大丈夫?
部屋の中、灯りも点けずに大の大人が寄り集まってスマホの灯りで顔を照らしている。
ここは元の世界とは違うし、状況的に仕方ないと分かっていてもその光景はかなりシュールで油断したら噴出してしまいそうになる。
私はというと何時ものように作戦会議には混じらず一歩引いた位置でその光景をピャーチの毛を繕いながら眺める。
ピャーチの耳がピクリと動き皆の方に視線を向ける、釣られて視線をやるとどうやら話が纏ったようだ、そっと近づくとスマホを手渡された。
「ありがとうございます、皆道順は頭に叩き込みました。」
「もっと早く気づけば良かったのに、今更出ごめんね」
キングさんとそんな話をしながら皆に向かって手を合わせ頭を下げる
「とんでもありません、お陰様で最短距離でいけそうです」
「お役に立てれば何よりです、んでどうするんです?」
[せめて話くらい聞きましょう、、、、、]
(、、、、、、、、)
「全力で走れば5分もかかりません、一気に行って人が集まる前に脱出しようという事になりました」
代案も思いつかない私が言ったら駄目なんだろうけど、それが作戦か?
この人達脳筋くさい、、、、、
武力への自信の表れなのかもしれないが、それとなく聞いてみると、ペルーさんが奪還の時も最後は強行突破だったらしい。
今までどうやって地下活動してきたのか、逆に気になってしまった、、、、、。
「よし、それじゃぁ行くぞ」
立ち上がり説明係さんが気合を入れる。
[トーコ廊下に移動物2です]
「まった!外に人がいるって」
「大丈夫です」
暗がりで灯りも無いのに歯がキラリと光った気がした。
「何がだいじょう、、、、、、、」
バガン!!!
勢いよく扉が蹴破られ、向かいの壁に張り付く。
「な!何事だ!!」
廊下を歩く王宮の兵士らしき二人が咄嗟に武器を構えるのが見えた。
同時に一人が呼子だろうか?笛を持って口元に手をやる。
シャパンッ!
一息すらも吹くことなく、ボタンさんの一振りで二人の首が落ちた。
「どうした!?」
向かいの部屋にいた人が音を聞きつけ扉を開ける。
ザムッ!
キングさんの槍が扉ごと声の主を貫いた。
「よし、順調です。」
説明係さんが、満足げに頷いた。
「、、、、、、、、」
[気持ちは分かりますが、突っ込むのは帰ってからにしましょう、、、]
「、、、、、、はい、、、」
ボタンさんを先頭に走り出している一行に遅れないよう慌てて走る、
最後尾になってしまったが、常にキングさんが後ろにいてくれるので安心して前だけを見て走る。
50メートル程の廊下を突き当たり左に曲がる、10メートルほどで階段があり一度3階に上がる。
そこから渡り廊下を渡り隣の建物に入るのだが、道中不幸にも出くわした王宮の兵士達の死体が幾つも転がっていて血で滑らないように走るのが大変だ。
声をあげる間もなく首を切り離される兵士達に同情を覚える。
再び一階に下り長い廊下を走る。
この廊下の先にロビーのような広場があり、そこに地下牢へと続く階段があるようだ。
ロビーの扉のを前に”ワン!”とピャーチが吠え、ズボンの裾を噛む。
しかし勢いは止まらず、ボタンさんによって蹴破られた扉の中に頭から滑り込んだ。
「完全に包囲している、観念しろ!」
聞き慣れない声に顔を上げる、
100坪程はありそうな広大なロビーには無数の兵士が所狭しと並んでいる、更に見回すと四方の壁には2層のテラスが巡っていてその上には弓兵や魔法兵が構えて並んでいる。
「うぅわ、何でこんな準備万端で待たれてんの??」
そんな愚痴を溢しながらもライフルを構え牽制する。
「王子、どうしますか?」
舌打ちしながら説明係さんが訪ねる、、、、間もなく、ボタンさんは既に先頭の兵を切り裂いている。
「「「「ちょっ!」」」」
全員が出遅れて、慌てて走り出す。




