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失念

(、、、、、、この可能性は失念してたわ、、、、、、)

死刑もやむ無しと思っていた私に、現状が忘れていた可能性を思い出させた。


(冷静に考えたらあの王や、この可能性の方が高かったよね)

鈍い痛みで意識を取り戻して、両手と片膝を吊られていることに気がつく。

唯一、床に付いている左足に力を入れて両手にかかる体重を緩和する。

ゆらゆらと揺れる蝋燭の灯りを頼りに辺りを見回す。

足元に視線をやって、一糸纏わぬ姿だと気が付いて、捕虜の扱いに男女差があると言う話を思い出した。

思い返せば妻にしたいと言われていた事もあった、裸にされて、片足立ちで曝け出している私が、何をされるかは容易に想像できた。


(多分、1回や2回じゃ済まへんよね、、、、

うぅ〜わ、これマジで死んだほうがマシちゃうん、、、、)

部屋の中には何本ものロープや先端が丸く加工された様々な太さの木の棒、果ては用途不明な謎の道具が、整然と並べられている。

遠くない未来の自分を思い描いて、死に直面するよりも強い絶望を覚える。

生き残ると言う約束を早々に破ることになりそうでとても申し訳ないのだけど、この状況でどうやったら死ねるか真面目に考える、、、


(メジャーなのは舌噛む奴よね、でもアレ出血で窒息死する可能性がある程度で、普通はむせて吐き出して、ただ痛いだけやったはず、、、、)

それでも可能性があるならと、舌を出し少し力を入れてみる


(ムリムリムリムリ、これ絶対無理や、、、、

となると、後はメチャメチャ怒らせて斬り捨て御免を狙うしかないか、、、、、うん、その線で行こう、、、、、)

先生が聞いたら加熱して爆発しそうな事を考えているとガチャリと扉が開いた。


薄暗い部屋に強い光が差し込んで目が眩む、数名の人陰が一瞬光を遮る。

強い光に目が慣れ始め、次第に人陰の輪郭がはっきりとしてくる。


「このボケ!お前絶対殺すぞボケ!!!!」

反射的に出た暴言は、慣れ親しんだ元の世界の言葉だ、部屋に入って来た王に通じるはずがない。

別に早々に計画を実行した訳じゃない、殺すぞボケとか多分初めて口にした。


小姉を後から抱き抱え、連結部を見せびらかす様に部屋に入って来た王を見て、只々反射的に出てきたのだ。


「ヒキャキャキャキャ、突然トーコちゃんが大きな声を出すからびっくりして出てしまったのである、どうしたのであるかトーコちゃん?羨ましくて叫んでしまったのであるか?ヒキャキャキャキャ」

王は満面の笑みで小姉を横に投げ落とす、

ゴンッと、嫌な音がするが小姉は声も上げない、まさかと思い息を飲む。


「ぅ~ぅ~」

と、とても小さく呻く小姉の声が聞えて、ホッとする。

その()がこの世界の言葉で話さないと通じない事を思い出す程度には冷静さを取り戻させた。


「何なんアンタ?王様やからってこんな好き勝手していいはずないやろ?それとも不治の病でも患ってヤケ起こしてるん??」


「ヒキャキャキャキャ、そうなのである、我はあと、100年も生きられないのである、可哀想なのである、ヒキャキャキャキャ」


「うるさい、しね!」

苛立ちを煽るかの様な笑い声にまんまと乗せられて幼稚な罵声しか出て来ない。


「好き勝手と言うが、我とて王としての様々な制約に縛られて不自由しているのである、気に入った娘が居ても年に一度攫って来るのが精一杯なのである、大変な我慢なのである。」

重い雰囲気を作り出し、しみじみと語る。

危うく「大変なんだね」と言った気分にさせられる。

腐っても王なのか?カリスマ?感が凄い。

これだけふざけた事を言っているにもか関わらず、その言葉に重みを感じる、うっかり同情してしまいそうになる、、、、


「っっ、、、、、あほ言うな!んな外道しといて我慢も糞もあるか!!」


「ヒキャ!流石トーコちゃん、意識が強いのである、グローブと引き換えたかいがあったのである!」

目を輝かせ、頭上で諸手を叩いて喜んでいる。

萎んだ物が再び反り返って行く。

その姿が余りに気持ち悪くて思わず聴き逃してしまいそうに成ったが、慌てて言葉の意味を模索して血の気が引いた。


「隊長と引き換えってどういうこと、、、、?」


「トーコちゃんに会わせろと言っても聞かなかったのである、反逆罪の適応を議会に求めたところ、過半数を占め可決したのである」


引き過ぎた血の気が意識を奪いそうになる、同時に小姉が「ぅ〜」と、小さく呻く。

その声に心臓を掴まれる、失いかけた意識が戻ってくるが小姉に視線を送れない。

必死に言葉を探す、小姉に対してなのか王に対してなのか解らないが、何か言わないと心が完全に折れてしまうと、本能が警告している。


それでも私は完全に停止した、足元を見つめ顔を上げ事も出来ずに言い訳や謝罪、罵声や泣き言なんかで頭の中が一杯になり外の世界を遮断した。


「ん?どうしたのであるか、、、、、?トーコちゃん???まさかもう壊れたのではあるまい???

駄目であるぞ、トーコちゃんは壊さず長く遊ぶと決めているのである!」

そんな事を言いながら胸を舐め、噛み付き、千切れそうになるほど引っ張られたが、今の私にはそんな痛みを感じる余裕も無かった。 


「駄目である、駄目であるぞ。泣き叫ぶトーコちゃんをまだ一度も見ていないのである!

仕方ない、少し時間を置くのである、しっかり休んで元に戻るのであるぞ!!!」

そんな勝手な言葉を残して王は部屋から出て行った。












遅筆の癖に何を勘違いしたのかもう一作品駄作を書き始めてしまいました。

浮かんだ話が如何しても頭から離れず、こちらの話を考えるにも障害となっていましたので、それならばと書き出しました。とは言えこちらのおまけ程度でしか進められないと思いますので更新速度は非常に遅いですが。

新たに評価いただきましてありがとうございます、自己採点以上の評価いただきましてお世辞9割だとしましても大変励みになります。

自己満足で書き始めた文章に時間を割いて下っている皆様にも改めて感謝と共に生ぬるい目で見守っていただけましたらと思います。

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