エピローグ サイボーグ魔術師がドラゴンを殺す
アトランティスは海の藻屑となり――世界は変化した。
マナが――ありえないほどのマナが開放されて、地球上の生命すべてが魔法か魔術を使えるようになっていた。
サイボーグだろうと、病人だろうと、犬だろうと、昆虫だろうと、バクテリアだろうと、あらゆる生命が魔力を練れるのだ。これまであった制約がすべて吹き飛ぶほどマナが細胞の隅々まで浸透したのである。
裏返せば、異世界出身の人間たちもサイボーグ化が可能になったことを示す。
気づけば、サイボーグ魔法使い・サイボーグ魔術師たちが戦場の主役になっていた。
アトランティスを壊そうと保存しようと、人類は争うことに心血を注いだのである。
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東征は、フリーランスの用心棒になっていた。賞金稼ぎという職業は自然消滅してしまったので、自分の力を活かす職業に転職したのだ。
ちなみにシンジを狩った賞金だが、生き残りで山分けになった。50人で500億を分割したから、1人頭10億円。もはや働かずとも暮らしていけるだけの貯蓄があるにも関わらず、フリーランスの用心棒になった。
アトランティスを爆破した責任があるからだ。
アトランティスを爆破して、転移と転生を潰した結果、世界中に“化け物”が生まれていた。そいつらを狩るために、世界中を転戦していた――サイボーグ魔術師として。
「東征さん。僕もそろそろサイボーグ化したいよ」
かつてタラバザール王国で王子様をやっていたユーリが、砂漠のテントでパンをもぐもぐ食べていた。彼は東征と一緒に世界中を旅をしていた。アトランティスを爆破してから二年経っているため、すっかり背が伸びていた。勉強も得意であり、パンを食べながら教科書を読んでいた。
「サイボーグ化手術は、もう少し大人になってから決断しろ。子供のうちだと後悔するかもしれない」
東征はサイボーグ用品で身体をメンテナンスしていた。人類が平等に魔法を使えるようになってから、サイボーグ改造技術が発展した。東征もサイボーグ魔術師になったので、魔力増幅回路を積んであった。
「えー、もう12歳だよ。僕もサイボーグになって前線でガンガン戦いたいな」
ユーリはレーサーという夢も捨てていないのだが、デンゼルが夢見た強い剣士になって“化け物”退治をやりたいらしい。忠臣の想いを忘れていないのは、けっして悪いことではないのだろう。
「華舞の恋愛対象から外れるぐらい成長したら改造してもいい。それまでは生身を大事にすることだな」
「…………その基準なんとかならないの」
ちなみにショタコンの華舞は故郷の師匠のところへ戻って、道場の再建を手伝っている。時々ユーリの生写真を求める連絡が入る。バカはバカのままだった。
グスタボは、なんだかんだと故郷のタラバザール国が気になるらしく、オジサンと一緒に民主化の手伝いをしていた。かなり忙しいらしく、連絡はまばらだ。
みんなそれぞれの道を歩んでいた。普通の街になった東京シティを飛び出して。
そう、普通の街だ。かつての地球と異世界と融合した結果、混沌が満ちた原因である次元連結トンネルが消えたので、世界中の犯罪者たちが集まらなくなったのだ。
もちろん世界から犯罪者は消えていないし“誰もが”魔法を使えるようになったので、世界中すべてが危険地帯となったわけだが。
――用心棒として雇われた中東の街で、女子供の悲鳴が響いた。彼らは灼熱の空を指差すと、こういった。
「ドラゴンがきたぞ!」
ドラゴン。伝説上の生き物。かつての異世界にだって存在しなかった。だがアトランティスを壊したら地球上に出現するようになってしまった。爬虫類が魔法を使えるようになったら、知能を持った巨獣となって大暴れするようになったのだ。
もちろん、昆虫もバクテリアも魔法で暴れる。まるで本物のファンタジー世界のモンスターみたいに。
<愚かな人類め! 我らドラゴン族の生け贄となるがいい!>
全長20メートルの翼を持った巨大爬虫類。その巨大な口からファイヤーの魔法を発動して、石油の枯渇した中東の街を焼いていく。防衛隊が対空機銃と攻撃魔法で迎撃するが、ドラゴンまで魔法障壁を張っているため弾かれてしまった。
人々は絶望していた。巨大な化け物が知能を活用して魔法を使うと、甚大な被害が発生するからだ。
「けっ、なぁにが愚かだ、爬虫類の分際で」
東征がテントから出ると、空飛ぶドラゴンが歯をむき出しにして怒った。
<お前が稲村東征か! 我らの同胞を何体も狩った!>
「お前も狩ってやるよ。今晩の飯はドラゴンのステーキだ」
東征はフライの魔術でドラゴンの首の裏に高速移動すると、デンゼルが愛用していたエンチャント付きサーベルを振り下ろした。
ずばっと魔法障壁が真っ二つに切り裂かれた。その隙間に向けてサンダーの魔術を発動――雷槍がドラゴンの鱗を突き抜けて肉まで焦がす。だが一撃では殺せない。もちろん想定済み。
以前から愛用する50口径の拳銃を抜くと、サンダーで焼いた傷口めがけてガンガンガンガンガンっと連射。傷口が広がってドラゴンの頑丈な骨が見えた。
ぽいっと爆薬を投げこむ――大爆発。ドラゴンの首がごろりと落ちて、巨体が地上へ落下していく。
「ばっくおーらい、ばっくおーらい」
ユーリが、魔法障壁を張り巡らして網を作ると、自由落下してくる首なしドラゴンを受け止めて、地上への被害を防いだ。
中東の街は、色めきたった。いつぞや交易都市を助けたときに怖がられたのと違い、心の底から命の恩人として歓迎された。
なぜなら東征の異名が世界中に知れ渡っていたからだ。
賞金稼ぎ時代の彼を知っているものはシンジ・ムラカミを狩ったことから【チート殺し】、サイボーグ魔術師になってから知ったものは100体以上のドラゴンを狩ったことから【ドラゴン殺し】と呼んでいた。
続編を作れる構造ではありますが、タイトルとテーマから考えると区切りがいいので、一度幕引きとさせてもらいます。
最後まで読んでいただいて、本当に感謝しています。今後とも応援よろしくおねがいいたします。




