プロローグ2
2016 7/11誤字訂正しました。
―――白崎翔は物静かで穏やかな少年であった。
少なくとも周りからそう認識されていた。
なぜこのような言い方をするかというとそれは彼が周りにそう誤認させるように振る舞っていたからだ
ならなぜ彼はそのようにしたのか・・・
それは彼が患っていた奇病に由来する。
この奇病は患った人の体の機能を徐々に低下させやがて完全に停止するという恐ろしい病気である。
初期症状としては体に少しのだるさなどしか現れないため早期発見するのが非常に困難なため、発覚してもすでに手遅れな段階まで体の機能が低下しているため対処できない・・・
そして翔はこの奇病を患った最初の一人である
彼がこの奇病を患ったのは13歳の時、しかしそれが発覚したのは一年後の14歳の時である
なぜ遅れたのかというと患った当初彼自身にすら自覚がなくただ体が疲れやすくなったというだけで気にしてはいなかった。
少し休んだら直るだろうと思い、外で運動することを控え室内での活動に集中し始めたが、体のだるさは抜けずそればかりかどんどん体力が落ちていく。
更には消化の機能が低下し始め日に日にやつれていく
そんな翔の様子をおかしく思った両親は翔に問い詰める
それをきっかけに翔は自分の体がおかしくなったことをようやく両親に打ち上げた。
それを聞いた両親はすぐさま翔を病院に連れていき検査を受けさせた、しかし結果は問題なしと出て体に異常はないと医師に告げられる。
そんなはずはないと翔の両親は翔を連れて様々な病院を訪れた診察を受けさせたがどれも結果は問題ない、体のどこにも異常はない。と言われるばかり・・・
やがて翔の体に明確な症状が出始めた。
足が動かなくなったのだ。それまでは異常なしと告げていた医師もさすがにこれはおかしいと感じ
すぐさま入院を勧める
これを翔の両親はすぐさま承諾し翔を入院させる。
入院した翔に対してすぐさま検査が行われる、しかし異常なしと結果が出るばかりで原因が分からないのだ
医師たちはさまざまな方法で対処しようといたがどれもこれも効果を見せず手の施しようがない状態だった。
ここでようやく医師たちが翔の病気を正体不明の奇病と診断された。彼が14歳の時であった
その知らせを知った両親はなぜもっと早く本格的な治療をしてくれなかったのかと医師たちに問い詰めが、それに対して医師たちは何も言えず申し訳ない表情しかできなかった。
その頃からだろうか翔が元々の活発で好奇心旺盛な性格が鳴りを潜め物静かで穏やかに振る舞うようになったのは
当時翔の両親は衰耗しきっており、家族の関係はどんどん荒れていった・・・
そんな関係を回復しようと自分が大丈夫だと。心の奥の不安や恐怖を抑え込み平然と振る舞うようにした。
そんな翔の思いが両親に届き自分の息子がこんなに頑張っているんだ自分たちががんばらなくてどうする・・・と。
それからは以前の衰耗しきった様子だったのが嘘のように翔の両親はともに働き始め翔に不自由なく過ごさせるようにした。
(あぁこの本も読み終わってしまったか・・・)
両親から買ってもらった本を読み終えそれを横に積み重ねた本の山のてっぺんに置き。別の本を読み始めようとしたとき
「やっほ~少年くんずいぶんと熱心に本を読んでいるんだね?」
一人の看護婦が病室に入ってきた
「・・・・あなたは?」
「今日から少年くんの専属になった看護婦だよ。お姉さんと呼んでね~」
「うん・・・わかったよ看護婦さん」
「お姉さん」
「え・・・それはさすがnーーー」
「お姉さん」
「いや、ちょーーーー」
「お姉さん」
「・・・・・・」
「お・ね・え・さ・ん・」
「・・・・はぁ、わかったお姉さん・・・これでいいでしょ?」
「うん。よろしい~」
そういって笑う彼女もといお姉さん。
それからの日々は毎日本を読んでいる翔の病室に来ては翔に話しかけ、返事をしない時や意図的に無視しようとしても翔が返事をするまで何度も何度も話しかけてきた。
そんなお姉さんの姿に翔はついに降参し、少しづつではあるが話すようになった。
(今日もお姉さんはいつ来るんだろう・・・)
気が付けばそんなことを考えるようにまでなった。自分がお姉さんに会いたいと思う自分がいたことに驚きつつも、前まではこんなことなんて考えすらしなかったなと思うと自然と苦笑いが出てしまう。
「あれ?少年くんそんな顔してどうしたのかな?」
気が付けば本を読んでいた自分のそばにいつの間にか彼女がいた
「ッ!? お姉さん・・・いつの間にに入ってきたのかな?」
口調も前と比べてずいぶんと砕けてきた
「ふっふっふ、さていつでしょうね~」
笑いながら言い返してくる彼女を見るとなぜか自分も笑ってしまう。
「ふふふ」
「あ、少年くんいま笑ったね!ひどいな~」
「ソンナコトナイヨ、お姉さん」
「なら何でカタゴトなんだ!」
「あははは、ごめんごめん それでねお姉さん今日はーーーーー」
「ふぅん、それならーーーー」
そんな雑談をしながらふと思う
こんな日々がいつまでも続いたらいいなと・・・・
自分の病気が発覚してからすでに二年が経過し、体のほどんどがもうすでに動かず、腕と頭ぐらいしか動かなくなっていた。
かなわない願いとわかっていながらもそう思わずにはいられないほどお姉さんと過ごす日々は翔にとって楽しくてかけがえのない大切な日々だったからだ。
いつものように定期検査を受け、結果が出るのを待つ日々に
翔の体にわずかな変化が起きた
(あれ・・・体が少し動く・・・?)
そう。もう動かなくなっていた体が少し動くのだ
少し動く体に戸惑いながらも普通なら喜ぶはずなのに翔なぜか素直に喜べなかった。
数日が過ぎお姉さんが検査の結果が載ったカルテを持ってきた
そしてお姉さんから自分の体がもう残りわずかしか生きられないと告げられた
告げられた内容に翔は最初こそ驚いたもののやがて納得した。
(ああ、ここ最近体が少し動くようになってきたのはもうすぐ死ぬ自分に対してのささやかなプレゼントだったのか・・・)
言葉の途中で初めて見たお姉さんの涙に戸惑い、慰めようと自分は不思議と大丈夫なんだと伝え、お姉さんが泣き止むのを待った。
しばらくして彼女が泣き止み、病室を去った後、急に眠気が襲ってきた
ああ、もう体に限界が来たんだねと思いながらも眠気に逆らうことができずに意識がどんどんと奥底に沈むように落ちていく。
次に目を覚ました時はもうすでに体は完全に動かなくなっていた。
しかし、目が覚めたのもつかの間すぐにまた眠気が襲ってきた。今度は前のようににどんどん沈んでいくのではなく意識自体が希薄になっていく。
やがて消えて行った・・・・消えていく直前に右手にかすかなぬくもりを感じて・・・
(・・・・・あれ?ここは・・・・・)
意識が覚醒していくのを感じながら目を開けると真っ白い部屋が視界に映った。どこだろうと思いながら回りを見渡していく
(ん?・・・見渡す・・・・・ッ!?えッ体が動く・・・・!?なんで!?)
完全に動かなくなったはずの体が動く。何故?どうして?そしてここは何処だ?
疑問ばかりがあふれ出て軽くパニックになる
(僕は・・・確か死んだはず・・・)
「そうだ、そなたはすでに死んでる」
(ッ!?)
突然声が聞こえてきた。声が聞こえた方向を向くとさっきまでは何もなかったはずの空間に少女らしき姿が見える。
(死んでるならここは何処なんだ?あの世なのかな・・・?)
「違う、ここは【神の小部屋】と呼ばれる場所だ。最もそう呼んでるのは私だけだがな・・・」
「え、【神の小部屋】・・・?なら・・・あなたは・・・?」
「私はそなた達から言うと神などと呼ばれるものだ」
いきなりとんでもないことを言い出した少女に僕はさらに混乱する。
いったいこの少女は内を言っているのかと・・・もしかしたら頭が残念な子なのだろうか・・・
「頭が残念とは失礼な・・・・」
そういいつつ少女はほっぺたを膨らます。
可愛いな・・・
って違うそんなことよりも今心を読まれた!?
「そうだ。私は神だからな、それでも信じられぬというのならもう一つ証拠を見せようか?」
「・・・・(コクコク)」
「うむ。ではもう一つの証拠じゃ、それは・・・おぬしの体が動くことだ。」
そういわれて・・・・ッハっと気が付く。
確かに体が動くのだ、目の前の少女のことで今まで忘れていたけど・・・
「ほんとだ・・・ならあなたはほんとに神様なの・・・?」
「そうだ。 それともう一つおぬしに言わなければならないことがある・・・」
「え・・・何かな・・?」
少女は真正面に僕を見るといきなり頭を下げた
「すまない、ホントにすまなかった!許されぬとは思うがこれだけは言わせてほしいのじゃ!」
「え・・・えええ!?なんでいきなり謝りだすの!?」
少女の行動をみて慌てだす僕
「それは・・・おぬしが死んだ原因が私のミスだったからだ。」
「え・・・・」
どういうこと?僕が死んだのはこの少女のせい・・・?
いや、そんなはずない。だって僕は不治の奇病で死んだはずじゃ・・・・・・
「そうじゃ、おぬしは確かに病で死んだ・・・しかしその病の原因を作ったのは私じゃ・・・すまなんじゃ・・・」
「・・・っ!」
「さっきも言ったが、おぬしが不治の奇病というものにかかったのは私がその時したミスのせいじゃ・・・ほんとにすまないことをした・・・すまない・・・」
頭を下げ続ける彼女の目からかすかな光るものが落ちて行った
「・・・・・いいよ。」
「え・・・・」
「だからいいよって言ってるんだよ。確かにこの病気に僕は沢山のつらい思いをしてきた・・・」
「それは・・・」
そういう少女を手で制して言葉をつづける
「でもね・・・そんなつらい日々の中でもいいことがたくさんあったんだ・・・」
そういって思い浮かべるのは病院で沢山の日々を一緒に過ごしたお姉さんのこと
それはかけがえのない記憶として確かに子の胸の奥に残っている。
「それに・・・さ、そんな顔をして謝ってくる人に対して怒れないんだ。」
さきほど神と名乗った少女は泣いていた。
そして僕はその涙がホントに僕に対して申し訳ないと思う気持ちで流した涙だと思っている。
「だからさ泣かないで。」
「・・・・そうか、ありがとう・・・」
気づいたら僕は少女の頭を撫でていた
「こ、こら!な、なにをするのじゃ!」
「あ。ご、ごめん・・・」
む~とうなりながら僕に撫でられた頭をこすりながら顔を赤くする少女
なにこれかわいい・・・
しばらくうなっていたがすっと表情を戻し
「それでだ・・・お詫びと言ってはなんじゃが・・・おぬしには第二の人生を送らせたいと思うのじゃ。」
「えっ!そんなことができるの!?」
「うぬ、おぬしは私のせいで死んだのだからな、きちんとその責任は取りたいと思うのじゃ。」
「うん!ぜひお願いします!二度目の人生!」
「・・・・お、おぅ。それでじゃ、おぬしが生まれ変わるのは地球ではなくほかの世界じゃ、いわゆる異世界転生じゃな。もちろんおぬしが病室で読んでいた本のように剣や魔法などがある世界じゃ」
「おぉ!!」
「その世界は≪セクレト≫と呼ばれておる。それと転生する際にお詫びとして追加としてちーと?なるものもお詫びとしてあげるのじゃ」
「おぉぉぉぉ!」
もうはやテンションが上がりすぎておぉぉぉしか言えなくなってるけ僕を少女は苦笑いしながら見ている。
「それでじゃ、ここから送る前に何か言うことはあるか?」
「ッハ!ううん、何もないよ。神様ありがとうね」
「そうか・・・喜んでもらえて何よりじゃ・・・それじゃ送るぞ!」
そういいながら少女はこちらに手を向ける。手のひらから光のかけらみたいなものが飛んできて僕の体をつつみこむ、足の先から少しづつ消えていき、やがてそれは膝に、胸に、そして頭へと
そのまま僕の意識はや闇へと沈んだ。
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