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ピャーチ

テントを片付け徒歩で移動を開始する、

とは言え本当に歩いていては時間をくい過ぎるので主に小走りだ。

二時間程で最も近い隠れ家に到着した、途中休憩を挟みながらとは言え、巨大な盾と金属鎧を身に纏いながらも難なく私のペースに合わせて走るキングさんを見て軽く凹む、

女神様も言っていたが根本的に私とは身体の造りが違うのだろう。


隠れ家が目視できる所まで進み再度安全確認、

レーダーに異常はなく、キングさんも気配を感じないと言う、流れでピャーチに視線を送るとコクリと頷いた。

え?なに?通じてる?


「ピャーチこの辺に誰もいない?」

腰をかがめ小声で聞いてみる、


“ワフッ”

返すように小声で吠えて尻尾を振る。


「凄いピャーチ言葉解ってるよ」

我が子の天才ぶりにテンションが上がる。


[その様ですね驚きです。バルザヤの言葉に関するデータが無いか優先的に検索してみます]

先生も驚いているようだ。


「ピャーチ1+1は?」


“ワフッワフッ”

ヤバイこの子マジ天才、抱き抱え全身を撫ぜる。


「ト、トーコ様そろそろ行きましょう」

脱線を始めた私をキングさんが制止する


「わ、ごめんなさい。行きましょう」

我に返り照れ笑いしながら隠れ家に近づく。



進みながら、気配が無いということは味方もいないと言う事に気が付き、上がったテンションが下がる。


キングさんが扉に手を掛けるが、鍵が掛かっているようだ。


「少しお待ちください」

そう言って家の脇に生える木の虚に手を入れ鍵を取り出した。

どこの世界も変わらないのだなと少し笑えた。


隠れ家はログハウスのような造りで一部屋しかない、中には机と椅子とタンスがあるだけで殺風景な物だった、それでも何か無いかと隅々まで見て回る。

キングさんがおもむろにタンスを持ち上げ私を呼ぶ


「右側の釘が手で抜けると思います、抜けたら床木を壁の方に押してください」

言われた通りにしてみると、床木の下から小さな紙が出て来た。

紙を取り出しキングさんに渡す、文字とも図とも言えない落書きが書いてあるだけだった。


「当たりですトーコ様」

笑みをこぼすキングさん。

落書きは方角と距離を示す暗号でそこに行けば誰かが居るだろうと言う。



暗号が示す方向は更に深い森を示し、頭上を覆う木が辺りを薄暗くする、途中何度かレーダーが反応する、出来る限りやり過ごそうとするが風向きによっては数キロ先からキングさんの匂いを嗅ぎつけた獣が真っ直ぐ追ってきたりもする、そんな時は武器を取り出し、距離を測りながら前に進む。

レーダーの赤点が1キロ辺りまで近付くとピャーチも反応する、赤点の方を真っ直ぐ見つめ、”ワフッ”と小さく吠える。

500メートル程になると身構え唸る、

ピャーチの迎撃体制を見て私達も身構える。


残り100メートルを切り木々の隙間に僅かに姿を見せたと同時にピャーチが走り出した。

真っ直ぐに私達を目指して走ってくる獣に対し、不意打つ様に側面から噛み付く、

獣は立ち上がれば3メートル位ありそうな8本足の熊のような生き物で、小さなピャーチが噛み付いても大した傷にはならない、それでも皮膚を切る程度にはダーメージを与えているらしく、かなり鬱陶しそうだ。

ピャーチは素早くヒットアンドアウェイを繰り返し熊を翻弄する。


私はと言うとピャーチの見たことのない動きに呆気にとられ、ライフルを構えたまま呆然としていて、キングさんも状況が飲み込めず只護りを固めていた。


十数回ヒットアンドアウェイを繰り返したピャーチは突如私の足元に戻り

“ワン!”

と吠える。

熊はピャーチを警戒してか、立ち止まり身構えている。


[トーコ今です]

先生の言葉に我に返り引き金を引く。

連続して放たれた5発の銃弾が熊の頭部を撃ち抜いた。


褒めて褒めてと言わんばかりに得意げに尻尾を振るピャーチを見るが、言葉が出ない、、、、、


「、、、、、ピャーチ、、、、、、何なんそれ、、、、、、?」

当初小型犬ほどたったピャーチは、この二週間程でチワワからビーグル位には成長していた、

だからと言って階段で足を滑らして顎を打っていたのはついこの間だ、、、、、


以前見た森狼なんかよりもずっと機敏に見えた。


「一ヶ月もしたら私では太刀打ち出来ないでしょうね」

私の隣で呆然とするキングさんが呟いた、、、、、。


“ワフッ?”

何時までも褒めてもらえない事に疑問を感じたのかピャーチが首を傾げる


「あ、ごめんねピャーチ。あんまり強いからびっくりしたんよ」

抱き抱え鼻先にキスする。

はしゃぐピャーチに顔を舐められながら、

ピャーチが育てば私無敵じゃない?

なんて俗な発想が一瞬よぎる。


[暴力だけで生きていけるほど世の中は甘くありません]


(わ、わかってるし。でも折角の異世界なんやからちょっと位最強とかに憧れてもいいやん!

、、、、、、、、ってか、先生ヤッパリ私の心まで読んでない、、、、、?)


[、、、、、、、、読まずともトーコの考えそうな事くらい分かります、、、、、]


(白々しいわ、、、、、)


精神衛生上、先生の事は私の別人格だと思うことに決めた。










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