表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/89

犬、そして走り出す

犬 、

デカイ、

生意気に四足で立っている、

その癖私より大きい。


涎だらだら垂れている、

空腹です!そんな思いが言葉の壁を超えて伝わってくる。


人の顔ほどありそうな鼻がスピスピしている、数キロ先の獲物の臭いも嗅げそうだ。




、、、、、、


こう言ったらなんやけど、乙女に体臭なんてないからね!

10メートル程しか離れてないけど、、、、

匂ってたまるか!

確かにこの二日お風呂に入ってないけど、、、、

これはプライドの問題や!!


女性に臭いとか冗談でも言うたらあかん、、、、


「あ、、、、、」


眼が合った。

バチッて音が聞こえそうな位、目が合った。


ゆっくりと身構える犬、、、、


ゆっくりと抜けていく腰、、、、、


そんな二人を見て、膝は大爆笑、、、、、


そんな膝を見て、血の気はドン引き、、、、、、


立て、走れ、逃げろと、遠くの方から言われているような、、、、、、気はする。

だけど駄目だ、血の気引く、膝笑う、腰抜ける、声でない、頭働かない、食われる?喰われる、逃げなきゃ?逃げれない、何で?動けない、美味しいかな?美味しくないよ?二日お風呂入ってないよ?お腹壊すよ?食中毒になるよ?絶対食中毒にしてやる、

駄目だ

ダメだ

駄目だ

ダメだ

駄目だ

ダメだ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、






「レンジャーーーーツ!!!!」


細胞が覚えていた

父に無理やり連れていかれたレンジャー訓練。

人を卒業して、成ろうとしてるんだろうと思えるほど過酷なものだった。

単独登頂も過酷だったがベクトルが違う

ゴールがない、永遠自分を鍛え続ける。


あのときも叫んでいた。

ハイもイイエもムリもシヌもナメンナもフザケンナもシネもコロスも

全ての言葉を「レンジャー」と叫んで乗りきった。

哭きながらでもやりきって良かった。

細胞たち有り難う、不甲斐ない精神でご免なさい、、、、、。


叫ぶと同時に全身の感覚が甦る

立ち上がり反転し走り出す。

音が消え、景色の色合いも定かではなくなり、風がヌルリと身体にへばりつく。

火事場の馬鹿力、ゾーンというヤツだろう。

今なら、ビーチフラッグで世界が取れる

100メートルだって9秒切れそうだ。

なんなら1,500メートルだって2分30秒で走ろう。


肉食動物の多くは瞬発力は有るけども持久力はたいしたことはない、

チーターでもたしか全力疾走は500メートル程度のはずだ。


逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ


左手が重い、水の入ったペットボトルを投げ捨てる。

水は命とか、関係ない。

食われるくらいなら干乾びてやる、コンチクショウ

重いんだ、脱ぐ時間をくれるなら服だってぬぎ捨てたい。


投げ捨てたペットボトルを犬が踏み潰す

蓋のしまったペットボトルが破裂する

犬、驚いて飛び上がって後退する、ほんの少しだが時間を稼げた。


例え1秒でも生き長らえるため、走る走る走る走る走る。

だけど、悲しいな、、、、野生動物?とホモサピエンスの越えがたい壁

例え100メートル8秒台の速度で1,500メートル走りきる超人だとしても500メートルを前に追い付かれてしまう。


なんとなく、本当になんとなく背後から首筋に息のかかるのを感じた気がした。

瞬間全身に電気が走る。

思考なんてしている暇はない、最高速から一気にゼロへ、背中が膝よりも低くなるほどに低く低く停止する、

全身の筋肉が、悲鳴をあげる。

巨大な犬は図らずも飛び越えてしまう。

停止で貯めたエネルギーを一気に解放して真横に飛び、また走り出す。

巨大な犬はつんのめりバランスを崩す、

また少し時間を稼いだ、しかしその程度のロスは巨大な犬の3歩分程度で取り戻される。

再び襲い掛かる犬、十分に気配が近づいたところで、腕の降りに合わせて砂を投げ付ける、

先の急停止の時に無意識に握りしめていた。

偶然は重なる、その砂は血眼で追いかける犬の目に突き刺さる、

こうなれば所詮は犬、でかかろうが、角生えてようが、尻尾サソリだろうが、所詮は犬、

犬の手で目に入った砂は取れないだろう、


5秒、10秒、20秒と立ち止まり目を必死で擦っている。


草原はなだらかな坂に差しかかっている、

既に心臓は爆発しそうだ、

どれだけ空気を吸い込んでも全く酸素が足りてない、

シヌシヌシヌシヌシヌ

死んでもいい、

でも、喰われて死ぬのは絶対嫌だ、

走れ

走れ走れ

走れ走れ走れ

少し振り返る200メートル程先で犬が立ち上がるのが見える、

よろよろと動き出す、勿論獲物を追うために、

少しずつ調子を取り戻す、、

犬にだってプライドは有るんだろう、小動物に逃げられて諦めるわけにはいかない。


前を向き直す、とっくに売り切れている気力を探しだし走り続ける、ラストスパートだ、

何度目のラストスパートだ?

何度でも構わない、人生のラストになるのだけは御免だ。

丘を登りきる、

その先に広がる景色は


海!!


ペットボトルを踏み潰したときの犬を思い出す

もしかしたら水が苦手かも?

普通に考えて踏み潰したときの爆発に驚いただけだろう。

それでも、万が一水か苦手だとしたら、あの海まで逃げれば助かるんじゃないか?


藁をもつかむ、本来なら気休めにもならない、そんな可能性にすがらなくては、

もう前に進むことができなくなる、それほどに身も心も限界を迎えている。


せめて海までは逃げ切るぞと目標新たに十何度目かのスパートをかける

新しい目標に走り出したとたん、新しい問題にぶつかった。



お前はここで死ぬしかないんだよと誰かに笑われてる錯覚に落ちる、


落ちているのは錯覚だけじゃない、身体も落ちている。



新しい問題は気がついたときにはもう手遅れだった、犬と海に気を取られて全く見えていなかった、

5メートル程先には何もなかった、文字通り何も無かったのだ。

何も無いとは少し大袈裟かもしれない、

崖があった、

空があった、

ただ、地面が無かった、

ついでに言えば、漫画のように足を空回りさせる余裕もあった。

諦めから来る余裕だが、、、、、、。



だってしょうがない、結構頑張った。

道中何度か奇跡に助けられた。


でももう、流石に奇跡も打ち止めだろう


海の見える崖と言えば、下は海。

それなら運良く水に着水出来るかもしれない?


残念、下は砂浜。



砂浜ならば木位生えてるだろう、木の枝に引っ掛かって、、、?


残念、下には草すら生えていない。




「お疲れ私」

そう呟いて眼を閉じる

痛いのやだななんて考えると少し体が強張る



「走馬灯、出てこーへんな、時間だけはえらいゆっくりやのに」







チラッ?




「う、、、、、、、、、、、、、?。

浮いてるやん、、、、、めっちゃ浮いてるやん私、、、、、、」



地面迄4メートル?の辺りに浮いている?、そしてゆっくり下がっている?


「のさー!!とわいおさむまちよみらまちびいひやちもまえめひょつ!!!」


誰かが大きな声で叫んでる、なんて?よく聞き取れなかった。

声の方を見るとピカピカの金髪の、フワフワのウェーブのボッキュッボンとした絵に描いたような白人女性が声を張り上げている。


取り敢えず浮かぶ私を見て驚いている様子は、、、、ない、

どちらかと言えば怒っている?。

つまり私が浮かぶ原因に彼女は心当たりが有るんだろう。

「えと、こんにちは、あなたが助け・・・・・・」

ズドーン!!と、何か巨大なものが落ちた音がする

一瞬忘れていた犬の存在を思い出す

ピカピカのお姉さんは悲鳴をあげている。

ヤバイヤバイヤバイ

お姉さん逃げてと叫ぼうとしたとき、もう1つ忘れてたものが帰って来た。

お帰り重力、、、、、。

地面まで4メートル位、大体建物の二階の窓程度、普段なら華麗に着地できる高さなのだが、今日はもう死ぬほどに走り続けてきた。

受け身も何もないままに背中から落ちた。

息止まる、悶えたいが、その体力も無いそうだ、ガハッと、渾身の力で息を吐く、

お帰り呼吸、、、、、、、

ピカピカのお姉さんはチラッと此方に視線を送り両手を合わせ、何かが落ちた方に駆けていく

「ゴメン」て、事だろうか?



そんな事よりもお姉さんそっちに逃げたらあかんとおもう、、、、。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ