遺品整理
先日、祖父が死んだ。心筋梗塞とかいうのを引き起こしてしまったらしい。正直あまり祖父が死んだという実感は沸かない。多分、祖母が亡くなってから1度も来ていなかったというのもあるだろう。祖父のことをあまり覚えていない。それは、悲しいことだと思うし、ひどく寂しいことだとも思った。
まあ、そんなこんなで今日は祖父の遺品整理に来たのだ。さっきも言ったが、祖母は既に亡くなっているから、こんなことをするのも自分くらいしかいない。
母もあまり来たがってはいなかった。その理由が理由なんだが、母と父は駆け落ちしていたらしいのだ。理由は結婚を反対されたからだそうだ。が、実際どうなのかは知らない。なにせ、見栄っ張りの母のことだ。少し大袈裟に話をしていたかもしれない。まあこんな感じの理由で母は祖父から離れていたのだそうだ。遺品整理をしている今でも渋々といった様子をみてあまりやる気ではないのが伝わってくる。
「母さん。嫌なら残りは全部やるよ。他にもやることがあるんでしょ?」
「あら、ごめんなさいね。うん、お願いできる?」
「うん。後はじいちゃんの部屋だけだよね?なら、1人でも出来るって!」
そう言って母は外に出て行った。
「さて、じいちゃんの部屋か」
祖父の部屋の前まで来てふと、思い出す。
『この部屋に入ってはいけない』
そう、祖母に言われたことだった。自分は祖母に懐いていたから祖母のいうことはとにかく聴いていた。
祖母無き今この部屋に入ってもいいのか、少し考えてしまった。
この部屋に何があったのだろう。ゆっくりと戸に手をかけ、少しずつ開けていく。
部屋には、あまり物は置いていなかった。あったものは布団とか、寝室に置いてあるものぐらいだ。
気を張っていて損したような気分になりながら祖父の遺品を片付けていく。中には、祖母との思い出の品らしきものもあった。本当に祖母のことが、好きだったのだろう。ポッと火が灯るように心が温かくなった。
片付けも半ば終わり、残すは押し入れだけとなった。
「あとは、ここだけか。」
予想通り押し入れにもあまり物はなかった。祖父は物を持たない人だったのかもしれない。
そう思いながら押し入れも片付け終わり押し入れの戸を閉めようとした時だ。
ガタリ
押し入れから、箱が落ちてきた。
「片付け忘れかな。」
箱にはメモでこう書いてあった。
『私の生きたことを忘れないでください』と…