決着
”バーン”
銃声が耳を突き抜く、この銃サイレンサー無いの忘れてた。
”キャンキャン”とピャーチが激しく銃に吠え掛る、
後ろで尻餅をついているスパさんに比べてなんと頼もしい事か。
頭を撫ぜて抱き抱える。
「当たりました、四本目です」
木の棒に何本も傷を付けて即席定規を作り計測してもらっている。
「なんとか当たって良かったです、さぁどうぞ」
ガッツポーズ取りたい心を抑えて、優雅に振舞う、これが大人の余裕だ。
カリカリと弦を巻き上げ矢を装填する。
スパさんも伏せて撃つようだ、ぶつぶつと何か呟きながら土を盛りその上に弩を乗せる、
空を見上げ、木々を見つめ、狙いを微調整する。
(私の風向き見てたのに早よせな変わるよ?)
なんて思うが、良く考えれば銃弾と矢で軌道の参考になるんか、、、、?
そもそも銃弾の軌跡見えへんよね、、、、、、
あぁ、ちょっと可哀想になってきた、
”バシュッン”
今までの数倍激しい発射音が響く
”カンッ”と小さく乾いた音が耳に届く、
沈黙、、、、、、、
「当たりました、32本目です」
「おぉ凄い!」
思わず絶賛の声が出た、
メモリは私の親指基準、大体2センチ位の間隔だ、初見で弓矢でこの距離で。
これが世界一の実力なのか。
「くそぉ!」
スパさんは地面を殴りつけ唇を噛締める。
暑苦しい位の熱が伝播してくるのを感じる、同時にこの世界に来て忘れていた感覚を思い出す。
正直、いやな奴だと思ってた。
睨むし、鼻で笑うし、当然のように延長戦にするし、鼻で笑うし、、、、
でも思い出した、スパさんの姿勢は間違ってない、目に見えて見下すのは別として、、、、
私だって同じような物だった、鼻で笑ったりはしなかったけど。
何かを突き詰める人なんて、みんな自己顕示欲の塊だった、心の中では笑ってたかもしれない。
いつでも自分が一番で、たとえ負けても次は勝てると言い張れる、
そしてそれを実行してきた人が大成していった。
スパさんに急に親しみがわいた、どこか軽く見ていた自分を改めよう。
二発目、今度は先生の助言無しだ、静かにゆっくりと狙い引き金を引き絞る。
風を感じて止むのを待つ、勿論500メートル先の風は分からない、そこはもう、天に任せた。
”バーン”と銃声が鳴り響く
息を呑み結果を待つ、、、、、
「当たりました、21本目です」
「っしゃぁぁぁ!」
雄叫びを上げる。
全力で挑んで結果が出たら全力で喜ぶべきだ。
「ぬおぉっぉぉぉ」
後が無くなったスパさんはさっき以上に悔しがる、
単なる腕試しが、オリンピック決勝かの様に燃え上がる二人。
どこか呆れたギャラリーの目は今は見えない。
”ドサリ” スパさんが脱いだロングコートから有り得ない音が聞こえた。
「ま、まさか重り入りですか?!」
今までそんな物を着て戦っていたのかと驚愕する。
「総量50㌔あります。流石はトーコ様、よもやこれを脱ぐ事になるとは、、、、」
色々な媒体で良く見る奴だ、ここからのスパさんの動きは別人のようになるだろう。
額から汗がにじむのを感じる、警戒を最大限にして腰を落とす、、、
”シュバッ”
消えた?!
いや上だ!
高くジャンプしたスパさんの体は風を斬る音を出す、
体を伸ばしたまま横に3回転しそのまま弩の前に伏せた。
(あ、、、、、、、)
熱気にやられて発想が漫画のようになっていた、
これ射的だ.。
スパさん服の重り関係なくない、、、、、、、、、?
”ギュイン”と弦を手で引き装填する、本来ハンドルを回して巻き上げる物のはずなのに、凄い力だ、解き放たれた力は之ほどなのか。
慎重に狙いを定めている、近くで見ても微動だにしていない、人形だと言われても違和感が無いほどだ
”バシュッン”
見ていても動きが感じれない指が矢を放った。
「くそぉぉぉ」
着弾を待つまでも無くスパさんが雄叫ぶ、横から見ていても分かるほど、弓の反動に体が負けていた。
(、、、、、コート脱いだらあかんかったんとちゃうん、、、、、、、)
弩が強すぎて体重負けしてるように見える、伏せて撃つのに重さがマイナスに働くことはないだろう。
無言で立ち上がり、再びコートに袖を通す、
”ギュイン”と弦を手で引き装填する、やっぱり凄い力だ、やっぱり腕力もコート関係なかった、、、、
勝負は私の3発目を撃たずに着いた。
スパさんはそれでも、3本目を放とうと準備している、
仕方が無い、外したまま終わると悪いイメージしか残らない。
私はその姿を暖かく見届けた。
的にされていた馬車はそのまま革袋に収納され
引いていた馬に乗って予定変更を伝える為2名が基地に帰った。
革袋があれば鮮度を気にしないでいい、なので数日狩を続ける事になったのだ。
大姉の事があるので早く帰りたかったが何かあれば連絡があるからとお願いされた。




