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いやいや

「いやいやいやいやいやいやいやいや、何なんその流れ。行くよ私も、その為に来たんやもん。」

自然な流れで置いてけぼりを喰らいそうになり慌てて後を追う。


「しかし、、、王子いかが致しましょう」


「、、、、(コクリ)

説明係の人がボタンさんに判断を仰ぐ、私を見つめ無言で頷くボタンさん。


「仕方ありません、しかし我々には貴方をお守りする義理も余裕もありません、あくまで自己責任だと言うことをお忘れ無く」

無言の頷きから全てを読み取る。出来る男だ説明係さん。

それにしてもこの人達には私の事を詳しく説明されていないので、実に自然な反応が帰ってくる。

昔なら冷たい言い方だと少し悲しくなったかも知れないが今はそれが嬉しい。

最近持ち上げ過ぎられていたので新鮮だ。

安心感すら覚える。


“バギィ”

キングさんが突然説明係さんを殴り飛ばす。


「なっ何をするキング!」


「貴様こそ何だその話し方は!」

怒れるキングさんによって、私を信仰する言葉と理由がトントンと語られていく、、、、

短すぎる平穏な時間が終わりを迎えた。


数分後、8つの頭が地を舐めるように並んでいた。


「傅いた方が良いか?」

横に並ぶボタンさんが真顔で問いかける


「いや、勘弁してください、、、」

先頭で得意げに頭を下げているキングさんに申し訳ないが軽く苛立ちを覚えた。






漆黒の森を進む、私の前を行くキングさん以外は何の明かりも持たずに苦も無く進む。

グンリテスンの民は夜目が効くのだと軽く言う、月明かりさえ届かない森の中で夜目が効く所の話しじゃ無い、額のボタンからソナー波でも出してるんじゃないかと勝手な想像をしながら歩く。


「トーコ遅い、乗れ」

突如背後に現れたボタンさんが私を抱えキングさんに手渡した。


「し、失礼します」

声を上げる間もなくお姫様抱っこされる、

とたん全員が一気に走り出した。

ダッシュとまでは言わないがかなりのペースで光1つ無い森を無音で走る一行、恥ずかしさと悔しさと鉄の鎧が痛くて悲鳴を上げたくなるが、早々に足を引っ張ってしまっている以上何も言えずに色々と飲み込みじっと耐える。







日付の変わる頃、ストリタを見下ろす山の中腹で足を止め作戦会議を開く。

ストリタの街は高い崖を背負った王宮を中心に軍事施設や司法施設、一部の商業施設と上級職用の住宅があり、その回りを十数メートルはありそうな城壁が扇状に取り囲んでいる。

一般市民の生活区は城壁の外側に広がっており隊長の家もそんな中の比較的裕福な層が住む区域にに建っていた。


流石は首都と言うこともあって普段は夜間でも検疫を受ければ城門をくぐる事が出来たので、ボタンさん達は当初、出入りする商人に金を掴ませ中に入ろうとしていたのだが、数日前から夜間の出入りが禁止されたらしく足止めを食らっていまい今に至る。


「朝まで待って入るしか無さそうだな」


「日中ではとてもじゃないが動き回れないぞ」


「城門内で隠れ潜み夜を待てばいいだろう」


「整理された区画内で隠れきれるものか」


突如城門の出入りが制限された事から何らかの警戒はされていると予想するべきで、戦闘も辞さないとはいえ可能な限り隠密に事を運ぶのが望ましいのは言うまでもない。

何度も見てきた平行線をさ迷う議論の場を何時もなら傍観していたのだけども、今回はそうも言ってはいられず地図をみながら無い知恵を絞る。


隊長の家で暮らしていた時は極力城には近づかない様にしていたので王宮周辺の事が全然解らない、もっとも足を運んでおけば良かったと後悔するが、王様の顔を思い浮かべると無理な話だったと慰めた。


「ところで、崖を背負って王宮建てるけど、これって防衛的にどうなんでしょう?」

いつか小姉にかけてもらった落下速度減少の魔法を引き合いに出して尋ねる。


「普通は数人がかりで一人下ろせる程度だ。」

ボソボソとボタンさんが答えてくれる。


崖を登る発想が無い以上降りる発想も無いようで、考えてみれば元の世界でも昔は崖を背負って陣地を築いていたとか聞いたことがある気がする。

これはまた久しぶりに私のターンが来たんじゃ無いか?!

これしかないと意気揚々と降下作戦を説明する。


「恐れながらあの崖は四方迄もを崖に囲まれた台地で上に上がることがまず不可能です」

何を恐れながらか知らないが、潜入班の一人が無理と言う


「自然に出来た崖で登れない物は殆ど無いんですよ、とにかく見に行きませんか?」

懐疑的な皆に、先日のクライミングで見たままをキングさんが語り後押ししてくれる。

ただ、「そもそもトーコ様の言を疑うのか!」

と力強く付け加えられた言葉だけは余計です。

皆の視線がボタンさんに集まり数秒後、コクリと頷いた。


「其ほど距離もありません、駄目なら戻って朝を待つという事で宜しいですか?」

先程とはうって変わって私の機嫌を伺うように丁寧に確認してくる説明係さん、、、、、、

さっきのツンな感じが良かったんだけど、、、、、

はあ、、、、、。


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