鎌狼
偶像崇拝禁止とかでは無かった様だ、
心底良かった、、、、、信仰を悪戯混じりに弄るのはあかんね、、、、、、
ガミーネ教ではそもそも教典に抽象的な文言で描かれているだけで偶像自体が存在していないそうで、
適当に決めた偶像を掲げておけば神様の存在を疑問視する声も少なくなっていたのでは?、
なんて思ったりもするんだけど、今回に関してはそれが幸いした。
冷静に考えてみれば、今まで崇拝してきた神様の姿が全然違ってたら、、、、、、色々議論が巻き起こっただろう。
迂闊過ぎた、、、、、。
神様の写身効果は絶大で、今もキャバさんの手によって掲げられ祈られている、もちろん馬車は停車中、
先程まで神の遣いと崇められていた私はすっかり蚊帳の外だ。
ホッとした反面物悲しくなるのは我侭だろうか。
停車ついでに昼食を取り再び走り出す、
一応皆お尋ね者なのでアジト近くで狩りは出来ない、一日近く離れた場所でするそうだ。
車上ではスパニエルさんの手によって先生の姿が描かれている、帰ったら像に起こすと張り切っている。
「この調子なら絵だけでも結構売れそうやね」
先生に語りかけたつもりが声に出ていた、
全員の視線が集まり (やらかした!) と身構えたが、無言のまま頷き合う面々は爛々としていた。
色々危なかったが、結果皆が喜んでいるので良かったとしておこう。
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[トーコ、進行方向5キロ先に敵性反応です、数は16です。]
先生の声に即座に反応し、馬車を止めてもらう。
レーダーの動きから何者か判断できないか、皆の意見を集める。
「この密集具合だと、陣形に見えるな」
「平和維持の奴らだとしたら数が少なすぎないか?」
「統率の取れた森狼でもこの程度の陣形は構えますわ」
「森狼だと厄介ですね」
「翼竜と言う可能性は無いか?」
「この方角でこの距離なら街道近辺だ、そんな所まで降りてきた話は聞いたこと無いぞ」
矢継ぎ早に議論が繰り出される、議長を勤めるはずだった私の立場は早々に無くなった。
挟める口は無いが議論の内容に聞き耳だけは立てておく。
流石に皆様プロだ、5分と経たずに話がまとまった。
1キロ手前の林で馬車を隠し、見張りの2人を除いた全員で問題の地点を索敵しにいく、
随分無駄に思えるが対象が森狼であった場合、索敵能力が人とは比べ物にならない。
こちらが視界に捕らえた時には襲い掛かられた時になるそうなので少人数での索敵は危険すぎるらしい、一人2匹くらいなら辛うじて対処できるそうだが、8人でいくなら皆で行ってもも同じだろうと言う結果だ。
急ぎすぎず、ゆっくり過ぎず普段と変わらず馬車は走る。
手汗が凄い、考えてみれば狩り以外で十分な準備をもって戦闘に入るのは初めてだ、何度もライフルの装填を確認する。
落ち着かない、、、、、、
一方で、他の皆さんは実に気楽そうだ、映画でみるトラックに揺られる兵隊さんのように軽口を叩き合っている。
曰く、伏兵の恐れも無く待ち伏せしているつもりの相手に奇襲をかけれるこの状況は、負ける要素が見当たらないと言う、
流石は何百年も少数精鋭で戦ってきた人達だ。
「出来れば人間であってほしい物です」
そう語るのは先ほど荷台から転げ落ちた兵士さん。
「魔物達は生きるために襲ってきます、それは我々と同じ行動であり敬意を払えますし、残された家族などを見てしまえば申し訳なくも思います。食べるため以外に殺めたくないのが正直なところです。それに対して奴らは欲のために襲ってきます、相手がたとえ一兵卒であろうと欲のために人から奪うことで生活している以上、そこに敬意も同情も生まれません。」
「広義で捕らえれば欲も生活の為になるんやないですか?」
なんて少し意地悪に聞いてみる、言いたい事は分かるけど随分偏った見方に思える。
「それは否定いたしません、正義の有り様は人其々ですので。しかし、言葉の通じる者同士にも拘らず言葉を交さず、一方的な暴力で対話を済ませる奴等を認めることは出来ません。」
「弟は連行され、即日首を落とされました。姉は手足の腱を斬られ衣服を剥ぎ取られ、首を絞めて殺されていました、これは奴らに捕まった者達の殆どが同様の扱いを受けています。」
御者を務めてくれている兵の方が振り向くことなく呟いた。
キャバさんと出会った時の下卑た遊びを思い出す
確かにあれがデフォルトならあえて庇う意味が見出せない、、、、、
そんな話をしている間に馬車は停止した。
街道脇の林に馬車を入れ、素早く偽装工作を施していく。
こういった作業も手馴れた物なんだろう、街道からは余程意識しないと気がつかない。
後続に乗りあっていた兵士の2人に見張りを頼み皆で様子を見に行く、
個人的には相手が人なら、迂回するなりして接触を避けたいが迂闊な発言をして誰かが怪我するのも恐ろしい、「やり方は任せます」 とキャバさんに丸投げした。
ソロソロとレーダーで様子を見ながら進んでいく、近づくにつれ対照の動きを細かく表示する、
対象は忙しなく移動しているようで 「恐らくは人じゃなさそうだ」 と聞いて少しホッとした。
しかし、実際は人より魔物の方が危険度が高いことが多いため、人数差が無い場合は対人戦の方が余程安全だと言う、先ほどの「人間の方が良い」発言もそれを含んでのことなんだそうだ。
15人を4班に分けお互いの位置を確認しながら適度に拡散して進む。
林を出て草原を越え森に入る、
数分後先頭の班から停止の指示が出る、ソロソロとさっきまでにも増して慎重に先頭班に近づく。
木陰から小さく指された先を見ると、数匹の獣が木々の間を飛び回っている、
目を凝らせば深緑色の毛に覆われた狼だ、ただし尻尾が鎌の様になっている。
色合いは森狼でいいけどあれは鎌狼やろう、それともこの世界の狼には鎌が標準装備なんやろか、、、?
森狼にまぎれて時折赤い何かがチラチラ見える、雰囲気的には森狼vs赤い奴って感じだ。
赤い何かを見極めようとジッと見ていると
”チラリ”
あ、どうも、、、、、、
一匹の森狼と目が合った、、、、、




