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こんなはずじゃ

天井高く輝くシャンデリア、煌びやかな調度品、豪華絢爛なその部屋は王城の客室だろうか。

その部屋のリビングで、巨大なクリスタルを削り出して作られた芸術的なテーブルに突っ伏して震える私がいる。


この世界の約8割が信仰しているガミーネ教、派閥こそ多く存在するが崇める女神様は共通で、その使途である私だから国民の反発も無く国変えが出来るだろうという。

(何度も言うけど私は使途じゃありません。)


多くのバルザヤを使役する私なら、如何なる国も強くは出られない。

国防の観点からも私が適任だと力説される。

(ピャーチ以外のバルザヤとは今回なんで助けてくれたのか解らない程度の関係です、次の保障なんてありません。)


私ほどの無欲なら、身勝手に国を傾ける事もないだろうと、謎の信頼を寄せられる。

(私だって権力持ったらどう変わるか解りませんよ。)


それは誰だって同じです。

(、、、、、、、、、、、、、、、)


小姉の意見も聞かなくてはと提案し時間を稼ごうと目論むも、丁度起きて来た小姉にあっさりと裏切られる。


「トーコちゃんなら大丈夫よ」

(何が大丈夫なのか解らない、、、、、)


市民の気持ちも尊重しなければと提案する、普通に考えて、見も知らぬ小娘が次の王とか言われても困惑するだろう。


「女神様の使途であらせられるトーコ様が収めてくださるのなら、それ以上の安心はございません」

敵の根回しは既に万全、、、、。




数日後、シャンク共和国から役人達が到着する。

最後の頼みと彼らにも説得を試みるが、むげもない、、、、、

因みに、ドクガ国を運営していた役人達は皆一様に貴族位にある者で、あの王から察するように探られれば痛い腹ばかりだったようだ。

雲行きが怪しくなると途端逃げ出し居なくなった。

勿論善良な者も其れなりには居たので、全ての運営者が居なくなったわけじゃないけどもそれだけでは到底人手が足らず、共和国の役人の助けを借りる形でここに来てくれている。



思えば市民の代表も、其々独自の地位を築いてきた人々で、姫様やってるキャバさんは勿論、共和国の役人の人達も、政治や交渉という言葉を武器に戦う場に身を置く人々だ。

山の事しか考えずに生きてきた私が口論でかなうはずも無く、、、、、

ってか、何で皆の意見が一致しているのか全く解らない。

山に篭って嬉々として暮らしていた私に国を収めさせるとか、その発想がわからない。


[国の代表に精神的拠り所があると、国民意識を国に向ける事が非常に容易になります。更にこの世界では、複数の神が対立し合うといった形が顕著でないため、唯一神と深い関りを持つトーコは非常に都合がいいと言えるでしょう。

大丈夫です、誰もトーコに統治の才能を求めては居ません、国家の象徴としてそこに名を貸せば良いだけです。]

そんな先生の言葉に諦めが付いた、どちらにしろ諦めるしか道が残されていなかったが、、、そしてまぁ、マスコットで良いなら何とかなるかと、少し前向きに思えた。

でも先生、我侭だけど少し傷ついたよ?







無数の歓声が響き渡る、スポンサーに頼まれて何度か講演会など開いた事はあるがこれほどの人の前に立つのは始めてだ。

とは言え、不思議と緊張などは無い。

王城のバルコニーから視界一面に広がる人々を見下ろす。


(見ろ! 人がゴミの、、、、、、、)

そんな事を言うつもりは無いが、多すぎる人の群は全く違う何かの様で、緊張とは 無縁の景色に見えた。


贅の限りを尽くされたような豪華なヒールとドレスを身にまといバルコニーから手を振る、「何か一言」とか言われていたら流石に穏やかでなかっただろうが、黙って手を振るだけのお仕事ならば簡単だ。

むしろ王冠を落とさない様に歩くのがかなり気を使う、モデルの仕事で培ったウォーキング技術が意外なところで役立った。


結局のところ、反論しても言いくるめられ、代案を出してもその無駄を指摘され、いつの間にか私自身、(私がせなしゃないやん。)なんて思えてしまうほどに洗脳され、新興国ホーディン王国の初代女王となってしまった。

ホーディンとはガミーネ教が信仰する女神様の名前だそうで、そんな名前を勝手に使って良いのかと聞いたが、トーコ様が居るなら大丈夫ですと、謎のお墨付きをもらう。


「女神様とあったのは事実やけど、マジで顔見知り程度やからね?」

と念を押す。

女神様の怒りを買って天罰食らっても責任取れない。



最終的に先生の言葉に後押しされ、首を縦に振ったんだけど、蓋を開けて見れば話が違う。

シャンク共和国の政治制度は国民代表による議会制で、私にも馴染のある議員内閣的な制度に思えた。

ドクガ国の政治制度は意外にも、貴族限定だが二つの議会と王が其々一票を持つ独裁を許さない形が取られていた。

王国を名乗る国が大半を占めるこの世界だからこそ、もっと王の独裁色が強いのかと思っていたが意外だった。


まぁ、そんな話を聞いていたので、今後の国家運営方針を決めるという会議に参加を求められたが、丁重に辞退させていただいた。

先生の話からすると当然、共和国の制度を元に作られるだろうし、私が政治の話に混じっても知恵熱がでるだけだから。


三日ほどして宛がわれた部屋でピャーチと遊んでいると、草案が持ち込まれた。

私のサインで本採用と成るらしい、どうせ解らないと、ろくに読まずにサインしようとしたら先生に怒られた。


[解らなくても一通り目を通してください、相手に対して失礼すぎます」

ハイ、ごもっともです、、、、、。



元々知らない専門用語、更にこっちの世界の言葉で書かれたそれは、想像以上に理解できない。

それでもなんとか知った言葉を繋いでいく。


「、、、、、、、なんかこれ私の権限強すぎません?」


「勿論です、トーコ様のお国ですから」

目を輝かせて応える役人の人、、、、、

形の上には一応議会がおかれてる。二つの議会にそれぞれ1表、私に10表。

議会の意味合い全く無い。


「これ、完全に独裁ですよね?賢帝相手なら良いかも知れませんが、何度も言いますけど、あきませんよ?私素人ですよ?」


「ご安心ください、女神様の加護をお持ちのトーコ様に従えば、間違いなく素晴らしい世になると国民一同安心しております」

輝く目をいっそう輝かせて見当違いな回答が帰ってくる。


これはあかん、、、、、


(先生話が違うやんか、、、、、、)


[おかしいですね、全うな政治家ならこの様な愚作は選択しないと思ったのですが、、、、私の想像以上に宗教的依存度が根強いようですね、、、、、]


(否定はできひんけど、さらっと酷いよね、先生、、、、それに 根強いようですね で済まされても困るんよ?)


[仕方がありません、一度キャバリア様にご相談しましょう]


(他人任せかい!)




「キャバさん助けてーーーーーーーーーーー」


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