表皮を切り裂き、剣が回転しながら抜け落ちる。
「叫んだらあかんよ?」
蛇が痛みに叫ぶと、開いた口にまた銃弾を撃ち込んでいく。
そんな事を4回ほど繰り返したら、蛇はとぐろを巻いて、動かなくなった。
チロチロと舌先だけを忙しなく出し入れしながら、ジッとこっちを見つめてる。
剣を刺そうとキングさんがにじり寄るも、口を閉じたまま水鉄砲の様に毒液を飛ばしてくるので近寄れない。
気化した毒液がすつがり蛇を覆ってしまい、戦いが膠着してしまった。
“パパパン、パパパン”と、武器をタボールに持ち替えて執拗に目を狙い続けるが、効果が見られない。
「先生、たまに目に当たってる気がするんやけど、弾かれてへん?」
[瞬膜ですね、異物が近付くと瞬間的に目を守るのです。もしかしたらと思いましたが中々の強度があるようですね]
「へぇ、こっちの蛇には瞼があるんか」
[いえ、瞼が有る種も居ますが、あの蛇に瞼は有りません]
「え?でも、、、、、、」
[瞬膜です。]
「だから、まぶ、、、、、]
[瞼は有りません。瞬膜です。]
「、、、、あの瞬膜なんとかならんの、、、?」
[あの状態なら、これが使えるでしょう。]
そう言って先生が指示した武器を新たに取り出す。
キラキラと輝く光の中から、無骨な箱に銃身が付いただけの様な物体が出てきた。
「おんも!何これ!!」
現れた物体の予想外の重さに一瞬ふらつくも、腰を落としてなんとか耐えた。
[ブローニングM2重機関銃です
「です。やのうて、こんな重い撃たれへんで。持つだけで精一杯や」
両手で抱きかかえ、ガニ股に足を開いて小刻みに震える様はあまり人に見られたくない。
[当たり前です、手に持って運用する武器ではありません。下に付いてる三脚を展開して設置してください]
「、、、、、、、はよ言うてぇや、、、、」




