準備
翌日から、カラミク攻略に向けた準備を始める。
キャバさんには当然のように反対されたが、大小姉や先生、更にはシズちゃんまでもが援護してくれて、なんとか承諾を得た。
「トーコ様、お戻りになられた時にこの国が我が姫のものと成っていても責任は取れませんよ?」
キャバさんが折れたのを見て、チャルさんが突き刺すような視線で私に問いかける。
「チャルさんごめん、、、、、私にとってそれは願ってもないことやわ、、、、」
真顔でそう答えた私を見て、チャルさんは深い溜息と共に頭を抱えた。
会議室に集まり今後の動きを擦り合わせる。
私の代理をキャバさんに、大姉の代理をチャルさんにお願いし、数日かけて引き継ぎを終えた。
ガミーネ教ミラメガブ派も、私の影響を受け多くの信者が教派を乗り換えるべく殺到していて、かなり忙しいらしく実に申し訳ない、、、、。
「そう思うなら、一日も早くお戻りください」
そう言ったチャルさんの顔はゲンナリしてる。
「カラミクへ出発するのはは90日後にするよ」
そんなチャルさんを置いて大姉が言う。
「え?慌てて引き継いだからすぐ行く思ってたのに、そんなゆっくりでいいの?」
「ゆっくりじゃないよ、、、、トーコは遠距離攻撃が出来るから兎も角として。キングのレベルではまだまだ心もとないからね、この三ヶ月でみっちりと鍛えるよ。」
「はっ!よろしくおねがいします!!」
大姉の言葉に背筋を伸ばして立ち上がるキングさん。
「そっかぁ、キングさんでも十分強いと思ってたんやけどなぁ、、、、。大姉、その間に私金策に走り回っても良いかな?」
聞こえは悪いが、私の生命線は現金だ。現金さえあれば強力な武器がどんどん買える。
「何を寝ぼけたこと言ってるんだ、トーコも当然鍛えるんだよ」
「え?!」
「え?じゃないよ、前回みたいにつきっきりで守ることは出来ないんだよ?キングのレベルで不安なのにトーコを鍛えないはずがないだろ??」
そういう大姉はひどく呆れてる、、、、、、、多分今まで見たことがないくらいに。
「あ、、、、うん、、、ごめんなさい、、、、」
正直なところ、大姉よりも強くなったピャーチがいるので余裕のつもりだった、、、、考えてみれば弓矢一つ避けるのに必死な私が、弓矢より早く動く魔物と戦わなくてはいけないのだ。
以前のように逸れてしまう可能性を考えたら、、、、、恥ずかしい、、、、、。
「とはいえ、金策が必要なのも確かだね。そっちも並行して出来るように考えるよ、、、、、。」
「資金の事ならある程度、国庫から援助しますわ」
間をおかずキャバさんがそんな事を言う
「いや、流石に税金使うのはアカンやろ?!」
王になったとはいえ、私用に税金を当てるのは流石にできない。腐敗を一新したのに意味がなくなってしまう。
「トーコ様が言い訳に使われたように、今回のダンジョンへの挑戦はこの国の土地問題の解消も担っていますわ。国家事業として問題なく予算を通すことが出来ましたわ」
そんなキャバさんの言葉を聞いて驚いた、わずか数日の引き継ぎの合間に、この事を見越して既に議会を通して予算を確保してくれていたようだ。ほんと、キャバさんが王様すればいいのにとつくづく思う。
とはいえ、キャバさん、、、、、言い訳って、、、、、、、、。
当たってるだけに何も言えない、、、、、、、、、、、、、、。
それから三ヶ月、文字通り血反吐を吐きながら訓練に明け暮れた。
比べてみれば、地獄だと思ってたレンジャー訓練も生温い。最もゲスト扱いだったあの時はいろいろ融通して貰っていたので比べる事もおこがましいが。
大姉は私とキングさんを散々鍛えたあと、先生と共にエジメイ草を始めとする希少な薬草や鉱石を採取して金策をしてくれた。
その結果、国からの支援金を合わせると、型落ちの戦車一台買える様な額になった。
「先生これ、、、、戦車買ったら、もう、無敵ちゃうん?」
昔見た、戦国時代に戦車が紛れ込んだ映画を思い出す。あの映画では確か弾や燃料の都合で性能を活かせていなかったが、今の私にそれは当てはまらない。
兵器に興味があるわけではないが、ちょっとワクワクしてしまう。
[弓や剣を相手にするのであれば効果はありますが、この世界には魔法があります。使い手によっては近代兵器とは比べ物にならない威力の魔法があることは実証されているので、優位性は皆無でしょう。さらに言えば戦車は通常3~5人で運用します。トーコ一人で乗れるものではありません]
「あ、、、はい、、、。」
軽い冗談のつもりが思いの外本気で返された。なんとも言えない空気が流れ、武器の購入は先生に一任する事にした。
カラミクへの出発を明後日に控え、私は小姉と共に食料などの消耗品を買い集めている。
基本的な食料は、その都度私がアプリで購入する予定だが、不測の事態に備えて普通の食料も持っていく。他にも着替えなどについてもアプリで買ったの物の方が高性能だが、如何せん私の側から長い時間離れると消えてしまうため普通のものが必要だ。
逸れた上に下着も無くなるとか、目も当てれない。




