可能性と決意
小姉の声に大姉とピャーチも模擬戦を終え戻ってくる。
「ふぅ、何時だったか先生が私の事をバルザヤの成体とも戦えるって行ってくれたそうだけど、 駄目だね。今のピャーチで精一杯だよ」
私と1時間近く戦って息一つ乱れなかった大姉が、ピャーチと15分ほど戦っただけで全身汗だくになっていて、逆にピャーチは疲れた様子も無く褒めて褒めてと尻尾を振りながら私に擦り寄ってくる。
「凄いねピャーチ」
そう言ってピャーチの顔を撫で回してやりながら小姉に話しかける。
「それで小姉。分かったって事は一段落ついたん?」
「そうなのよトーコちゃん。聞いてくれる!、、、、、、」
「待った小姉!続きは馬車の中で聞くよ、今はとりあえず帰ろ」
興奮する小姉を抑え帰宅を促す、日はすっかり落ち空の端に僅かに明るさを残すだけだった。
早々馬車に乗り込み、向かい合う小姉に問いかける。
「で?分かったって何が分かったん?」
[順を追って話すため、まずは私から説明しましょう。]
小姉から返された先生が、私の膝の上で話し出す。
「うん、でもそれやったら大姉に聞こえへんし出来たら小姉が説明してくれたほうが良いかな?」
先生の声は私にだけはリンクせずに届く、とはいえそれは先生が私に話しかけると意識した言葉だけで、私以外にリンクすればその相手に声は届くが、その声は私に届かないし、私に届けようと意識した声はリンク相手に届かない。
先生を交えた複数の会話は非常に面倒な仕様だ。
「いや、トーコ私にも聞こえてるぞ?」
横に座る大姉が言う。
「私も聞こえてるよ」
前に座る小姉も手を振ってそう答える。
「あの、、トーコ様、私にも先生の声が聞こえました」
小姉の横に座るシズちゃんが小さく手を上げてそういった。
「え?どうなってんの??」
小姉以外の三人が、揃って先生を見つめて答えを待つ。
[ドクガ国との抗争が終わった際に私のアップデートが施され、新規アプリの開発が可能になりました。この音声はそのアプリを通して発信しているため誰にでも聞こえるようになっています。、、、、、、、、]
そんな説明から始められた先生の話を一言で言うと、小姉が新たに作ろうとしている魔法の開発を二人で勧めていたらしい。
「馬鹿げた話だと笑われるかもしれないけど、女神様とね交信するための魔法を作ろうとしていたの」
小姉は照れ笑いを浮かべながらもそう言うが、その目の奥には強い意思が宿って見える。
小姉の立てた理論に先生の全知を使い裏付けしていく、全知のアーカイブ化はまだまだ途中でその情報を引き出すのにも時間を要したが、先程それらの作業が終わったそうだ。
具体的には先生を使って魔法を行使する。
女神様のいる次元に声を飛ばすには、1音毎に膨大な計算が必要になり、小姉でも1音飛ばすのに2時間程掛かる。更に女神様の居る次元もはっきりしていない為、無数の次元に言葉を飛ばす必要があり、使えたものでは無かった。
そこで先生が開発したアプリで全ての計算を代行するも、リンク機能では計算結果も魔素も共有されず、魔法は発動しなかった為、魔素を共有出来るアプリを開発していたそうだ。
「それでね、二人にお願いがあるの、、、、、カラミクのダンジョンに一緒に行ってくれない?」
神妙な面持ちの小姉は真っ直ぐに私達を見つめて問いかける。
カラミクのダンジョンとは、皆と初めて出会った私がこの世界に飛ばされた場所だ。
魔素を共有するためには、とある遺物を使う必要があるらしく、それがカラミクに埋没しているらしい。
「そこにあるのは確かなのかい?」
腕を組み目を瞑ったまま大姉が問う。
[この世界の神にもらった全知の情報です。カラミクの地下18階、そこにウェルシュ様が求める物が存在します]
「18階だって、、、、それに、、、、、」
何かを言いかけた大姉が言葉に詰まる。
「分かってる。グローブもベンも居ない今、それがどんなに困難か、、、、、、それに女神様に頼んだ所で二人を生き返らせてもらえるとも思ってない。でも、少しでも可能性があるのなら、、、、、、、私はすがりたいの、、、、、、、、」
そういう小姉の顔に戸惑いはない、何を言ったところで一人でも実行するだろう。
「わかった。手伝うよ、その顔じゃぁ止めたところで一人でも行くんだろ?そんな無茶された方がたまらないよ」
大姉は目を開けて呆れたように小姉を見つめる。
「よし!それじゃぁ決定やね!。出発はいつ頃にする?」
私はパンと手を叩きまとめに入る。
「トーコ、無理に付き合わなくていいんだよ?」
大姉は何故か驚き目を見開いている
「え?大姉、私のこと仲間はずれにすんの?」
「そういうことじゃなくて、トーコは王女なんだぞ?」
「いやぁ、大丈夫やろ。もともと私飾りやし」
自分で言ってて情けないとは思うが事実だから仕方がない、頭を掻いて照れ隠す。
「それにほら、ダンジョンを開放する必要性は国の名前が変わっても変わりないんでしょ?」
[そうですね、トーコを王としてから人工の流入が増え土地問題は更に深刻化しています]
先生ナイスアシストだ。
そうなのだ、女神様の使徒として祭り上げられた私の話は尾ヒレが付きまくり、もはやキメラのように成っている。一部では現人神にまで発展してしまい、その加護にあやかりたいと隣国から人が集まってきているらしい。
「でしょ。それやったら、その問題を王女自ら解決に尽力するって感じでかっこいいやん?」
「トーコ様が行かれるのでしたら私も同行します!!」
突如、キングさんが御者席の窓から顔を出して声を張り上げた。
その音量と必死さに、皆が一瞬あっけにとられる。
「プッ」
誰かが小さく吹き出した。
それをきっかけに笑いが皆に伝染していく。
「キング様、女性の会話に聞き耳を立てるのはどうかと思いますよ」
クスクスと笑いながら発せられたシズちゃんのツッコミに、一段と大きな笑いが馬車を包んだ。




