でっかいボルゾイ
王都を一望する丘の上で、「何処に捕らえられているか解るか?」とピャーチを咥えていたバルザヤが尋ねる。
その会話の中で、捕らえられた家族が人間だと聞かされたバルザヤ達があわや帰ってしまいそうになるが、先生の補足説明のおかげで何とか理解を得たらしい。
幼くして親と死に別れたピャーチのバルザヤ語はかなり拙い事が発覚した。
[その後は瞬く間に場内をほぼ制圧しトーコを救出しました、今は合流したグンリテスンの方達と共に残る抵抗勢力を無力化してもらっています。 あ、丁度戻って来たようですね。]
画面の中の先生が、皆の後ろ、謁見室の入り口を指差す。
同時にゆっくりと扉が開く。
「でっ!でっかいボルゾイやぁ!!!」
扉の向こうから真っ白なバルザヤが姿を見せた。
5頭のバルザヤがゆったりと謁見室に入ってくる、シャンデリアの光がキラキラと白いバルザヤの毛に反射し寧ろ神々しい。
チャンピオン犬ですら、みすぼらしく見えそうな神々しいまでの毛並みに目が釘付けになる。
どんなトリートメントを使っているのか教えてほしい、、、、、。
「ちょっ!トーコちゃん!!!!!」
誰かが慌てて呼ぶ声が、空耳のように遠くで聞こえる。
気が付けば走り出し、先頭に立つバルザヤの顔に抱きついていた。
バルザヤの眉間に顔を擦り付ける、細く絹の様な毛が心地よい。
その心地よさは顔だけに留まらず、全身を包み込む、無数の絹糸が私の身体を優しく撫でる。
「ひゃんっ」
へその下辺りに冷たい物が触れ変な声がでた、何かと思って身体を離すと丁度バルザヤの鼻があった、それと同時に私の身体を隠す物がなかった。
ギギギギギと、ぎこちなく首だけで後ろを見る、男性陣の背中と毛布を手にして呆れたように笑う女性陣の姿が見えた。
えへへへへ と、バルザヤにしがみついたままぎこちなく笑う、キャバさんが毛布を肩にかけてくれる。
「てか、先生私の服早く出してよ」
皮袋の存在を思い出し、服を出さない先生が悪いと言わんばかりにすねた口調で言う。
[無理です、どうしてもと言うならこれしかありません]
取り出された服はいつの日かゼリーと死闘してズタボロになった奴だ。
「なんでやな!もっと一杯有るやん!クスブ村でも3着位買ったで!!」
[忘れているようですが、アプリで購入した物はトーコの側を24時間離れれば消え去ります。]
「何でやさ、革袋の中は時間止まってるんちゃうの?」
[革袋は確かに優れた技術で作られていますが、所詮この世界の技術です、
それに対してアプリ関連は神の技術、神のルールが破られる事はありません。]
「うぅ〜わぁ、、、、、もしかして全部消えたん、、、、、?」
[この世界に来た時に持っていたもの以外は全て消えました]
「バイクも、、、?」
[はい。]
「元の世界では生産中止になってて手に入らなかったあのギアも?」
[はい。]
「まだ一回も使ってへんねんで?」
[消えました。]
「、、、、、、、、、、、、せや!寝間着用のジャージがあるやん!!」
[エドラドのトーコの部屋で干されてます。]
「、、、、、、、、、」
周囲を見回すと皆が不思議そうな顔で見つめてる
「すいません、誰か魔細胞持ってる方居られませんか、、、、、」
「なんだか解らないけど、魔細胞所持者は先生の指示で今探してる所よ」
クスクスと笑いながら小姉が言う。
そういえば先生の声は皆には聞こえないのだった。
リンクして意思疎通が可能なピャーチの話すバルザヤ語を翻訳する形で伝えてくれたそうだ。
先生とピャーチにはキャバさんを探してくれと頼んだが、小姉と大姉は過去のやり取りから翻訳アプリの使い方を知っているからこそ可能なコミュニケーション方法だった、大姉と会えなかったら先生とキャバさんが会話することは不可能だった。
奇跡的な偶然に感謝せざるを得ない、、、、。
そして、既に魔細胞所持者の捜索を頼んでくれていた先生、、、、、さっきは生意気言ってごめんなさい、、、、、、、、。
(ってか、翻訳アプリに先生の意思で文字打ち込む事くらい出来ないの?!)
謝りながらもしつこく食い下がる
[そのような使い方は翻訳アプリに想定されていないので不可能です]
(改造し、、、、)
[不可能です]
(せや!オーケーゴーゴロ って奴やったら先生の言葉打てるやん!!!!)
勝ち誇り胸を張る
[可能ですが全て日本語です]
(てか、翻訳とアシスタント統合してへんかった?)
[よく覚えてますね!]
珍しく先生が驚愕した
[その件に関しては申し訳ありませんが、統合したように見せていたのが正解です。]
(何?嘘ついてたん???)
[当時は私の声がトーコにしか聞こえないという仕様を理解していませんでしたので、予防の為にその様に処置しました]
確かに、アプリも介さずベラベラ話すスマホ、、、元の世界でも異常やわ、翻訳中でもツッコミが入れられる様に気を利かせてくれたんだろう、、、、、ぎゃふんだよ、こんちくしょう、、、、
そんなやり取りをしているとグンリテスンの人達が魔法使いらしき男性を連行して来てくれた。




