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聖王国


「それでは此方の部屋で御休みください、簡単な湯あみも可能です、汗を流して頂いてる間にお食事もご用意できるかと。」

チャールズさんがそう言って目の前の扉を開けてくれた。


部屋は窓が無いことを除けばまるで宮殿の一室の様で洞窟の中だとは思えない。

「右手の扉が湯あみ場となります、寝衣も御座いますので宜しければ御使いください、向かいの部屋に警備のものが詰めておりますのでご不便が有りましたらお声かけ下さい」

そう言って、静かに扉が閉められた。













トントンと扉をノックする音が聞こえる、


「はい」と少し寝ぼけながら目を開ける。


「夕食のご用意が出来ました、宜しければご案内させて頂きます」

「はい、すいません直ぐに準備します」

時計を見ると7時を指している、夕食と言うことは19時だろう。

(先生何で起こしてくれへんかったん。ひとんちで10時間以上爆睡って流石に恥ずかしいわ、、、)

先生に愚痴をこぼしながらいそいそと着替え、扉を開けた。


交差点を幾つも曲がり、食堂に着いた。

食堂も窓が無い以外は宮殿のような内装になっている、


(そういえば姫様言われてたけど、本物なんやろか?)


[ロットワイラー家と名乗っておられましたので恐らく王族に連なる方でしょう、ロットワイラー家はグンリテスン聖王国の王族名ですが、グンリテスン聖王国は100年ほど前にドクガ国によって滅亡しています。」


亡国のお姫様って奴だ、響きだけ聞くとロマン溢れるが、、、、、、


(うぅ~わ、つまりボタンさんが王子様?、、、、、、、、、、、

ないわぁ、、、、、)


失礼な話だが、私の王子様像とは懸け離れ過ぎて少しショックだ、、、、


「、、、、、さま、、、、、、コ様、、、、、、トーコ様」

ボタン王子のシミュレートに集中しすぎたようだ、慌てて意識を戻す。


「トーコ様お待たせしましたわ」

キャバリアさんの着席と同時に料理が運ばれてくる、パンにサラダに肉のスープ。

期待外れと言うわけでもないが、部屋の雰囲気とのギャップが激しい。

とはいえ、もtもと食に興味があるわけでもなく、健康的に腹が膨れれば問題ない、更に味が良ければ重畳だ。

手を合わせ”いただきます”と食べ始める。

今まで食べていたような庶民的な味だ違和感無く食べ続けるが、


「お礼と言いながらこのような食事で申し訳無いですわ」

寂しげにそう言いながらキャバリアさん達の事を話してくれた。



掻い摘むとキャバリアさん達はグンリテスン聖王国の残党で国を取り戻す為に活動しているらしい。


グリンテスン聖王国は元々この世界で信仰される唯一神である女神を崇めるガミーネ教のミラメガブ派と呼ばれる最大宗派の聖地であったが、近隣の信仰者が集まり生活することによって国へと成長した、その歴史は古く記録に残る限りこの世界で2番目に建国された国なんだそうだ。


そんな成り立ちの為、ロットワイラー家は王族と言われているが実質は司祭の一族だった、

国の運営は敬謙な信者のボランティア的な活動により支えられ、国防面においても近隣諸国のモラルによって歴史を紡ぐ事が出来ていたに過ぎなかった。



ドクガ国は300年程の歴史しか持たない新興国だ、

グンリテスン聖王国はその成り立ち上、領土を明確にしていなかった、しかし近隣諸国の聖地への暗黙の敬意によってグンリテスン聖王国周辺には空白地が出来上がっていた、そこに目をつけたのが空白地に接するバンヒルス王国の豪族の三男であったガスキーだ。


ある日ロットワイラー家の親戚筋の少女が何者かに誘拐された。

当時20歳だったガスキーは仲間と共に見事救出に成功する、その後「グンリテスン聖王国を護る組織が必要だ」と主張し自警団を作った。

一族が持つ豪族としての力と財産を巧みに使い10年ほどで自警団は軍と呼べるほどに成長し、それから彼が王を名乗るのに5年とかからなかった。

ガスキーは自らを”ドク=ガスキー”と名乗り、空白地一帯をドクガ国として君臨した。

商人と傭兵を優遇する事を基準とした、当時としては斬新な法整備をする事により世界中の流民を定着させることに成功した。

それから200年後、数人の王が代替わりしたドクガ国は突如武力によりグンリテスン聖王国を包囲し降伏を促す。

表向きは聖地の保護を謳ってはいるが、当時のドクガ国は末期近い財政難に陥っており、比較的裕福な信者層が多く暮らすグンリテスン聖王国の税収が目当てだったと推測されているそうだ。


それほどの急成長、周辺国がよく黙認したなぁ、と疑問を浮かべると


[他でもない聖王の働きかけが強く影響したと記録されています。一般的には当時の聖王が何故それ程にガスキー氏を信用したのかは謎とされていますが、私のデーターによりますと初代聖王には嘘を判別する能力が備わっていたようです]

そんな先生の補正を頂いた。



ドクガ国の包囲に国防手段を持たないグンリテスン聖王国はほぼ無抵抗に陥落する。

ドクガ国はグンリテスン聖王国を改めグンリテスン市とした。

当初は、表向きの宣言を守るように市民及びロットワイラー家への圧力は無く、僅かな増税だけにとどまっていた、しかし税金は徐々に増税され2人足らずで当初の10倍近い税率に成っていた。

元グンリテスン聖王国の国王であったロットワイラー12世は幾度も減税を嘆願するが受け入れられることは無く、遂には自室で不審死を遂げる。


これを継起にグンリテスン市民とロットワイラー家はシャンク共和国へと大亡命作戦を実行する、

作戦はシャンク共和国主体で行われ、多くの市民は僅かな手荷物のみで亡命することになった、

小さいとはいえ一国丸ごとの夜逃げだ、多くの荷物を持つことは不可能だった、

グンリテスン市に残された財産は当時のドクガ国の4年分の国家予算を賄えたほどだと言う。


シャンク共和国は元々グンリテスン巡礼の宿場町として栄え、ミアメイガ派の市民によって運営されている、更に言えばグンリテスンは、ボタンさんやキャバさん達の様な私の知るとこのインド系の人達の民族で作られ、シャンク共和国はそれ以外の民族の集合体て作られていた。

この時の亡命作戦での衝突以来、今日までドクガ国とは戦争状態にある。


この亡命の際、王の側近はドクガ国に留まり姿を消す、その時作られたのが今私のいる洞窟で、仮の王宮としても作られたため比較的豪華な部屋があるのだという。


こういった経緯で元グンリテスン国民はシャンク共和国の援助を受けながら地下活動を続けているそうだ。











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