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ピャーチ走る

「ひとまずトーコちゃん前隠そうか」

胡座をかいて座り込む私に小姉が近づき布を持ち上げる


「ひゃぁぁ!」

誰ががかけてくれたであろう布は起き上がった勢いで脚の上に落ちていた、その布が辛うじて下半身を隠していてくれたのが救いか、、、


「みた、、、、?」

背中を向ける男性陣が一斉に首を振る


ハァ、、、、、

もっとも何日も食事を取っていない私の体はガリガリに痩せ細り、肋も浮き出ている。

元々豊かな方ではなかった胸は見る影も無い。

痩せ細った惨めな姿を見られて恥ずかしい。

どうせなら万全の身体の時に見てほしかった、、、、いや、それもないわ、、、、

我が事ながら乙女は邪魔くさい生き物だ。




布を纏い辺りを見回す、見覚えのある景色、

城の謁見の間に見える


「えっと要するに助かったんよね?何がどうなったん??キャバさんとかなんでいるん???」

ピャーチの胴に巻かれたポシェットから先生を取り出して床に置き、問いただす。


[えっとですね、、、、]

先生が事のあらましを説明してくれる。




私と別れた後、ピャーチは立ち塞がる敵兵を苦にもせず、攻撃をかいくぐりながら瞬く間に王都から脱出したらしい。

外に出ると太陽は真上に昇っていた。

私が言ったとおり、キャバさんを探す為に国境を目指す、距離にして300km。

ピャーチは休まず走り続け日が沈む直前に国境に辿り着いた。


戦線はドクガ国がシャンク共和国側に入り込んでいた、とはいえ、国境は前線基地の役割を果たしている様に見え、それ程深くまで押し込んでは無さそうだった。

後発のキャバさん達がこの国境を突破しシャンク共和国側に侵入出来たとは考え難い、参戦しているなら挟撃する形を選んでいる筈だが、国境の兵を見る限りその様な緊張感も無さそうだった。


wi-mc圏外で位置検索も出来ず焦りばかりが募る。

仕方なくドクガ国側でキャバさんを探すが、隠れ潜む小規模な一団を探すには余にも広範囲過ぎた。


逸るピャーチを宥め日が暮れるのを待つ。

この世界の獣は一律に獰猛だ。

ピャーチがそうなように中型犬程度の大きさだったとしても、訓練された兵士と互角以上の戦闘能力を持っている種は少なく無い、発見されれば最優先で駆除しようとされる事は簡単に想像できる為、最大限慎重に行動する必要があった。


戦場は日暮と共に熱量を下げていく、やがて兵達の宴が始まり昼とは違った熱が辺を埋めて行く、その熱も納まり静寂が訪れる。

薄い月明りがピャーチの黒い身体を闇に馴染ませる、ここに来て背に巻かれた反射材付きの黄色いポシェットが頭を悩ませるが、横にずらし片方だけでも隠蔽率を上げる。

そうして何とか兵達が寝静まる野営地に潜り込む、wi-mc圏内を探しテントを巡る。

ようやく見つけた圏内地でキャバさんの位置を探るが取得できない、息を潜め一瞬の奇跡にかけて何度も挑戦するが結果は変わらない。

普段からキャバさんの周辺に魔細胞持ちが居ないので、習得できる可能性は限りなく低いのだが、今はそれしか手段が無い。


そうこうしているうちに、遂に敵に見つかった。

魔物だと兵が叫ぶよりも早く、暗闇に姿を消す。

ピャーチの動きを目で追えない兵は完全に見失う。


闇に紛れてソロリソロリと移動するも、暫くするとまた発見されてしまう。

そんな事を何度か繰り返すうちに追い込まれてしまう。

先生は咄嗟の機転でドローンを取出し、ありったけのLEDを点灯させて野営地の上空に浮かべた。

聞いたこともないドローンの風切り音と色とりどりに光りながら空を飛ぶ物体の出現に兵達は混乱を極める、その隙にピャーチは一気に駆け抜けた。




「何でそんな何度も発見されたん?」

話をぶった斬り先生に聞く。暗闇に黒い犬、そんな簡単に見つかるとはとても思えない、それでも見つけられるような魔法や装置があるのだとしたら、今後の為にもぜひ聞いておきたい。


[それは私も疑問に思い、ドローンを飛ばした際カメラで確認しました、、、、光って居ました、、、、、]


「ん???、、、、あ、目か!」

暗闇で獣目が光る、条件などは解らないがよく見る光景だ、こればかりはどうしようもない。


[、、、、、目は、、、、、閉じてました、、、、、、、鞄です、、、、、]

横に回したはずのポシェットがいつの間にか更に回ってピャーチの腹下にあったと言う。

遭難時などで発見を助ける高効率な反射材が、松明の僅かな灯りを拾いキラキラと光っていたそうだ。


「えと、、、、なんかごめん、、、、」


[、、、、、、、、]



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