こぼれ出た
折角手に入れた3日の休みの内、2日の謹慎が言い渡された。
怒り狂う大姉とキャバさんに、当初は3日間全て謹慎と言われたが、シズちゃんのフォローによって一日免除された。
「また爆発するといけませんから、、、、、、」
一回り以上年下の子から向けられる哀れむような視線に思うところはあるが、
シズちゃんマジありがとう、アイシテマス。
自室のベットでピャーチと戯れる、扉には外から鍵がかけられて、窓には急遽格子がはめられた。
ここまでするか、、、、、、
謹慎を超えた監禁を受けるが、今は全てが薮蛇に成りそうなので我慢する。
流されるように戴冠式を受け、その後は考える間もなく事務仕事に追われていた。
それらが終わった今、ようやく実感が沸いてくる。
キャバさんにはガミーネ教 ミラメガブ派の最高司祭としてこの国に残ってもらえる事になった。
彼女達が望んでいたのは旧グンリテスン聖王国を復興する事だが、大亡命により住む人を失ったグンリテスン聖王国一帯は完全に荒廃していた。直すには脆く、壊すには硬い建築物が復興を妨げる。
「国を持って教義を広めるよりも、教義を持って国を広げるほうが良いのかも知れませんわ」
そう呟くキャバさんに
「そうですねぇ」
と返す
(で、先生どういう意味???)
[、、、、、例えばこの国の国民が100%ミラメガブ派に属した場合、トーコとキャバリア様のどちらの言う事を聞いてくれると思いますか?それが世界中に広がったら?]
背中がゾクッとした、可愛い顔して恐ろしい事考える人や、、、、
言われてみれば一個の国を復興するだけのお金と労力を布教に回せば、結果として変わらないのかもしれない。
宗教は精神的な拠り所に成り立ってるんだから聖地を復興する必要意味は余り無い、例えそこが更地でも、聖地として保護されていれば成り立つだろう。
一国の統治者としては見過ごしちゃ駄目なんだろうけど、正直私には関係ない。
私が死ぬまでに成されるとは思えないし、成されたとしてもキャバさん相手なら大歓迎だ。
王の選任は100%議会に預けてある、今の事だけで一杯一杯の私に未来のことまで考える余裕は無いんだ、キャバさんが近くに居てくれると事が何より頼もしい。
チャルさん相変わらずそんなキャバさんを脇で支えてる。
「グンリテスンの残党では無くなって色々と楽に成るかと思いましたがそうでも無かったですね」
そんな事をいいながらもどこか晴れたような笑顔が清々しい。
生まれる前から続く闘争に決着が付いたのがやっぱり嬉しいんだろう。グンリテスンの残党では無くなってという言葉に私には想像もできない重みを感じた。
スパさんとペルーさんはエドラドを纏めるべく帰っていった。
「もう隠れ家なんて必要ないんちゃうん?」
帰る準備をするスパさんにそんなことを聞いてみた。
「来るべき日に備え牙は研ぎ続けなく手はいけません」
「いや、うちにも一応軍隊置くつもりやで?」
「それとこれは別問題なのです」
要するに、ミラメガブ派独自の兵力を維持していきたいんだろう。
おぼろげな世界史を思い起こして少々不安がよぎるが、、、、まぁ、やっぱりそれはその時だ。
「姫様は勿論、命をお救い頂いたトーコ様にも多大なる恩が御座います、今後は御二方の影の目として恩を返して行こうと思います」
去り際にペルーさんがそう伝えに来た、始めてみるペルーさんの素顔に驚愕する。
この世界に来てから出合った男性は、幸運な事に皆整った顔立ちだ。
勿論筋肉量や肌の色なんかで好みは其々分かれるだろうが、それでもその垣根を超えて男前だと断言できる。
しかしペルーさんは次元が違った、好みとかジャンルとか関係ない。男前とか美形とかそんな言葉も陳腐すぎて当てはまらない、筋肉至上主義の私だが、この顔なら、、、、、うん、華奢でも許せる。
定期的にエドラドを視察出来るようお願いしよう、、、、、。
キングさんは本人たっての希望で、私の護衛を引き続きしてくれている。
それならばと、近衛と言うんだろうか?王の護衛を目的とした組織の長に任命されていた。
お陰で雑務に追われ、長い事顔を見ていない。
近衛ともなれば特に人選に時間がかかるため、未だ忙しいようだ。
「長なんて誰でもいい、トーコ様の元に行かせろ!」
そんな叫び声が毎日のように場内に響いているようで、たまには労いに行こうと思う。
シズちゃんもキングさんと同じように正式に私の所に残ってくれる事になった、秘書みたいな感じだろうか?少々手厳しく、結構怖いが、歳を感じさせない仕事ぶりは現役の役人達をも唸らせているようで頼もしい。
小姉は今は隊長とすごした家に帰り一人で暮らしている。
大姉が二人で旅に出ないかと誘った様だが、今はゆっくり考えたいと言う事らしい。
隊長の亡骸は見つけることが出来なかった、正確には、焼かれ無数の亡骸と共に穴にうち捨てられていて判別することが出来なかった。
家には僅かな遺品が埋められただけの墓標が立てられた。
大姉は、そんな小姉を見守る間だけと前置いて運営に手を貸してくれた。
「国もウェルシュも落ち着いたら、どこかのんびりと三人で探索にでも行きたいねぇ」
そんなふうに語りかけてくれた大姉の言葉に、思わず涙がこぼれ出た。
私も望んでいたけれど、とても言い出せる言葉じゃなかった。
皆、口では私のせいじゃないと言ってくれるけど、きっと何所かで怨まれてると思ってた。
小姉とキャバさんにはずっと許されないと思うけど、大姉だけには許されたのだろうか、、、?
そんな風に思えて号泣してしまった。




