表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/89

タケプター

夜明け前、キングさんとスパさんと3人の兵の人に同行してもらい馬車を走らせる。


うっすらと空が白んできた頃、目的地に到着した。

3人の兵の人に馬車の留守番を任せ、私達は歩いて登れるルートを探しながら高さを稼いでいく。


「トーコ様、、、、この様な崖を登るのですか、、、、、」

60度程の斜面に差し掛かりスパさんが第一弱音発生。


「これ位はまだまだ坂って言うんですよ、ピャーチを見習って下さい♪」

ピャーチは視界から消えない程度の範囲を自由奔放に駆け回っている。

二人にハーネスを付け、ビレイ器の使い方を説明する。


「とは言え、上るより降りる時の方が大変です、今怖いならやめておいた方がいいですよ?」

元々一人で登るつもりだった、魔物の生息圏ではないとしても空を飛べる魔物の襲撃の可能性はありえなくは無いので、行ける所までは護衛すると申し出てくれた次第だ。

有り難い事だけど、高所に脅え動けなくなられては元も子もない話だ。


「こ、怖くなど有りません、ただ確認しただけです。私とて幾度も死線を掻い潜った戦士です、恐れるはずがございません!」

戦場の恐怖とはまた別物だと思いはするが、言ったところで埒が明かないだろうと意見を尊重する。


「一先ず私が支点をとりながら進みますね、慌てず確実に進んできてください」

砂と背の低い草しかない岩場の斜面を慎重に登っていく、所々カムやナッツで支点を確保してその都度二人にも進んで貰う。

ボルトやハーケンを使わないのは自然を傷付けたくないと言うささやかな拘りからと言うのは言い訳で、

実際のところクライミング技術と言う私の唯一の優位点を守りたいと言う狭量なが大半を占めている、、、、。


4時間程登ってエジメイ草まで直線距離で5メートルになった、高低差は60メートル。

目の前には無数の突起やクラックが点在する崖が有る、休憩がてら昼食をを軽く取りいよいよソロクライミングの始まりだ。

一応着いてくるか聞いてみたが首を振られた。


「ちょっと行って来るから待っててね」

ザックを降ろしピャーチを撫でる、行って来ますと二人に告げ崖に挑む。

40メートル程あるその崖は、無数のルートを選べる初心者向けの崖で10分程で登りきれた。


小さな棚段に立ち最後の崖を見上げ、ため息が溢れる。

今までの状態は何だったのかと軽く怒りを覚える、高さは20メートル程の小さな崖だが人為的に作られたのかと疑いたくなる程ツルツルの壁が立ち塞がっている。


「何とかルート探して見るか、先生あれ買ってくれてる?」

そう言って頭で念じると、プロペラの付いた物体が出て来た。

タケ○プター では無くて、ドローンって奴だ。

いくら先生でも未来デパートとの取引は出来ないらしい、残念だ。


スマホを取出し操作の準備をしようとしていると


[トーコ、物理的な操作は不要です、頭でイメージして下さい私がコントロールします]

先生が言うと同時に脳内にドローンカメラの映像が映し出された。


ドローンを飛ばし岩肌を観察していく、上だ横だと意識しなくても正に目線を動かす様に反応し移動してるれる、幽体離脱してるのかと缶違いしそうなほどストレスなく観察することが出来た。


一緒に買ったエンジン式の発電機で充電しながら2時間程費しルートを決める、時計は丁度12時を刺している、戻る時間も考えれば余りのんびりしていられなかった。

難易度は非常に高いが私なら出来ると自身を奮い立たせる。


ゆっくりと岩に取り付く一手一手、描いたルートを間違えない様慎重に進んで行く、時には1センチに満たない様な突起に身体を預け登っていく。セルフビレイを取ろうにもナッツを挟む隙間すらなく、緊張から滲む汗を拭いながら中腹までたどり着く、棚段から10メートル程の高さとは言え、その棚段自体が非常に小さい、落ちれば間違いなくピャーチ達の所まで行くだろう。

この地点でのようやく小さなナッツを一つ挟み支点を取ることができた。

ホッと一息付く。


残り半分のルートを思い描き慎重に登っていく。

一度足場の一部が割れて生きた心地がしなかったが、なんとか登りきる事が出来た。


猫の額ほどの棚段にエジメイ草を発見する。

岩の上に僅かに砂が乗っただけの棚段に2株のエジメイ草生えている、

1株をポシェットに仕舞い込み、立ち上がる。

脳内の画面で構図を確認して写真を撮る。


「やったー!」

登頂の達成感からか、思わず両手を挙げて叫んでしまった。


       (なにかありましたかー)


下から小さくキングさんの声が聞こえた。


「大丈夫でーす、今から降りまーす」


棚段の奥にある崖にドリルで穴を開けボルトを設置する、ダブルロープでラペリングして行き、一気にピャーチの待つ地点まで降りていく、勿論途中で支点の回収も忘れない。


「お帰りなさいませ、お怪我などはございませんか?」

戻った私を早々にキングさんが気遣ってくれる。


「大丈夫です、エジメイ草もこの通り。」

擦り寄るピャーチを片手で抱え残る手でエジメイ草を見せた。




行きに4時間かかった道のりを戻る。

泣き出しそうに成りながらも虚勢を張り下山していくスパさんを生暖かく見守りながら進んでいると、すっかり日が落ちてしまった。

月明かりが明るくそれほど不都合は感じなかったが、ヘッドライトを皆に配り慎重に下山しているとたっぷり7時間ほど掛かってしまった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ