時と場合
「と、言うわけでこのまま首都まで行こうと思います」
キャバさん達や村長さんに集まってもらい、大姉の話を伝える。
「分かりましたわ、しかしドクガ国とシャンク共和国が開戦するとなっては我々も傍観は出来ませんわ、申し訳ございませんが隊を2つに分け其々に当たりたいと思いますわ」
そう言って、キャバさんは1台の馬車と8名の護衛を付けると提案してくれた。
「ありがとうございます、でも一人で行くつもりなので大丈夫ですよ、ほら、万が一敵に見つかっても一人ならバイクで逃げれますので。」
同時にバイクを取り出し見せる。
「トーコ様、以前その乗り物に姫様を乗せて走られたと聞きました、ならもう一人位は大丈夫なのではないですか?キング頼めるか?」
「お任せください」
チャルさんの問掛けに真っ直ぐ私を見つめたキングさんが力強く答える。
「えっ、いや、でも、、、、」
攻撃力こそ銃のお陰でこの世界で通用しているが、防御力は弓矢相手でも不安の残るほど素人の私だ、キングさんが来てくれるなら心強い事この上ないが、キングさんにはキャバさんを護る役目があるバズだ。
心強さと申し訳無さに挟まれて言葉に詰まる。
「以前キングにはトーコ様を護る様に命じましたわ、そしてその命はまだ解いていません。トーコ様足手まといとは思いますがどうかお連れください。」
「足手まといなんてとんでもない、、、、、」
「護るしか脳のない男、姫様を護る代役くらい我々で十分です」
「オイ、チャールズ言い過ぎだぞ!」
チャルさんとキングさんの掛け合いに笑みが溢れる。
「それでは、お言葉に甘えてキングさん助けていただけますか?」
「命に変えてトーコ様をお守り致します」
片膝を突いて忠誠を誓うかのように答えるキングさん、背中がむず痒い、、、、、
「あと、ピャーチの事なんですが、、、、」
村で預かって貰えないかと村長さんに視線を向ける。
“ワン!”
いつの間にかバイクに飛び乗り尻尾を振っている。
「ピャーチあかんて、何が起きるかわからへんねんから私も自分の事でイッパイやろし」
抱き抱えようと1歩踏み出したとき、
“グルルルルル”
牙を剥き出して見た事もない険しい顔で威嚇してくる、私以外の皆は思わず武器に手を添えるほどだ。
「小さくてもバルザやか、、、、」
ゴクリとツバを飲み込み誰かが呟くのが聞こえた。
私には分からないが殺気って奴なんだろう。
「ト、トーコ様申し訳ございませんが、私どもでバルザヤの子をお預かりする度量はとても、、、、」
村長さんが数歩後ずさりながら言う。
「ハァ、、、絶対言う事聞かなあかんよ?!」
“ワン!”
とたん尻尾を振りご機嫌な様子、、、、。
「ペルーの側にいれば遠方でもトーコ様とお話できるのですわね?ストリタに向う隊の編成もしておきます、状況が分かり次第ご連絡頂けたら嬉しいですわ」
「分かりました、それでは行ってきます。」
私の腰に手を回し石のように固まるキングさんは言葉を発することも出来ないようだ、そんなキングさんを呆れたように見守る皆に会釈してアクセルを開ける。
「ひょ、ひっ、ふっ、ぅわぁあぁあぁぁぁぁ」
速度が上がる毎に悲鳴を上げるキングさんをを無視して加速して行く。
街道を80キロ位で巡航して20分、ようやく慣れたのか静かになった。
一時間毎に小休止しながら進む、レーダーの赤点を避けながら進んだので時間を喰ったが、ようやくストリタまで残り10キロのところまで来た。
ここから残り3キロ迄歩いて移動して、そこでキャンプする事にする。
「さて、これからどうしたら良いでしょう。」
正直、勢いのまま来たのでどうやってボタンさんを探すか検討もついていない。
まぁ、先生が何とかしてくれるはずだ。
[、、、、、、、、]
おかしい、呆れられた気配がする、頼っていいと言ってくれた筈なのに、、、、、
[、、、、、、、]
(はい、ごめんなさい、、、、、)
[、、、、、、、]
「トーコ様、地図を見せて頂けますか」
何とも言えない空気を察してくれたのかキングさんが提案してくれた。
「ここと、ここと、ここに我々の潜入班が使う隠れ家が有ります。連絡の途絶えた今、安全とは思えませんがまずは行ってみてはどうでしょうか?」
有事の際に伝言を残す隠し戸棚なんかも有るので何か掴めるかも知れないとの事だ。
考えてみればボタンさんもグンリテスンの人だ連携を取っている可能性は高い、日が昇ったら直に向かってみようと決め就寝する事にした。
「それでは私が警戒しますのでゆっくりとお休み下さい」
当然のことの様にキングさんが言う。
「駄目ですよキングさんも疲れてるんですから」
慣れないバイクでのいきなりの長時間移動、小休止の度にグッタリしていたのは見逃していない。
「いや、しかし、何かあってはいけませんので」
「大丈夫ですよ、先生の索敵能力は知ってるでしょ、5キロ圏内に敵が来たら直に教えてくれますよ。」
“ワン!”
「あはは、ピャーチも居るもんね」
ピャーチの気配察知能力は猟の時に実証済みだ。
「いや、それでも、、、、、」
キングさんの視線がひと張りのテントにチラチラと移っているのに気が付いた。
大人4人テント使える大型のテントなので十分だろうとこれしか持っていない。
「トーコ様と同じテントで眠るなど畏れ多くてとても出来ません」
「そこはもう、緊急時と言う事で諦めて下さい、キングさんに万全でいてもらわないと私が困りますので!」
人目を避けるため森深くでキャンプを張っている、夜露で身体は濡れるし何より虫の宝庫だ、とてもじゃ無いが外で寝てもらう訳にはいかない。
キングさんの人柄的にあっちの危険も心配していない。
まぁ時と場合によっては、、、、、
何とか宥めて同じテントで眠ってもらう事ができた、予備の寝袋を渡したが「直に動けないので」と断られたので毛布を渡す。
翌朝、クッキリと目の下にくまをこさえたキングさんと挨拶を交わす、早く誰かと合流しないとキングさんが倒れていましそうだ、、、、、。




